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ゴールを量産するメッシから学ぶ、優れたフィニッシュプレーのポイントとは?

公開:2013年3月15日 更新:2020年6月24日

キーワード:CLゴールシュートチャンピオンズリーグバルセロナメッシ

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チャンピオンズリーグ決勝ラウンド1回戦のセカンドレグ、バルセロナは4-0でミランを下しました。ファーストレグを0-2で落としていたバルセロナでしたが、これで合計スコア4-2となり、ベスト8進出が決定。
ファーストレグのミラン戦や、レアル・マドリードとの2つのクラシコに連続して完敗したことで、バルセロナ時代の終焉の可能性が現地メディアでも話題になりましたが、そのような逆風を見事にはねのける結果になりました。
素晴らしいバルセロナの逆転劇。その中でも特に異彩を放ったのは、やはり2得点を挙げたメッシでした。
世界のサッカーシーンにはドリブルの巧みな選手はたくさんいますが、メッシほどのフィニッシュのうまさを兼ね備えた選手はそう多くはありません。また、リーガエスパニョーラ第27節デポルティーボ戦ではリーグ戦17試合連続となるゴールを決め、世界記録を樹立しています。
なぜ、メッシはこれほどゴールを量産することができるのでしょうか? 
特にミラン戦の前半5分の先制ゴールはメッシの質がよく表れた場面でした。このゴールを取り上げ、メッシのフィニッシュプレーが優れているポイントを検証したいと思います。

■メッシはシュートの予備動作が速くてスムーズ

前半5分、ブスケツからのパスを受けたメッシは、シャビとのワンツーからペナルティーエリアのライン辺りでボールを持ち、"素早く"左足のインサイドでシュート。ボールはミランDFメクセスとサパタの間を抜け、ゴールネットを揺らしました。このときGKアッビアーティは全く反応することができていません。
メッシのフィニッシュの最大のポイントは、シュートの予備動作がドリブル中とほとんど変わらないほどスムーズで速いことです。
これが普通の選手なら、シュート時にはしっかりと軸足を踏み込み、体のひねりを加えて、大きく蹴り足をテークバックしてボールをインパクトします。ところがメッシの場合は、シュートを打つ蹴り足のテークバックが非常に短く、まるでそのまま走りながらシュートしているかのような蹴り方です。つまり、非常にコンパクトなフォームで蹴っているのです。普通の選手が1秒かけてシュートを打っているとしたら、メッシは0.5秒くらいで済ませているイメージでしょうか。
このタイミングの早さが重要で、あと1歩、余計にステップを踏むなどしてシュートを打つタイミングが遅れたら、DFメクセスやサパタのブロックが間に合っていたか、あるいはGKアッビアーティがセーブするチャンスはあったでしょう。それを許さなかったのが、メッシの素早いシュートフォームということになります。
とはいえ、ただ単純にテークバックを短くするだけでは、ある程度の威力のあるボールを蹴ることができません。しかも、短いモーションでは正確にキックをするのが難しくなり、フォームがぶれたり、インパクトが安定しない可能性もあるでしょう。
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■メッシのシュートに隠された、4つのポイント

1つめは、フォロースルーで威力を加えていること。テークバックが短くなるぶん、フォロースルーでは蹴り足を前方へ押し込むようにして、ボールに勢いを加えています。
2つめは、ボールの芯をしっかり打ち抜くこと。最近のボールはスイートスポット(真芯)をとらえると、それほど力を加えなくてもボールがビューンと飛び出していくように、ある程度の勢いのあるキックができるように作られています。
パンチ力のあるボールを蹴ろうとしてガチガチに力むくらいなら、メッシのようにリラックスしてボールの芯をジャストミートすることに集中したほうが良いということです。
3つめは、ボディーバランスや体幹の筋力が優れていること。フィジカルの強い相手に当たられてもうまく受け流すことができたり、難しい動きで相手をかわしてもバランスが崩れなかったり、このようなメッシの姿勢制動能力はシュートを打つときの速いモーションの安定性にも生かされます。バランスの悪い選手は、メッシのように速いタイミングで打とうとすると、フォームが崩れてキックの正確性を欠く可能性が高くなります。
4つめは、シュートを打つ前のコントロールの工夫です。シャビからのラストパスは、メッシの右足に合うタイミングでしたが、メッシはそのまま右足でトラップをせず、細かくスキップしながら1歩を0.5歩ずつに分解するようにしてステップを踏み変え、左足のアウトサイドでトラップをしました。
それによって何が変わるのか?
右足でトラップした場合、シュートを打つまでの最短の足の運びは、右足トラップ→左足→右足(軸足の踏み込み)→左足でシュートとなります。一方、メッシのようにステップを踏み変えて左足でトラップした場合、左足トラップ→右足(軸足の踏み込み)→左足でシュート。つまり、ステップを踏み変えたことで足の運びが一歩分短くなっているのです。
たった一歩のわずかな間ですが、その時間で相手も一歩を踏み込んでくるため、DFのブロックが間に合ってしまったり、GKにセーブされたりと、状況は大きく変わることになります。
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■良いシュートとは、威力があるのではなくゴールに入るシュートのこと

メッシにとってシュートは特別なものではないのでしょう。ドリブルと同じように駆け引きをしながら、抜けるタイミングやコースを見極めてボールを通すだけ。メッシは以前、インタビューの中で「(ドリブルは)感覚でやっている」と答えていたので、おそらくシュートも頭で考えているわけではなく、感覚でやっているのでしょう。
バルセロナにデビューしたばかりの若い頃のメッシは、ドリブルのキレこそ素晴らしかったですが、今ほどのシュートのうまさはありませんでした。ここまでゴールを挙げる選手へと変貌し始めたのは、エースがロナウジーニョからメッシへと切り替わっていく辺りのタイミングだったでしょうか。
これまでにチャレンジして、成功したシュートはどんな蹴り方だったか。どんなタイミングだったか。どんなフォームが蹴りやすかったか。己を知り、そのような成功したプレーの記憶を忘れずにしっかりと体に刻み込んでいるからこそ、メッシはあの切迫したチャンピオンズリーグの舞台でチームを救うシュートを決めることができたのでしょう。
今のメッシは完成形なのか、それともまだ伸びしろがあるのか。25歳の彼から、今後も目が離せなくなりそうです。
清水英斗(しみず・ひでと)//
フリーのサッカークリエイター。現在はGoal.comJapan編集長も務める。ドイツやオランダ、スペインなどでの取材活動豊富でライターのほか、ラジオパーソナリティー、サッカー指導、イベントプロデュース・運営も手がける。プレーヤー目線で試合を切り取ることを得意とし、著書は、『イタリアに学ぶ ストライカー練習メニュー100 』『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』『サイドアタッカー』 『セットプレー戦術120』など多数。
●twitterID:@kaizokuhide

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文/清水英斗 写真/サカイク編集部(JA全農杯チビリンピック2012大会より)

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