10月29日に行われたドイツ杯、ドルトムントに所属する香川真司はFCザンクトパウリ戦で1ゴール1アシスト。72分に見せた軸足のうらを通す浮き球のトラップは、現地ファンから「ジダンみたいだった」と称賛されました。
さて、ところで読者のみなさんは、このジダンという選手をご存知でしょうか? その高いテクニックとボールコントロール技術から『宇宙人』と形容されることもあった、フランスを代表する攻撃的ミッドフィルダーです。今回は、彼のエレガントなプレーの秘密を紐解いていきましょう。UEFA.comの映像とともにお届けします。(翻訳・構成/永田到 参照記事/UEFA.com)
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■ボールをしっかりと見ること
すでに引退し、現在はレアル・マドリードの下部組織レアル・マドリード・カスティージャで助監督を務めているジダンは、現役時代に攻撃的ミッドフィルダーとしてクラブでもフランス代表でも活躍してきました。チャンピオンズリーグやワールドカップといったタイトルをチームにもたらし、個人としてもFIFA最優秀選手賞やバロンドール等を受賞してきました。
フランス代表のチームメイトとしてジダンと一緒にプレーしてきたクリスティアン・カランブーは、ジダンを次のように絶賛します。
「まちがいなく彼は天才ですね。あらゆるプレーやボールコントロール、動きがとてもクレバーで効果的です。ぼくたちは、彼が一緒なら試合に勝てるという確信がありました。彼はピッチでつねに違いを生み出すことができます。一緒にプレーした中でもっとも素晴らしい選手ですね」
輝かしいジダンのキャリアの中でもひときわ高く評価されているゴールが、レアル・マドリードの選手として出場した2002年チャンピオンズリーグ決勝のバイエル・レバークーゼン戦で決めたボレーシュートです。米メディアのCNNは、2009年に発表した『歴史上最高の11ゴール』の中で、このゴールをトップ3に挙げており、次のように述べています。
「怒涛のオーバーラップを見せるロベルト・カルロスがクロスをあげる。左サイドから、まるでグラスゴーの空から降ってきたかのように落ちてきたボールを、16.5メートル離れた位置から一心に見ていたジダンが、その左足で完全に捕らえる。ボールはカーブをえがいて見事にゴールに突き刺さった」
同メディアのニール・グラハム記者が「テクニックがもたらした奇跡。このゴールがジダンのすべてを言い表している」と賞賛するこのボレーシュートは、どのようにしてもたらされたのでしょうか。
カランブーはプレーの基本として、体と頭の位置が重要だとした上で、ボールをしっかりと見ることが必要だといいます。
「サッカーはボールが全てであり、ボールこそサッカーそのものなのです」
■軸足はゴールに、上体はボールに向ける
「ロベルト・カルロスがボールを持って左サイドを走りこんで来たときに、ジダンはボールの位置を視界にとらえている一方で、ゴールの位置もしっかりと視界に入れていました。ゴールを決めるためにね。しかし放り込まれてきたクロスは、ジダンの身体よりも後ろ側に向かってきました。そこで彼は一度バックステップし、身体を改めてボールのほうに向けました。彼の周囲に相手ディフェンダーはいなく、ボールの動きだけに集中することができました。パワーを溜め込んでボールを蹴り込んだのです」
「インパクトにおいて、ボディバランスはとても重要です。軸足はゴールの方向(=ボールを蹴りたい方向)にしっかりと向けておいた上で、上体は自分に近づいてくるボールに向けておくようにする。そしてインパクトのタイミングで、全身がゴールを向くように身体をひねります」
翻訳・構成/永田到 参照記事/UEFA.com