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答えを教えない「自分で考えろ」は、九九を教えない「分数の掛け算を解け」に等しい

公開:2015年7月27日 更新:2020年12月24日

過去3年で4名のJリーガーを輩出した、興國高校サッカー部。サッカーサービスのトレーニングメソッドに加え、オリジナルのドリブル練習に取り組むことで、選手たちが成長。年代別の日本代表に選ばれる選手が続々と出てくるなど、注目のチームだ。
内野智章監督によると、「プロだけでなく、大学サッカーでも、1年生で試合に出ている選手が増えてきた」という。大学で即戦力としてプレーできる理由、トレーニングの方針などについて聞いた。(取材・文 鈴木智之)

 

興国高校サッカー部

 

<<なぜ、全国経験のないサッカー部から毎年Jリーガーが輩出されるのか?

 

■カテゴリーが上がっても即戦力としてプレーできる選手の育て方

――大学でも、1年生のときから即戦力としてプレーする選手が増えてきたそうですが、その理由はなんだと思いますか?

 

サッカーサービスのメソッドでトレーニングをしているので、“ボールを止めて、蹴る”という面はもちろんですが、サッカーを理解する力のある選手が増えてきたのも、ひとつの要因だと思います。
技術面はドリブル練習で磨いていますし、ボールを持ったときに顔が上がるので、多くの状況を認知することができます。それを元に、たとえ上級生であっても「こう動くから、こう動いてほしい」や「ここにポジションをとれば、こうやってボールを運べる」というコミュニケーションがとれている部分も大きいと思います。

 

――判断の伴った技術を身につけていて、サッカーのプレーを分析し、理解できているわけですね。

 

身につけた技術を試合で活かすために、起用法も工夫しています。たとえば、足が速い選手は練習でひたすらドリブルと1対1をさせて、試合では4-3-3のインサイドハーフで使うんですね。興国でインサイドハーフで試合に出るということは、素早い認知→判断→実行が求められます。すると、練習で1対1をひたすらやっているのに、試合になるとワンタッチでプレーしないといけない状況になります。
そのようにして、足が速い選手にはあえて素早い判断が求められるポジションでプレーさせて、徐々にサイドであったり、前線であったりと、スピードを活かすことのできるポジションでプレーをさせます。そうすると、素早い判断でパスもできて、1対1でスピードに乗った突破を仕掛けられる選手になります。

今年は6月の時点で、20人ほどは進路が決まっています。関東大学1部リーグ、関西大学1部リーグ、九州大学1部リーグの大学に進学予定です。Jクラブの練習に参加している選手もいます。

 

――部員は何人くらいいますか?

 

3学年で270人です。それを8チームにわけて活動していて、チームごとに担当コーチがいます。それぞれが独自に動いているので、コーチが監督の指示を仰いで、練習試合を組んだりということは一切ないです(笑)。
チーム間の競争は常にしています。それもスペインに行って学んだことです。スペインは1チーム23人ぐらいで、常に練習生が来て、どんどん入れ替わりますよね。

日本は学校スポーツなので、スペインと同じようにはできませんが、チーム間の競争で選手の入れ替わりを激しくしています。それもピラミッド式ではなく、Aチームを真ん中にして、BチームとCチーム、さらに1年生のAチームが周りを囲んでいるイメージです。なので、良い選手であれば、一気にAチームに入ることができます。

 

 

■選手権出場より、上のカテゴリーで活躍できる選手に育てることが重要

――チームとしての今後の目標は?

 

一番の目標は、興国の選手がA代表に入ることと、年代別代表に入ること。2つ目が、プロや大学でちゃんと活躍できる選手を作ること。3番目が高校選手権と高円宮杯プレミアリーグWESTに出場したいなと思っています。
この前、スペインの方に聞いたのですが、エスパニョールユースの監督は、2年連続でスペインの大会で優勝したのに、クビになったらしいんですよ。なぜならば、選手がトップに上がっていないから。もちろん、選手権にも出たいと思っていますが、それだけでなく、選手の将来を考えた指導、育成ができればと思っています。

いま、FC今治の岡田武史さんと懇意にして頂いて、よく今治に行って試合をしています。そこで岡田さんに「興国のサッカーはすごくいい。このまま続けていくべきだ」と言われました。そこではもう一言「でも、これで勝つのは難しいだろう?(笑)」と。選手権の大阪府予選でも、相手チームはかなり対策をとってきますから、それでも打ち破れるように、自分たちのサッカーを追求していこうと思っています。

 

――高校選手権に出ることがゴールではなく、選手権はあくまで過程であり、サッカー選手として、プロや大学など、さらに上のカテゴリーで活躍するためになにをするかを追求しているんですね。
選手に対して、サッカーを教える部分と教えない部分はどうしていますか?

 

スペインでU-8、9の試合を見ると、コーチが線審のようにタッチライン上を移動しながら、ずーっと選手に何かを言っているんですね。何を言っているのか、通訳の人に聞いたら、常に状況判断をするような声掛けをしていると言うんです。「いま2対1だぞ」とか。
子どもたちなりに、その状況で何をすればいいか、考えざるをえない状況を作っているんです。そして15歳を過ぎたあたりから、コーチはあまり言わなくなる。

 

――日本とは正反対ですね。

 

勉強を例にすると、日本では小学校で足し算や九九を覚えて、それがベースになって中学、高校と進んでいくじゃないですか。スペインの場合、サッカーもその考え方なんです。
日本の場合、ことサッカーになると、足し算、引き算、九九ができない子どもに「自分で考えろ」と言っています。教わったことがないので、やりようがないですよね。ジュニア年代のサッカーは、そのような状況になっていると思っています。

 

次ページ:「自分で考えなさい」では、自分で考える選手は育たない

 


 

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取材・文 鈴木智之

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