3月からストライカーに特化したスクールを開校した元J2得点王の長谷川太郎さん。3~6年生を対象に指導し、2030年のワールドカップで得点王に輝ける選手を育てることを目標に、自身が得たゴールを決めるコツを惜しみなく伝えています。まずは前回記事にも掲載したこちらの動画をご覧ください。
シュートを打つにしても、肩の向きを変えるだけでキーパーは右か左、どちらにシュートが飛んでくるか予測することが難しくなります。長谷川さんのスクールでは、このように彼自身がJリーグを戦いながら獲得してきた点をとるための方法を教えてくれます。
今回は点をとるためのステップの重要性を強く説いています。(取材・文 木之下 潤 写真サカイク編集部)
■FWはトップスピードでのプレーが求められる4>
――FWは局面での1対1が多いので、アジリティやフィジカルの強さを持ち合わせていた方が有利ですよね?
長谷川 そうですね。FWはペナルティエリア内の狭いスペースと短い時間の中でいろんな動きをすることが求められます。私は柏レイソルユース育ちですが、そこで現在、ヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチとして活躍されている谷真一郎さんにラダーをつかったさまざまなステップを指導してもらいました。
――日本人選手の長所はよくアジリティだと言います。谷コーチは独自の理論をお持ちです。
長谷川 最近は、サッカーの動きに適したラダーとして自ら考案・開発した『タニラダー』でたくさんのジュニア年代の選手たちにも教えられています。他との違いは、マス目が4つしかないことです。ここに試合で必要なステップが凝縮されていると思っています。例えば、シュートは最後に踏み込む直前、歩幅が大きくなります。だいたい1〜1.5mほどだと思いますが、その直前に4歩ぐらい使って歩幅調整を行っているはずです。ほかにも、体の向きを変えたり、視野を確保するために4歩ぐらいで細かなステップを踏んでいます。このようにサッカーは、何歩もかけてステップを踏んでいられないのが現実です。
――そういわれたら4歩という少ない歩数で集中的にステップを踏むのは理にかなっています。
長谷川 ステップのトレーニングで重要なことは、反復練習によってステップの踏み方を習得するのもそうですが、『体をどう使えば、次の動作に素早く移ってうまく流れられるか』という意識なんです。意識をしなければ、自分なりのステップはこうだという『気づき』につながりません。
通常のラダーはマス目が多く、すべてのマスで体に意識を集中させることは難しい。FWが点を奪うときはトップスピードでのプレー、そしてシュートです。だから、長くやるよりは短いものでトレーニングを行った方が筋肉の使い方や筋肉の変化を自分なりで理解しやすい。
■タニラダーは使い方次第でサッカーの実戦仕様になる
――長谷川さんも実際に『タニラダー』を取り入れられています。単純にステップを踏む際、どんなところを意識するように指導しているのですか?
長谷川 ステップだけで言えば、谷さんと同じ『パワーポジション』です。地面から跳ね返ってくる力を感じることが素早くプレーしたり、守備として素早く相手に対応したりすることにつながります。跳ね返りの力が次への動作の動力になるから、その最大値をどうすれば体で受け止めて次につなげられるかが大切なのです。
具体的に言えば、足先の向きです。外側に向きすぎると、跳ね返りの力を体全体に伝えてくれる膝にクッション性がなくなって力が半減します。つま先の向きは進行方向に対して45度。それが跳ね返りの力を最大限に次への動作に利用できるポジションです。
――つま先の向きまで……、そこまで細かく追求しているんですね。
長谷川 単純に反復練習だけでは筋トレと変わりません。高い意識を持ってトレーニングをすることが大事です。だから、集中力の持続という点においても4マスはリアリティがあります。子どもたちはタニラダーをやるとみるみるステップがうまくなります。おそらく脳からの動作信号が体に伝わり、つながっていくのを体感しているんです。そこに気づくとどんどん早くなります。
私は体幹で有名な木場克己さんのチューブトレーニングも取り入れています。あのチューブも体のどの部分にどう効いているのかを意識できなければ、意味がありません。シュートも含めてコツをつかむには『気づき』が必要です。それは意識を集中していなければ見落としてしまいます。
――なるほど。では、どのようにあのラダーを活用しているのでしょうか。
長谷川 ステップを習得するトレーニングだけではなく、ゲーム感覚で楽しくシュートを決めるトレーニングにも使っています。例えば、FWとGKにわけ、ラダーをやった後にそれぞれのポジションにつき、ゴールを決める練習です。これはFWにとっては素早くシュートを打つ練習にもなりますし、GWの状態を素早く把握する練習にもなります。当然、自分がステップを早くすれば、GKがいない状態でシュートを打つことも可能です。GKにとってはステップが遅れたら瞬間的な反応速度が鍛えられるでしょうし、FWよりも早くステップが終えられたら優位な状況で駆け引きもできるかもしれません。
ステップのスピードを上げることを目的に考えられたものですが、使用者次第でサッカーの実戦にも応用できます。思い出深いのは、ある日、谷さんがラダーを設置した場所に水をまき始めたんです。滑りますよね? でも、サッカーは雨の日も試合があるから実戦と同じ状況なのです。
2001年に日本代表がアウェーでフランス代表と戦い、5対0で敗れた試合があったと思います。あれも雨が降ってピッチがぬかるんだ状態でした。日本の選手は口々に自分たちは滑ってうまくボールを扱ったり、プレーできなかったと発言していた一方で、フランスの選手たちは足を滑らせたり、体勢を崩さなかったと語っていました。これは一例ですが、実戦として使えるコーディネーション能力を養ってほしいので、私も工夫して『シュート×タニラダー』のトレーニングを考えています。
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