テクニック
なぜ、金崎夢生はシンガポール戦で先制ゴールを奪えたのか
公開:2015年11月13日 更新:2020年3月24日
11月12日(木)、日本代表はロシアW杯アジア二次予選でシンガポールと戦い、3対0で勝利しました。この試合を、スペイン・バルセロナを拠点に、世界中でサッカーチームの指導、コンサルティングをおこなう指導者集団『サッカーサービス』のフリアンコーチに分析してもらいました。先制点を決めた金崎夢生選手の特徴はもちろん、清武弘嗣選手と香川真司選手に共通する長所や清武選手にはなくて香川選手にはある特徴、さらには日本の守備の長所や今後の課題についても細かく説明してもらいました。わたしたちは日本代表の試合からなにを学び、なにを子どもたちに伝えればよいのでしょうか。フリアンコーチの分析にそのヒントが詰まっています。(取材・文 鈴木智之)
■日本の“攻から守の切り替え”は見事だった
まず、日本代表がシンガポールに勝利したことについて、おめでとうと言いたいと思います。テクニック、フィジカルにおいて、日本はシンガポールを上回っていました。試合全体を通じて、ハリルホジッチ監督が選手たちに求める、前線からの守備といったハードワークができていました。なかでも、攻撃時にボールを奪われた際の『攻から守の切り替え』は見事なものがありました。攻めている時にボールを失っても、高い位置で奪い返すことができていたので、常に日本がボールをキープしていました。
これはグアルディオラが監督をしていたときの、FCバルセロナが実行していたコンセプトです。攻撃と守備は別ものではなく、常に表裏一体です。日本はそのコンセプトを忠実に実行することができていたと思います。
選手個人に目を向けると、この試合で良いプレーを見せたのは金崎夢生選手と清武弘嗣選手。守備では吉田麻也選手、森重真人選手の判断が光っていました。
■金崎夢生からプレーから学ぶ“マークを外す動き”
まず、金崎選手ですが、彼はデスマルケ(マークを外す動き)に特徴を持った選手です。センターバックが金崎選手をマークしようとするのですが、サッカーサービスでも子どもたちに伝えている“マークの外す動き”を駆使し、ディフェンスラインの裏を取ることに成功していました。シンガポールは自陣に引き、スペースを消す守備をしていたので、金崎選手が使えるスペースはあまりなかったのですが、それでも効果的な動きで最終ラインを混乱に陥れていました。
また、一般的なFWはペナルティエリアの中で止まっていることが多いのですが、金崎選手はペナルティエリアの中で、アクションを起こし続けられる選手です。それに、ゴール前だけでなく、サイドのスペースに流れてボールを受けることもできるので、シンガポールのDFからすると、非常に厄介な選手だったと思います。
金崎選手と縦の関係で、攻撃をリードしていたのが清武選手です。彼はあまり目立つプレーはありませんでしたが、密集地でボールを受けるプレーがとても光っていました。シンガポールはDFラインとMFのラインが自陣へ下がっていて、日本にスペースを与えない守備をしてきました。スペースがない中で、どのようにプレーするべきか? これは現代サッカーにおける重要なテーマのひとつで、我々サッカーサービスが提唱する「エコノメソッド」では、相手選手のスペース、つまりギャップでボールを受けるプレーを重要視しています。
■清武弘嗣や香川真司のプレーから学ぶ“ギャップで受ける動き”
その面で、清武選手は良いプレーをしたと思います。彼はピッチ中央の位置で、センターバックの前、ボランチの後ろ、サイドバックの中間地点にポジションをとり、シンガポールの選手がプレスに来たら、守備ラインが崩れるような位置で、意識的にボールを受けていました。常に首を振り、どこにスペースがあるか、あるいはスペースができそうかを予測し、タイミングよく動き出していました。
香川真司選手も、相手選手間にできたギャップでパスを受けるプレーが上手な選手です。シンガポール戦は15分ほどしか出場していませんが、短い時間で特徴を発揮していました。清武選手が香川選手の域に到達するには、MFとDFの間にできるギャップでのプレーだけでなく、DFラインの裏のスペースを使うプレーが意識的にできるようになると、さらに相手に脅威を与えることができるでしょう。
香川選手はDFラインの前でボールを受けるだけでなく、相手のサイドバックやセンターバックの裏のスペースへ抜け出してボールを受けることができ、さらに味方のFWがどこにいて、どのような状態でプレーしようとしているかを認知することができます。サッカーサービスは「ギャップで受ける動き」をジュニア年代から指導していますが、香川選手はお手本になりうるプレイヤーです。
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取材・文 鈴木智之