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「シュートを浮かすな!」ではなく、浮いた理由を説明しているか? サッカーコーチに必要な力量と人間性とは

公開:2021年4月 6日

キーワード:クラウスコーチングシュートトレーニング

みなさんは、日本人のいいところというと何を思いつきますか。日本に何度も訪問したことがあるクラウスは「1300万人都市の東京における規律と清潔さはすごいと思った。人に対するリスペクト、規律、清潔さ、そして時間通りなところ。だから私は自分のスクールでも多くの日本人指導者を起用している。非常に真面目だし、学習意欲がある。好んで日本人指導者を起用しているんだ」とポジティブな印象を口にしていました。自分たちが美徳としているのを海外の人にも褒められるのはやはり嬉しいですね。(取材・文 中野吉之伴)

※この記事は2015年5月配信記事の再掲載です。
 
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■子どもが言うことを聞くのは当然と思っていませんか?

練習の現場ではどうでしょうか。実際にサッカースクールを行った時の印象としては「日本人の非常に大きなメリットは規律と礼儀正しさだ。『集合!』と呼べば、みんなすぐに来てくれるし、静かだ。一度の説明で済むし、すぐに次のことができる」とクラウスは語っていました。この辺りはドイツと真逆と言えます。コーチが練習を話そうとしてもいつまでも友たちと話していたり、ボールを蹴るのを止めようとしない。だからといって「ぼくらは大人なのだから、子どもが言うことを聞くのは当然」という姿勢では、あっという間に子どもに距離感を取られてしまいます。

一例を挙げます。以前、小学校1年生の長男と近くのグラウンドでボールを蹴っていたときの話。近くに住む11歳のヨナスという子が友達と「一緒にやっていい?」と言ってきました。即席で2チームに分かれて1時間近くミニゲーム。SCフライブルクのジュニアに招待されたこともあるというだけあって、ヨナスはかなり上手い。そんなヨナス相手に長男はなかなかの好プレー。「この子上手いね。どこのチーム?」と聞かれたので、「まだちゃんとしたクラブには入っていないんだ。どこがいいかなと探しているところ。AかBか、それか......」と返したところ、「Aは止めたほうがいいよ。コーチが良くないから。サッカーを教えることができないんだ」と一言。Aというクラブはフライブルクという地域の中では強豪クラブの一つですが、子どもたちはその名前だけでチームを選んだりしません。ヨナスは他のクラブを回り、「これは」というコーチを見つけたそうです。

子どもたちは何かを求めてクラブにやってきます。それは日本でもドイツでも変わらないこと。自分たちが好きなサッカーをおもいっきり楽しみたい、しっかりとうまくなっていることが実感できるトレーニングがしたい。それが可能かどうかはコーチの力量と人間性にかかっています。

前述したように、ドイツのコーチは、子どもたちに興味を持たせるような話し方、立ち振舞いが重要視され、「このコーチのもとでいろいろと学びたい」という思いを抱かせることができるかが重要になります。子どもの話だからと聞き流すのではなく、たとえ屁理屈のような問いかけにも相手を納得させられる答えを見出せるかどうか。少なくとも答えを見出そうとしているかどうか。子どもはそうした大人の姿勢を観察しています。

例えば、シュート練習で枠を大きく外す子どもがいたとします。すると、「シュートを浮かすな!」「枠に蹴り込め!」といった声がピッチに響くシーンはよく見受けられます。しかし、ミスをしたことは子ども自身が一番わかっています。子どもたちが必要としているのはそうした叱責でしょうか? 浮かさないようにと思いながらシュートすれば、ボールが浮かなくなるわけではありません。

■ピッチで説明してデモンストレーションをしてあげよう

クラウスは「ドイツにだってそうしたことを知らないコーチは多い。アマチュアクラブの立場からすると、ボランティアでやってくれる彼らにもちろん感謝していることだろう。でもコーチにはこうしたディテールを教えられるのが大事なんだ」と話します。

練習を質の高いものにする上で、もっとも重要な要素の一つがコーチング。この点についてクラウスは「監督にとって大事なことは、ピッチ上で説明してデモンストレーションをすることだ。子どもたちを観察すること。どこにミスがあり、何がミスで、どれが原因か。子どもがシュートミスをしたら、なんでミスをしたのかを説明してデモンストレーションをしてあげること。シュートが浮くことの多くの原因はブレーキなんだ。シュートを打つ前の踏み込みで体にブレーキをかけてしまう。そのために上半身が傾き、ボールが上に飛んでいく。ボールを打つ瞬間、身体は前に行かないといけない。加速が必要だ。あるいはドリブルをしている子どもを見るときは上半身の使い方にも気を配るんだ。手に力が入っていたらいいドリブルはできない。上半身はリラックスする」と指摘していました。

親ならば、わが子を任せるコーチに多くを求めたくなります。しかし完璧なコーチはいません。誰もが短所を抱えているし、ミスもします。その中でなにを重要視すべきか。子どもとしっかりと向かい合おうとしている人間性、そして子どもに教えるという立場への責任感を持ち、自分を成長させようとする姿勢。それがクラブ選びの大きなポイントになるはずです。

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クラウス・パブスト(Klaus Pabst)

ドイツの名門「1.FCケルン」でユースコーチや育成部長を務め、多くのブンデスリーガを輩出。ケルンで最初となるサッカースクール「1.Jugend-Fusball-Schule Koln」を創設し、サッカー指導者養成機関としても知られる国立ドイツ体育大学ケルンで講師を務めるなどドイツサッカー育成の第一人者である。
日本へは何度も訪れており、指導者講習会や選手へのクリニックを開催。日本サッカーの育成にも造詣が深い。

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取材・文 中野吉之伴

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