テクニック
多彩な攻撃でJクラブに連勝。オオタFCが大切にするフィジカルの強い相手に負けない個人戦術の指導法とは?
公開:2022年1月21日 更新:2022年10月17日
ジュニア年代の強豪として知られる、オオタFC(岡山県)。第45回全日本U-12サッカー選手権大会では持ち前の攻撃力を発揮し、清水エスパルス、ツエーゲン金沢といったJクラブを相手に連勝を果たした。
以前、COACH UNITED ACADEMYに出演した、U-12の今井大悟コーチに、ツエーゲン金沢との試合後(5-1)、話を聞いた。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)
(グループL、1次ラウンド第3節。ツエーゲン金沢(白) vs オオタFC(青))
ゴール前での選手同士の関わりと様々なアイデアで攻撃を支配
全日本U-12サッカー選手権では、グループリーグで2連勝を果たしたものの、得失点差で決勝トーナメントに進むことができなかったオオタFC。しかしながら、ツエーゲン金沢を相手に大量5ゴールを奪って勝利した試合では、高い技術をベースとした攻撃的なスタイルを発揮し、鮮烈な印象を残した。
なかでも特徴的だったのが、ゴール前での選手同士の関わり、多彩な攻撃のアイデアだ。今井コーチは「うちはフィジカル的に優れている選手が少ないので、止める・蹴るの技術や個人戦術をメインに指導しています。ジュニア年代で技術や戦術理解が身につけば、体が成長するにつれて、他の選手を追い抜けるのではないかと見据えてやっています」と話す。
COACH UNITED ACADEMYでは、「アタッキングサードの個の仕掛けと組織的なサポート」をテーマにトレーニングを実演してもらったが、全国大会ではJクラブを相手に、堂々のプレーを披露。今井コーチは「質の部分ではある程度出せたと思いますし、取り組んでいることの方向性は間違っていないという確認の場になりました」と自信をつかんだ様子だ。
一方、課題も出たようで「相手の強度が上がったときに、同じようにプレーができるか。フィジカルの強い相手に体をぶつけられると、重心がブレてキックの精度も下がるので、もっと質を上げていきたい」と振り返り、「上のカテゴリーで通用する選手になるためには、攻撃だけでなく、守備もできなくてはいけない」と、選手たちの将来を見据えて話した。
「守備の原理原則でいうと、まずは予測すること。大事なのは、選手同士の距離感です。守備は試合に勝つために必要なことですし、上のカテゴリーに行けば行くほど、求められる部分だと思います。それもあってトレーニングでは、攻撃の練習だけ、守備の練習ではなく、一つのメニューで両方の現象が出るようにしています」
「経験を踏まえて選手の今後の変化を見る時間が大切です」(今井氏)
今井コーチ自身としては、ジュニア年代を「選手育成の過程」ととらえる中で、選手起用の難しさに直面したようだ。
「選手起用や交代に関しても色々考えました。試合開始早々、相手の突破を許した子に対して、すぐに交代させればいいかといったら、育成の視点からすると考えてしまいます。その子に修正する時間も与えたいし、この試合だけでなく、次につなげるために、経験を踏まえてプレーがどう変わっていくかを見る時間も必要です。そこは子どもたちだけでなく、僕ら指導者の経験も必要なのかなと思います」
多くの手応えといくつかの課題を得て、全日本U-12サッカー選手権を終えたオオタFC。今井コーチは今後の選手育成について「日本人は今、世界中のリーグで活躍しています。その選手たちのように、世界で戦える選手を輩出していきたい」と語る。
「子どもたちはインターネットやYouTubeなどから情報を得ていて、海外でプレーすることが明確な目標になっています。僕としては、そのお手伝いができればいいなと思っています」
(ツエーゲン金沢との試合後にインタビューを受ける今井コーチ)
オオタFCのOBに、京都サンガのアカデミーを経てトップに昇格し、FC今治でプレーする島村拓弥選手がいる。今井コーチは「ドリブルが好きで、周りから『パスを出せ』と言われても、自分で突き進むような子でした」と懐かしそうに話す。
島村選手はその個性を生かし、一時はブラジルのロンドリーナECでプレーしていた。彼のように、世界に羽ばたく選手の育成を目指し、オオタFCと今井コーチのチャレンジは続く。
▼▼COACH UNITED ACADEMYで配信している今井コーチのトレーニング動画