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テクニック

プレスを回避する「体の向き」と「周りの見方」。全国王者の経験を持つ街クラブが行うビルドアップの指導法

公開:2022年9月 2日 更新:2022年10月17日

2019年の「JFA 第43回全日本U-12サッカー選手権大会」で優勝を果たすなど、全国的な強豪として知られるバディーSC。Jクラブがひしめく神奈川県において、存在感を放つクラブだ。

以前、COACH UNITED ACADEMYでは、ジュニアユース統括の髙橋伸忠氏に「前線からのプレスで、相手のビルドアップを打破する守備のトレーニング」を紹介してもらった。

今回は逆の発想として、「プレスをかけて来る相手を攻略するビルドアップ」をテーマに、U-11を担当する前島裕樹監督にトレーニングを実践してもらった。

川崎フロンターレU-10などが出場した昨年の「第13回神奈川県チャンピオンシップU-10」の優勝メンバーが繰り広げる、質の高いプレーは必見だ。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2022年6月13日掲載記事より転載)

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一番効率のいい前進の方法は「DFの裏のスペースにボールを出すこと」

バディーSC U-11前島監督による「前線からプレスをかけて来る相手を攻略するビルドアップトレーニング」。前編のテーマは「数的優位の状況でボールを前進させる練習法」だ。

前島コーチは「バディーSCではボールを動かし、効率よく前進していくことを目的に、後方からの攻撃の組み立ての練習を行っています」と話し、トレーニングに入っていった。

1つ目のトレーニングは、数的優位の状況からのビルドアップをテーマに「2対1(ハンドパスライン通過)」を実施。ルールとしては、2対1でハンドパスをしながら、ライン通過を目指す。(最初は手でパスをし、慣れたら足で行う)

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前島コーチは選手に対し、「守備はどんどんプレッシャーをかけていこう。ボールホルダーは、ボールを受けたときに、その場に留まった方がいいのか、動いた方がいいのか。ドリブルなのか、パスを選んだ方がいいのかを考えながら、味方の選手をうまく使ってやってみよう」とアドバイスを送っていく。

さらには、途中でプレーを止めて「DFが寄せてくることをわかって、プレーしないといけない。一番効率のいい前進は、DFの裏のスペースにボールを出して、そこで受けること。DFと入れ替われる状況を作ると、守備のラインを越えることができる」と、具体的な動き方について言及していく。

また、パスを受ける選手のポジショニングについても「パスを受ける前の自分の位置、受けた後のDFのプレッシャーのかけ方を見て、パスの出し手と受け手のイメージを合わせていこう」「体の向きはすごく大事だよ。前進する方に体を向けよう」などの声をかけていった。

続いては、ハンドパスではなく「足を使ってプレーする」というルールにチェンジ。ここでは「味方の足下にパスを出すのか。DFと1対1にならないように、スペースにボールを出すのか。ファーストタッチで進入できる状況を作るのかを考えよう」と判断の重要性を投げかけていく。

ここで意識したいのが「相手を見ること」だ。相手のプレッシャーの速さ、位置を見ることで、ボールを受ける位置を工夫したり、ワンタッチでリターンパスをするなどのアイデアが出てくる。

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前島監督は「パスを受ける前の準備が大事。体の向きを作り、DFのプレッシャーを見よう」と、ボールを受ける前に必要なことを提示していく。

前進をする上で大切なのがポジショニングに応じた体の向き

2つ目のトレーニングは「スイングからの前進」。右から中央、左とパスを送り、左でパスを受けた選手がドリブルで前進する。

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最初はDFがいない状況で行うが、相手がいると仮定して「相手が自分の前にどう立っているのか。ボールを見て動くのではなく、相手がどう動いているかで決断しよう。最初から足下で受けるのではなく、前に出ようとして、相手がいるから下がって受けるなど、ボールホルダーに対して角度を作って受けよう」など、実際の試合に近いシチュエーションを意識させていく。

途中からDFをつけて行い、ここでは「相手の位置によって、プレーを途中で変えること」を重点的にコーチングしていく。

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「相手(DF)をどう越えていくか。パスの受け手は、1本のパスでDFを越えられる位置にポジションをとろう。パスの出し手は、DFが外へのパスコースを切っているのであれば、縦にパスを入れて、そこからサイドに展開するイメージを持とう」

味方からのパスを中央で受ける選手は、ボールホルダー(パサー)に対して体の向きを作り、角度をつけてボールを受けることがポイントだ。

前編最後のトレーニングは「3対2(ラインゴール)」。攻撃側が数的優位の状況で、守備を突破してラインゴールを目指す。

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前島監督は「ボールを失わないためにも、相手の位置を見ること。パスを受ける際に、体の向きを作ることを意識しよう」と話し、どこが数的優位なのかを認識して、1対2にならないように、相手と味方の位置を見て、連動することの重要性を説いていた。

最初は攻撃の選手が3人横並びでスタートしていたが、途中から「スタートポジションは自由」に変更。「パスの受け手がむやみに動くと、ボール保持者の選択肢を狭めることになる」と話し、状況を見ながら、どこにポジションをとるかを、選手たちに考えさせるコーチングをしていた。

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バディーSCの選手たちは技術が高いので、プレーがテンポよく続いていく。その中で、守備を左に寄せ、右のスペースにボールを運んで前進するプレーに対して「ナイス!」と褒めていた。

前編のトレーニング終了後、前島コーチは次のように語った。

「前編のトレーニングは、相手を見て、どちらから攻撃するのか。体の向きや選択肢を持つことが大切になります。選手がどのような判断をしているのか、何を見て、何を感じているのかを聞きながら、指導することを心がけました」

相手を見て判断すること、ピッチ内の状況を把握し、優位な状況にボールを運ぶことなどは、小学校高学年から意識させたい部分だ。そのためのトレーニングとして、ぜひ参考にしてほしい。

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【講師】前島 裕樹/
バディーサッカークラブで指導者としてのキャリアをスタート。バディージュニアユースで10年、相模原市U-15トレセンスタッフを3年、バディーSC(ジュニア)選抜クラスで3年指導に携わっており、現在はU-11の監督を務めている。
2019年に行われた「JFA 第43回全日本U-12サッカー選手権大会」、2021年に行われた「第13回神奈川県チャンピオンシップU-10」ではチームの優勝に貢献した。

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