テクニック
ドリブルで仕掛ける時にも使える!「体の使い方」と「ボールの置き所」でプレーエリアを作る練習法
公開:2022年9月 2日 更新:2022年10月17日
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、サッカーを始めたばかりのU-10年代に向けた指導動画も配信している。ユーザーからは「映像が短く、ポイントが絞ってあって見やすい」など好評を得ている。
今回は、マリノスサッカースクールのヘッドオブコーチングとして活動中の和田武倫氏に「ボールを奪われないドリブル、体の使い方を磨く練習法」を教えてもらった。
試合中、ドリブルで相手を抜くプレーはチームにとって大きな武器になるが、相手を抜けない場合やボールを受けたときに仕掛けられない状況もある。
そうなったときに、守備者にボールを奪われずにキープすることで、再度チャレンジすることができる。その能力を高めるためのトレーニング動画を2つ紹介したい。(文・鈴木智之)
相手に対して半身になりボールは相手から遠い場所に置く事が大切
最初のトレーニングは「プレーエリアを作る体の使い方とボールの置き所」をテーマに「卵落とし」を実施する。
ルールとしては1人1個、片手でボールを持ち、グリッド内を走りながら他の選手のボールを叩いて、地面に落とせば勝ちとなる。
重要なのが、ボールを顔より下の位置でキープすること。なぜならば、顔の近くにボールがあると、他の選手の手が顔にぶつかり、怪我をする恐れがあるからだ。顔より高くボールを上げず、ひじを曲げてボールを抱えないことを最初に伝えていく。
和田コーチは「ボールを落とされないために必要なのは、自分の体から遠いところにボールを置いて、相手からボールを守ること。周りをよく見て、自分のボールが狙われていないかを察知し、チャンスがあれば仲間のボールを落としていこう」とポイントを説明する。
続いて、選手たちの様子を見ながら「プレーエリア」の概念を提示。
「ボールを相手から隠すと同時に、空いている手で相手をブロックしよう。そうすることで『プレーエリア』ができます。手を上手く使うと、プレーエリアを確保することができ、相手が入ってくることができません」
この説明をした後、誰が何回ボールを落とせたか、回数を競っていく。ここでは「自分のボールが狙われていないかどうか、常に周りを見よう。積極的にボールを落としに行こう」と声をかけ、周りを見ながらプレーすることの重要性を説いていった。
ここからは、ボールを落とされた選手はその場で座り、勝ち残り形式になっていく。ゲームの要素を高めることで、集中力を保つと同時に、勝つためにどうすればいいのかを考えさせていった。
ボールを失わない為には方向転換・ターン・スクリーンスキルが必要
2つ目の動画は「方向を変える、ターン、スクリーンを使うドリブル」をテーマに実施。和田コーチは「相手をかわすドリブル、抜こうとしたけどダメだったのでターンをするドリブル、体を使って相手をかわすドリブルの練習をします」と話し、トレーニングに入って行った。
最初のメニューは、コーンの前でパスを受けてターンをし、ドリブルでコーンを左右どちらかにかわし、斜め前にあるゲートを通過する。
和田コーチは「(スタート地点の)フラットマーカーからボールに近寄って、迎えに行ってターンをしよう」とアドバイスを送る。
さらには、ボールを受けるときに、パスの出し手に正対して足元にボールを止めるのと、攻撃方向を意識しながらボールに近寄り、半身を作ってボールを受けることの違いを実演。ゴール方向を意識した体の向きを作ることの重要性を伝えていった。
動画ではサッカー経験の浅い子に対し、ゆっくりと丁寧にコーチングする姿も収録されている。このあたりの伝え方、接し方も参考になるだろう。
2つ目は「ターンをして戻るドリブル」にトライ。実際の試合中、ボールを受けてターンをし、前を向いたはいいが、相手がいたのでドリブルをキャンセルし、戻ることがある。
このターンをインサイド、アウトサイド、足裏など、様々な部位を使って行う。ポイントはコーンを相手に見立て、近づきすぎると取られてしまうので、適度な距離感を保ってターンをすること。
和田コーチは「ターンの仕方はいろいろあるよ」「ターンをするときは大回りせず、一度のコントロールで戻って来られるようにしよう」「ターンした後にスピードを上げよう」などの声をかけ、選手たちの意識を向けさせていく。
3つ目は、体を使ってボールを隠し、スクリーンして運ぶドリブルにトライ。ここでもインサイド、アウトサイドの両方を使ってターンをしていく。
今回紹介したトレーニングは、遊びの要素がありながら、サッカーに必要な認知、判断、実行にアプローチすることができる「卵落とし」と、実戦で活用できるドリブルの基礎を身につける「ドリブルドリル」の2本となっている。
どちらも設定はシンプルなので、すぐに取り入れることができるだろう。U-10年代やサッカー経験の浅い子を指導するコーチにとって、参考になること間違いなしだ。
【講師】和田武倫/
高校卒業後、日産自動車サッカー部でプレーし、現役後は横浜マリノスの前身の日産フットボールクラブで指導を始め、現横浜F・マリノスのプライマリー、ジュニアユース追浜、ユースの監督を歴任。現在はマリノスサッカースクールのヘッドオブコーチングとして活動している。