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日本の子どもたちも小さい時から触れておきたい「戦術的」にサッカーを解決する視点

公開:2022年9月16日 更新:2023年11月16日

ジュニア年代において、少人数トレーニングの重要性が叫ばれている。少年サッカーの中には広いピッチでひとつのボールに群がり、ボールに触る機会が少ない、と言ったケースがよくみられる。そのような状況よりも、1人~数人にボールが1つあり、触れる機会が多い方が、ボール操作や身体操作の向上に役立つことは、多くの指導者が理解しているところだろう。

さらには、相手がいる状況でトレーニングをし、「相手がいる中でのテクニックの発揮=オープンスキルを高める」視点でトレーニングすることがポイントになる。

そこでCOACH UNITED ACADEMYでは、筑波大学大学院でコーチングの研究をするとともに、指導現場に立つ内藤清志氏に「少人数でもできる、オープンスキルを高めるトレーニングの考え方と作り方」をテーマに講義をしてもらった。

前編は「トレーニングを構築する上で必要な、考え方の整理」。トレーニングの前提となる考え方を知ることで、質の高いコーチングをするためのヒントが得られるだろう。少年サッカーにおいて戦術をどのように捉えるか、という点も参考にしてもらいたい(文・鈴木智之)

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子どもにある「4つの性質」を理解しトレーニングを構築する

内藤氏は少年サッカーの選手たちを指導するにあたり、「自己主張」「新たなカテゴリー、どのチームにいってもサッカーを続ける」の2つをポイントにしているという。

「オンラインや交通網の発達により、世の中は便利になりました。結果として、子どもたちの活動量、運動量の減少が見受けられます。また、最近の子どもたちは一人や家族と過ごす時間が増えたことで、友達やコーチとコミュニケーションをとることが苦手になっている印象を受けます」

サッカーはチームスポーツであり、仲間とのコミュニケーションは重要だ。自分の意見を伝え、仲間の考えを聞く。そして、どうすればより良いプレーができるのかを考えてトレーニングをし、コミュニケーションをとる。その繰り返しが、個人としてもチームとしても向上につながっていく。

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「最近の子どもたちは『心の粘り強さ』が減少しているように感じます。育成年代の指導において、技術・戦術へのアプローチも必要ですが、なによりも大切なのは『いかに、子どもの心に火をつけるか』だと考えています。そのためには、よりサッカーを好きになってもらうことが大切で、楽しい(好き)からやる、やるからうまくなる、工夫するといったサイクルになることが望ましいです」

内藤氏は子どもたちを指導する上で、「自己主張ができ、目的を持って取り組むことのできる選手を育てるにはどうすればいいか」を、常に考えているという。「子どもには、次のような性質があると学びました。

それが、競争したがる、真似したがる、ちょっとだけ無難しいことをやりたがる、認められたがる。この4つです」

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指導経験のある人は、大いに共感できる要素だろう。これらを踏まえると、「ボールにたくさん触り、ゴールを決める」ことのできる、少人数制でのゲームは少年サッカーにおいてうってつけだといえる。

子どもたちの発育発達にふさわしい人数、グラウンドの大きさ、適正な時間でゲームをすることは、なによりのトレーニングになるはずだ。

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「戦術的思考力」と「技術力」を合わせて鍛えることが大切

ここからは、トレーニングを考える上で大切な、「プレーの構成要素」に移っていく。昨今、よく聞かれるようになった「状況把握(認知)」「判断」「実行」のプロセスが、それにあたる。

「状況把握(認知)を料理で例えるなら、どんな食材がどのぐらいあるのかを知ることです。その情報をもとに、この素材を使おうと決めるのが判断です。そして、この調理方法でこの味付けにしようというのが実行です」

状況把握と判断は、本人にしかわからない。コーチが外から見ていて、頭の中を覗くことはできないからだ。

「私は、外から見ることができない状況把握と判断の部分を『戦術的思考力』と呼んでいます。『実行』はボールや身体操作の部分なので、外から見ることができます」

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内藤氏は「日本の子どもたちは、ボール操作、身体操作のレベルは、同年代のヨーロッパの選手に比べても高いレベルにあります。それは海外遠征に行くと、実感する部分です」と話す。

一方でヨーロッパの選手たちは、戦術的思考力を小さい頃から学ぶことで、サッカーの構造をベースに、問題を解決する力に長けているという。

「渋谷のスクランブル交差点にたとえると、日本の子たちはステップワークや身のこなしを高めることで、四方八方から来る人にぶつからず、渡り切ることできます。一方、ヨーロッパの子はここに信号を作って、こっちから人が来ないようにしようなど、交差点の構造を理解し、仕組みを学ぶことで、人にぶつからずに渡り切る方法を身につけています」

日本の身のこなしに、ヨーロッパの戦術的思考力を身につけることができたら鬼に金棒だ。それはジュニア年代から、取り組むことができるものと言えるだろう。

「日本では、個人が技術練習をして、ボールが扱えるようになってから、グループの戦術練習をするという流れがあるように感じます。最初から個人の技術とグループの戦術を同時並行で行うことや、少人数のトレーニングを通じて、戦術面へアプローチすることができると考えています」

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さらに、こう続ける。

「例えば2vs1の練習などで、相手に対して十字の線を引きます。攻撃の選手が別々のブロックに入ることで、守備の選手の的を絞りにくくすることができます。それが戦術的に優位な状態です。

しかし、当然ボール保持者のボール状況によっては、同じブロック内に入ることもあります。つまり、戦術的思考力と技術力がセットになっていることが大切で、個人の技術が安定していれば、チームメイトは別のブロックでサポートすることができるのです」

COACH UNITED ACADEMY動画では、「上手くなる(質の向上)=スピード(時間)」。「質が上がるとは早くなる、時間的に短くなること」「個人、グループで安定した状態とはなにか」「技術の安定がサッカーの戦術的思考を促進する」などにも言及し、戦術的思考力を言語化することで、わかりやすく説明している。

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これらのキーワードを見て、ピンと来た方はぜひ動画で確認してほしい。少年サッカーチームでトレーニングをする上で、前提となる考え方の理解に触れることができるはずだ。「戦術」と聞くとどうしても難しく考えてしまいがちだが、動画では考え方がわかりやすく整理されている。

後編では、内藤氏が考えるオープンスキルを高める上で有効なトレーニングメニューやその練習の目的などについて解説していく。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。

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