テクニック
脳を鍛えてスムーズな動作とボールスキルを習得!リフティングで技術とコーディネーション能力を磨く練習法
公開:2022年12月 2日
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、サッカーを始めたばかりのジュニア年代を指導する際に参考になる、指導動画を多数配信している。
ユーザーにアンケートをとると「U8年代のリフティングやコーディネーショントレーニングについて知りたい」という声が多かった。リフティングはボールタッチを始めとする技術に加えて、空間認識やバランス感覚を養うにはうってつけの練習だ。
そこで今回は、国内外でサッカー・フットサル選手として活動した、If Levante Futebol Clube 代表の中村洋平氏に「コーディネーションとリフティングを同時に磨くトレーニング」を実施してもらった。
中村コーチは、サッカー、フットサル、ビーチサッカーと多種のフットボールに精通しており、ジュニアの指導歴も長い。トレーニングメニューに加えて、子どもたちへの接し方も参考にしていただければと思う。(文・鈴木智之)
さまざまなサイズのボールを使ったリフティングと鬼ごっこ
最初の動画のテーマは「脳を鍛えて、体を思うように動かす」。
ここでは「障害物鬼ごっこ」を行うのだが、中村コーチは「これは認知・決断・実行が行われるため、試合に近い状況です。U8のコーディネーショントレーニングは、楽しく夢中になって行うことが大切です」と話し、トレーニングに入っていった。
「障害物鬼ごっこ」は、直径8mのグリッドに障害物を用意し、鬼ごっこを行う。鬼はタッチしたら交代し、時間経過とともに鬼を増やす。
子どもたちは、グリッド内の障害物にぶつからず、鬼にタッチにされないように動いていく。
中村コーチは子どもたちの様子を見ながら「体を動かす動作を、たくさん身につけていこう。止まっている人はどう?」と問いかけ、相互にコミュニケーションをとりながら進めていく。
なにより、子どもたちの元気な様子が素晴らしい。公園で友達と遊んでいるような雰囲気で取り組んでいる。中村コーチが、いかに子どもたちと近い目線で接しているのかがわかる。
中村コーチは「サッカーには攻撃と守備がある。鬼ごっこは?」と質問し、子どもたちから「鬼のときと鬼じゃないときがある」という返答があると「サッカーと似ていて、切り替えが起きるのわかる? 切り替えを意識していこう」と声をかけていた。
他にも「ジャンプ以外、何が出来る?」「倒れたあとは素早く立ち上がろう」など、様々な動きを行うようにうながし、「観ることが大事。逃げる人は、上から見ているような視点で、どこが空いているかを探そう」とアドバイスをしていた。
続いてのトレーニングは「ボールリフティング」。2号球~5号球を用意し、ボールのサイズを変えながらリフティングを行う。様々な大きさのボールを使うのは、脳に刺激を入れることと、体のサイズに合ったボールを使うためだという。
最初に「落とさず、何回できるかやってみて」と声をかけ、1分後にボールのサイズを変えて実施。
ここで中村コーチが言及したのが、インステップでボールを蹴ること。「コーチは、ボールが落ちてくるまで、足を下にして待っているのがわかる? ボールが落ちてくるまでの時間を考えてやろう」と、時間や空間を感じながらリフティングするように声をかけていく。
さらには「ボールは跳ねる。ボールのどこに当てたら、上に上がるか考えてみて。靴紐のところ(インステップ)で蹴ってごらん」と話し、「大丈夫、自信持って」など、背中を押す声掛けを頻繁に行っていた。
コーディネーション能力の反応能力や変換能力を高めるリフティング
2つ目の動画のテーマは「リフティング中に観る・タイミングを図る」。ここでは、リフティングにコーディネーション要素を加えて実施していく。メニューは以下のとおり。
1:ワンバウンドリフティングで移動(左右交互、左右2回ずつ)
2:リフティングボールチェンジ
3:2人組リフティングトレイン
4:リフティングパス交換
1:「ワンバウンドリフティングで移動(左右交互、左右2回ずつ)」では、「他の人とぶつからないように、目を使うこと。自分で時間を作ろう」と話し、途中でボールの大きさを変えて実施。
「ボールが下にあると、顔が上がらないよ。靴紐のところで蹴りながら、目を使って移動しよう」とデモンストレーションを交えて伝えていく。
2:「リフティングボールチェンジ」は「せーので声をかけて、リフティング中のボールを蹴って交換する」というルール。その後、「リフティングをしながら、じゃんけん」「リフティングをしながら、味方とタイミングを合わせて、目を合わせる」など、子どもたちの様子を見ながら、難易度を調節していった。
3:「2人組リフティングトレイン」は、2人組になり、互いにサイズ違いのボールを使用。1人がボールを手に持って歩き、その後ろをリフティングしながらついていく。うまくできていたら、前の人は歩くスピードを上げるというルールだ。
4:「リフティングパス交換」は、右足、左足交互にリフティングし、ペアの片方が、相手が蹴ることのできるタイミングでボールを転がし、それを蹴って返す。
ボールだけでなく、相手を観ること、お互いのタイミングを合わせることがポイントになる。これもコーディネーション要素のひとつだ。
以上でトレーニング前編は終了。様々なリフティングメニュー、コーディネーション要素が含まれた内容でありながら、設定はシンプルで、楽しみながらチャレンジできるものなので、ぜひ参考にしていただければと思う。
また、中村コーチの声掛けの内容、雰囲気づくりも、ぜひお手本にしてほしい。きっと、子どもたちは楽しみながら、ボールと向き合ってくれるはずだ。
【講師】中村洋平/
18歳でIf Levanteを設立し1999年~2011年までは国内外で選手として活動。2011年にIf Levante Futebol Clubeに戻りフットボールを伝える活動と文化の創出を開始する。
独自の理論で指導者として活動を始める。If Levante Futebol Clubeでは、3歳~50歳くらいまでの選手が活動し、全ての選手がサッカー/フットサル/ビーチサッカーの活動を行っている。
日本サッカー協会公認B級コーチ、日本サッカー協会フットサル公認A級コーチ、スペインサッカー協会レベル1、AFCフットサルフジカル・フィットネスレベル1。