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パスを繋ぐコツは「受け手に近寄る位置取り」と「遅いパス」/飯塚高校が実践するポゼッショントレーニング

公開:2022年12月23日

近年、九州の高校サッカー界で注目を集めているのが、福岡県にある飯塚高校。2015年からに就任した中辻喜敬監督の下、テクニックと判断を活かし、"サッカー脳力"を鍛えるサッカーを展開し、急成長しているチームだ。この2年はコンスタントに県大会のベスト4へと進み、2021年度は東福岡高校に勝利して、インターハイ初出場。全国でもベスト16入りを果たした。

チーム成績だけでなく、個の育成でも注目されており、2019年にはMF村越凱光(松本山雅FC)、2020年にはDF川前陽斗(アスルクラロ沼津)、2021年にはFW高尾流星(ガイナーレ鳥取)と3年連続でJリーガーを輩出している。今回は、飯塚が取り組むトレーニングの真骨頂である「サッカーIQが高まるポゼッショントレーニング」について紹介していく。(文・森田将義)

(※COACH UNITED 2021年12月27日掲載記事より転載)

この内容を動画で詳しく見る

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判断よくボールを動かすには速いパスではなく、遅いパスが重要

中辻監督は多数のドリブラーを輩出してきたディアブロッサ高田FCの故・中瀬古宣夫氏が平群中学を教えていた頃の教え子。"ドリブルチーム"と呼ばれる3種チームから飯塚に入学する選手が多いため、ドリブル主体のチームとのイメージを持つ人もいるが、試合を観ると違う印象を受ける人が多い。ドリブルで培った技術を活かしたサッカーを展開するチームと言えば、分かりやすいかもしれない。

自陣から判断よくパスを繋いで前進し、アタッキングサードでは積極的に仕掛けてゴールを狙うスタイルの徹底が、急成長を遂げた要因となっている。

トレーニングでは多くの時間を、飯塚のスタイルを遂行するのに必要なサッカーIQの向上に割いている。判断を用いたサッカーに必要な観る意識の向上と正しいポジショニングを身につけるための基礎練習として行っているのが、縦横10m四方のグリッドで行う3vs1のパス回しだ。インサイドのワンタッチパスのみで行うのがメニューのルール。攻撃側が決められた時間内に15本のパスを回せば、オニ役である守備の選手が罰ゲームとして前回りを1回する。

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数的優位な状況とは言え、ワンタッチでパスを繋ぎ続けるのは簡単ではない。テンポよくパスを繋ぐためのポイントは2つある。1つはパスを出す際の位置。半身になってボールを待つ受け手の後ろ足に出す事で、オニにボールを獲られにくくなる。

2つ目はパスを出した選手が出して止まらず、受け手に寄る事。出して終わりだと受け手が孤立してしまうが、パスを出した後に素早く出した先の選手に寄れば、2対1の状況が生まれて簡単にボールを失わない。

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オニを誤認させる事が出来るのも、パスを出した後に寄る事で生まれるメリットだ。リターンパスが出るとオニが判断し、パスコースを切りにくれば、切り返してもう1人の選手にチェンジサイドのパスを出せば良い。誤認しなければ、そのままパスを出した選手にボールを戻せば良い。パスを出したら相手にただ寄るだけでなく、どこに寄れば良いのか細かい立ち位置まで考えてパス回しをするのが重要となる。

2つのポイントを意識できるようになれば、テンポよくボールを動かせるようになるが、気を付けたいのがパススピード。上手くパスが繋がればプレーする選手が心地よく自然とパスピードが速くなりがちだが、狭いエリアで速いパスをコントロールするのは難しい。受け手に"ボールを置く"感覚の緩いパスを出せば、コントロールミスが減る。パススピードを落とせば、オニの状況を観て判断する余裕も生まれる。相手の状況をギリギリまで観て、リターンパスをするのか、もう1人の選手にチェンジサイドのパスを出すのか判断するのが、正解だ。

飯塚では、こうした動きを無意識で出来るようになるまで、日々のトレーニングで繰り返している。

立ち位置を意識するだけで、パスコースは増える

3vs1のパス回しで観る意識とポジショニングに対する意識を高めたら、4vs2のパス回しへと発展させる。グリッドの大きさは3vs1のパス回しと同じ縦横7mだが、4vs2の場合はパスを受けるタイミングでグリッドに出るのはOK。タッチ数もワンタッチ限定から、ツータッチ以下に変更となる。12本のパスを回すか、オニの間に2本のパスが通れば、罰ゲームとしてオニが前回りをするのがルールだ。

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このメニューで気を付けたいのが、パスを受けた際のボールの置き所だ。身体の中心にボールを置くと受けた後のパスコースの範囲が狭く、オニに身体を寄せられると奪われやすくなる。左隣の選手からパスが来た際に、身体を開いて右側に置けばパスコースが広角に広がり、オニに複数の選択肢を感じさせることが出来る。広角に開いた状態で右隣の選手にパスを出せば、パスラインがオニから遠ざかり、簡単には奪われない。もし、オニが右隣の選手へのパスコースを切りにくれば、左隣の選手にリターンパスを出せば良い。

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もう一つ意識したいのが、受ける際のポジショニングだ。前提としてグリッドの四隅に選手が立てば、パスで逃げられる位置が90度しかないため、180度の角度が用意できる四角形の辺に立つ。そこからは出し手と受け手の距離感、立ち位置に気を付けて欲しい。パスを受けようとして、ボールを持った選手に最初から近寄りすぎたら、2人のオニに追い込まれてボールを奪われやすくなる。

立ち位置は、ボールを受けるだけで置き去りに出来るポジションが正解だ。パスを出す選手が、オニの間を狙う素振りをすればカバー役のオニが間を締めてくるので、受け手との距離が開き、パスを受けるだけで一気に前進できる前方向のスペースが空く。カバー役のオニがインターセプトを狙いにくれば、間が空くため、縦パスを入れれば良い。写真のようなポジションから、タイミングよくパスを出す選手に近づき、DFに奪えるチャンスと誤認させるのも有効なプレー。パスを出す選手は一気に開いたオニの間を狙って縦パスを入れれば良い。

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「COACH UNITED ACADEMY」では今回の記事だけでは伝えきれない2つのメニューのポイントを動画で紹介している。中辻監督のコーチングは、とても分かりやすいため、詳細は動画を視聴して、コーチングの詳細をチェックして欲しい。後編では飯塚が重要視するドライブ(運ぶドリブル)を交えた実践的なポゼッショントレーニングのメニューを紹介していく。

この内容を動画で詳しく見る

【講師】中辻喜敬/
1985年5月17日生まれ。現役時代は平群中学、近畿大学附属高校でMFとしてプレー。天理大学卒業後、大阪市内の中学校教諭となり、本格的に指導者としてのキャリアをスタート。2015年からは強化を始めた飯塚高校の監督となり、2021年にはインターハイ初出場を果たした。2019年以降は、松本山雅FCの村越凱光を皮切りに3年連続でJリーガーを輩出している。

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