大阪のJグリーン堺を拠点に活動する「AC.gloria girls U15(グローリアガールズ)」は『テクダマ』の監修者としても知られる、三木利章さんが監督を務めるクラブ。創部7年で4度の全国大会出場を誇っています。
セレクションなし、平日練習は2回、練習場はフットサルコートという環境ながら、OGは全国の強豪校へ進み、今年度の全国高校選手権出場チームに、多くの選手が名を連ねました。その秘訣と取り組みについて、話をうかがいました。(取材・文 鈴木智之)
■OGが全国の高校で活躍
セレクションなしの街クラブながら、2年連続で全国大会に出場し、OGが毎年サッカー強豪校に特待生やスポーツ推薦で進学する、グローリアガールズU-15。
チームを率いる三木利章さんは「小学生時代に全国大会と縁のなかった選手たちが、グローリアを経て、高校年代で大きな舞台でプレーする機会を得ていることが成果です」と述べます。
中学生は小学生と高校生の間に位置する、橋渡しの時期です。三木さんは長年にわたって取り組む『個の育成』について、次のように語ります。
「私の役割は、上の年代に進んだ時のベースとなる考え方、概念、技術を植え付け、伸びしろを作って送り出すこと。どのスタイルの高校に行っても対応できるよう、基礎となる土台を広く作ることを心がけています。これには選手の考え方、感性、技術、身体操作、そしてやり切る力が含まれます」
グローリアガールズのOGは聖和学園や大商学園を始めとする、全国トップレベルの高校で主力として活躍しています。その根底にあるのが、徹底した個人の強化です。
■個の育成にこだわった指導
三木さんが掲げるのが『自由自在に動く身体創り』と『自由自在なボール扱い』です。そのためにダンスや体操、リフティング・ボールコーディネーション・
毎回の練習はダンスや体操から始まり、ブリッジ、横転など、様々な種類の動きを取り入れています。基礎練習ではボールタッチ、コーンドリブル、リフティングといった要素を重視しています。
「コーンドリブルでは、アウサイドでボールを押し出す際は、重心移動を意識させたり、スピードを上げること、軸足の使い方を工夫することなど、細部にまでこだわりを持って指導しています」
さらに、こう続けます。
「その後、1対1、2対2、3対3といった対人の練習に移ります。ここではドリブルの技術や駆け引き、コンタクトプレー、球際の競り合いなどを習得します。これらの練習では勝ち負けがはっきりと分かるため、選手たちの競争意識も自然と高まります」
フットサルコートを2面使った試合形式の練習では、あえて大人用のゴールを使って、ミドルシュートの意識を高めたり、守備の素早い寄せにアプローチ。ほかにもタッチ数を制限したり、
レギュラー組の守備陣とサブ組の攻撃陣を組み合わせて紅白戦を実
「エコロジカル・アプローチに通じるところがあると思いますが、練習の設定を工夫することで、選手たちは自然と感じたり、考えたり、状況を判断する力を身につけていきます」
■2年連続4度目の全国大会出場
2024年11月、関西大会で3位に入り、2年連続4度目の全国大会出場を決めた、グローリアガールズ。その道程は平坦なものではありませんでした。三木さんは振り返ります。
「私自身、女子チームの指導者として7年目を迎え、新たなアプローチを試みました。これまで全国大会に出場してきましたが、全国では個人の能力差で上回られることも多く、チームとしての対応にも限界を感じていました」
そこで今年は4月から全国大会出場が決まるまでの半年間、従来行っていたパスやコンビネーションのトレーニングを行わず、個人の基礎技術を含む『個のチカラ』
「1対1、2対2、
その成果もあり、
関西中学女子サッカーの最高峰である関西リーグ(
「ただ、これは想定の範囲内でした。例年は6:4の割合で個人練習とチーム練習をしていたのが、今年は個人8、チーム2の割合に振り切ったわけですから」
そして迎えた9月。個の力が熟してきたチームはリーグ戦で3連勝。勢いそのままに関西大会に乗り込むと、準決勝でINAC神戸に2対3で敗れたものの、3位決定戦に勝ち、全国大会出場を決めました。
「チーム対チームの戦いでは、個人の能力差で上回られることも多い」という現実を踏まえ、「個人の局面での成功率・勝率を上げていく」という地道な取り組みが実を結びました。
■小学生のアカデミーを開設
今年からは小学生対象のアカデミー活動を開始し、毎回30人ほどの選手が集まるなど、盛況の様子。「将来的にはグローリアガールズU-15の選手の7、8割が、アカデミー出身者になることを目指しています」と期待を寄せています。
「なかにはテクダマを使用している選手たちも来てくれているんです。テクダマはあくまでツールですが、身体操作やボール扱いなど、個の能力を高めることの重要性や私の考えに共感してくれている人が集まってくれるのが、非常にうれしいです」
特筆すべきは、テクダマの背景にある育成哲学への共感です。単なる商品としてではなく、育成理念に賛同した人たちが購入し、トレーニングに役立てているとのこと。
「テクダマを単なる商品ではなく、その背景にある考え方に共感してくれる人が増えているのを感じています。私の考えや発信を知って購入してくれる方も多く、サカイクの記事などを通じて、この考え方が広まれば、自主練に最適のツールとして、テクダマを選んでくれる人も増えていくと思います」
エリート選手ではなく、小学生時代に全国大会に出たことがない、トレセンに選ばれたこともない、決してエリートではない普通の選手たちが「
これからも、彼のもとを巣立つ「普通だった」