考える力
優秀な選手を続々輩出! セレッソ大阪の割り切った指導方針とは
公開:2014年9月 9日 更新:2014年9月11日
第38回全日本少年サッカー大会(以下、全少)は、セレッソ大阪U-12の優勝で幕を閉じました。出場48チームは、どこもいいチームばかりでしたが、優勝したセレッソはどこよりも強く、そして何より魅力的でした。そう感じた理由は、セレッソが最後の最後まで目の前の勝利に執着せず育成にこだわり、そういったアプローチの結果として優勝も手に入れたからです。
取材・文・写真 内藤秀明
■パフォーマンスが落ちようと昼食は食べる
セレッソ大阪U-12のそもそものコンセプトは「U-12で求められる個人の技術や、個人戦術の育成」と、大谷武文監督は語ります。そのために「勝つだけじゃなくて、16人全員(全少の大会には合計16人帯同)の育成が大事かなと思います」とも大谷監督は話します。実際に大谷監督は、全国の舞台にかかわらず、1試合で選手全員を交代し16人全員を起用したこともありました。
また、選手の育成を重用視していることは、ピッチ外の行動からもうかがえます。たとえば、補食。セレッソの選手は、今後の身体の成長のために、必ず適切なタイミングで補食を求められます。そのために「試合間隔が短く、昼食をとる時間が1時間しか確保できないスケジュールの大会もあります。そんな時、昼ご飯を食べてしまうと消化できずパフォーマンスが落ちてしまうことは目に見えています。ただ、そういう時でも迷わず食事を摂らせます。その日のプレーは悪くなるけど、さらに上を目指した身体作りのためには仕方ないことです。実際に選手たちのパフォーマンスは落ちますが、そこは責めないことにしてます」と大谷監督は明かします。
このようにセレッソは、徹底して個人の成長を重視し、目の前の結果にとらわれません。六車拓也コーチは、「セレッソというクラブが(U-12を含め)世界基準を意識しているのを感じる。求めているレベルが本当に高い。最終的に、世界で活躍する選手を輩出するために、逆算して徹底的に個人の成長を求めている」と、クラブのフィソロフィーを語ります。
では、世界基準を意識しているセレッソは、攻守においてどのような指導をしているのでしょうか。
■ミスが増えてもいいからチャレンジをうながす
セレッソ大阪の攻撃では、ロングボールを蹴ることが少ないです。ジュニアサッカーでは、足の早い選手を前に並べて、ロングボールを蹴ったほうが、得点が産まれやすいのは事実です。ただし、個人の技術の育成という観点に立てば、それはベターなやり方ではありません。そこで、セレッソは、基本的に、短いパスやドリブルを織り交ぜて相手ゴールに向かいます。試合でも繋ぐことを重視することで、テクニックの向上をうながしているのです。
また、セレッソには基本的にチームとして決まった攻め方はありません。大谷監督は「スタートでは、便宜上2-1-2-2のシステムだと指示しています。ただ、相手チームに応じて考えて変えていくようにとも指示しています」と語ります。六車コーチも、「チームの戦術をこうしようとか、そういうのがまったくなく、グラウンドで 自分の中で決断して、プレーするっていうのを促しています」と明かします。つまり、相手のやり方に対してリアクションを試みることで、試合を通じて状況を認識し、考え実践する能力を養っているようです。
また、試合中には勝つための指示ではなく、選手たちを成長させるために、技術面のコーチングなどを行います。たとえば、パスがやや雑になっていた試合では、それを課題ととらえます。そして、選手たちにいくつかの状況を指定しながら、「パススピードは早いほうがいい?」「どちらの足に出すべき?」など、選手に質問を投げかけながら引き出し、パスに関する指導を行います。
そして選手たちには、それを公式戦で実践することを求めます。基本的にチャレンジをするとミスが増えます。ミスが増えると敗戦を喫する可能性が増します。それでも大谷監督は,選手にチャレンジを求めます。
取材・文・写真 内藤秀明