「問いかける指導で考える力を引き出す」をテーマにしたミズノサッカースクールの藤沢校がこの5月にオープンしました。ただ、そのフレーズだけではどういった指導法が行われているのか、その指導のメリットはどういったものなのか、という点がわかりかねると思います。その具体的な指導法について、本校でメインの指導を務める山口大介さんに話を伺いました。(取材・文 竹中玲央奈)
(写真提供:ミズノスポーツサービス)
■サッカーはやらされるスポーツではない
山口さんが持つ1つの根本的な考えが、"サッカーはやらされるスポーツではなく、自らすすんでいやっていくスポーツ"ということ。
スピード感を持って試合が展開される中、局面局面の判断力に加えて、どういう選択を取れば良いか、ということを考えることが必要になってきます。そして、そこで自ら判断し考える力は、仮にサッカー選手になれず、一般の社会人となったときにも役立つもの。小学校の非常勤講師(補助指導員)も5年間務めていた経験を持つ山口さんは「プロになってもならなくても、社会人としてのスキルを、サッカーを通して学べる」という点に立脚して指導を進めています。
「与えることも大事ですけれど、それだけではダメです。与えなさすぎるのも良くないので、コーチングとティーチングをどういうふうに分けるか。『こういうのがあるよ』という選択肢を与えて、最後どれを選び、考えるかは選手に任せるというスタンスで指導しております。ティーチングというのは教える、提示するということ。コーチングというのは道案内、サポートをしてあげるということ。これらを踏まえた上で、そこをベースにしながら進めています」と山口さんは言います。
■練習のテーマを子どもたち自身に気づかせたい
(写真提供:ミズノスポーツサービス)
指導の中で山口さんは練習に対してのテーマは基本的に与えません。逆に目的を伝えず、「練習で今日はこんなことをテーマにするというのを気づかせてあげるとか、それが伝わればこっちの成功」であり、「それが分からなければ指導者のプランニングが必要ということになります」と話します。子どもたちがプレーをする中、局面局面で選手にそのプレーの意図を問いかけ、『なぜその選択肢を取ったか』を聞き、かつ他の選択肢も提示します。
「例えばパスコースが右にあってそこに出したとします。その際に『右が見えていたのは良かったけど、左は見えていたの?』と。次に右も左も選べるようになったら『よく見えてたじゃん!』と褒めます。その次のステップとしては、『どうしてそっちを選んだの?』という問いかけをします。僕の中では答えを求めることが目的でなく、考えることをさせたいので、手本を見せるということはしないんです。質問をするとどうしても相手も答えを探したくなるので、そうしないように、無意識化してあげたいなと。
また、『フリーだった時に何を考えていたか』『ボールが欲しかったのか』などを聞いてみます。また、そのために何をしたかを聞き、その中でやれることがあるということに気づかせてあげられるようにしています。そうすれば問題解決の楽しさ、に気付きます。時間はかかるのですが、考えられるようになった選手はやはり、成長が早いですね」
■目的は「絶対的な正解」を出すことではない。自分の意見を堂々と発表しよう
指導の中であくまでも"どれが絶対的な正解か"ということを伝えないのが山口さんのスタンスです。
「僕の中で答えはすべて正解ですから、子どもたちが言うことを一回受け止めてあげないといけない。目的は答えを出すことではありません。サッカーは特にそうなのですが、色々なやり方がある。価値観や考え方はどんな指導者に育てられたかによっても変わってきますが、その中でもサッカーを楽しめるような選手になってほしいと思うので、彼らが発した答えはすべて正解とします。その中で、『コーチはこう思うけど、こうしてみたらもっと良くなるんじゃないか』というような問いかけは全体を通じても1対1でも伝えます。基本的には"減点法"ではなく"加点法"です。ここはダメ、ではなくて、ここはできたからさらにこうするともっと良くなるよ、というような言い方が良いですね。それを続けていけば、選手が勝手にやってくれるのかなと。常にやりたくなるような環境を作っていくことができます」
自分が思ったことを発表し、人に伝えられる力を付けていってもらいたいと山口さんは考えています。「思ったことを自分の言葉で表現する土台を作ってあげればステップアップしていくし、火をつけられる」と語り、それが"考えてプレーできる"ということ。
そして、思っている言葉を引き出すために、指導者から色々な局面で"問いかける"ことが必要となり、重要であるのです。その中で山口さんが意識していることは、自分の言葉を恥ずかしがらずに発することが出来る場の空気を作ることであり、大人は決して子どもたちの発言に対してバツを与えてはいけないとも言います。
「子供は子供なりに答えを考えて思ったことを自信持って手を上げて言葉を発している中で、大人が『もっと真剣に考えなさい』ということでその経験がトラウマになってしまう。だから手をあげることも発言することもやめてしまうことが多いんです」
だからこそ、子どもたちの発した答えは「全て正解」なのですね。
■それぞれの意見を肯定し、気づきを促す指導で考える力を伸ばす
(子どもたちが自分で気づき、考える力をつけてほしいと語る山口コーチ)
子どもたちが自分の考えを口にする中、それを肯定しつつも様々な選択肢に気づかせてあげて、その中から意識をして選択しプレーを出来るように問いかけ、背中を押し続ける。これが山口さんが考える指導者としてあるべき姿勢だそうです。子どもたちにとってこれができるようになるまでは簡単ではありませんが、練習から続けていくことでサッカーの試合の中でも無意識に最良の選択を取ることができるようになります。
冒頭にも述べたように、"考える"力はサッカーにおける能力を高めるだけでなく、オフザピッチの面でも役に立つものです。山口さんは、今後の未来を考えていく上でもサッカーで養ったこの力が必ず社会に出て役立つと強く信じています。
「10年後は今ない仕事を子供が自分で作って、自分で切り開いていく時代になる。だからこそ、自分で問題解決をすることが大切だと思って信じてやっています」
子どもたちが自ら考え行動できる人間へと成長をしてもらうために、"問いかける指導法"を一度、体験するのはいかがでしょうか?
山口コーチの直接指導が受けられるミズノスクールは東京と神奈川に1箇所づつ、無料体験受付中です!!
1.ミズノフットサルスクール味の素スタジアム校
場所:東京都調布市西町376-3 (味の素スタジアム内)
時間:平日 10:00-24:00、休日 8:00-24:00
電話: 042-484-1977
2.ミズノサッカースクール藤沢校
場所:神奈川県藤沢市村岡東1-5-8
時間:平日 10:30-22:30、休日 8:30-22:30
電話: 0466-24-7261
藤沢校は5月オープンしたてなので、まだスクール生も少なく、今がチャンスですよ!
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取材・文:竹中玲央奈 トレーニング写真提供:ミズノスポーツサービス