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親の言動が子どものチャンスを潰している! Jリーガーを続々生み出すサッカー部監督が語る、プロになる子の親の「共通点」

公開:2019年1月25日 更新:2019年2月 6日

キーワード:Jリーガーサッカー部プロ保護者全国大会内野智章興国高校

全国大会の出場経験がないにも関わらず、毎年のようにJリーガーが誕生する興国高校(大阪)。監督を務める内野智章さんに「子どもをプロ選手にするために、保護者がすべきこと」について聞きました。

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全国大会出場経験がないにも関わらず毎年のようにJリーガーが誕生する興国高校サッカー部


■保護者は子どものカーナビにならない

興國サッカー部は入部時に、1年生と保護者を集めて「入部前説明会」を行います。この場では部の説明やサッカースタイルなどの話をするのですが、僕が保護者の方に言うのが「息子さんのカーナビになっていませんか?」ということです。

カーナビ通りに行けば、目的地に簡単に着くでしょう。でもそれが、息子さんにとって本当にベストな道なのでしょうか?  道を間違えることによって、より良い道を覚えるのではないでしょうか?
 
道を間違って、行き止まりになったときに「こっちちゃうわ。あっちの道に行こう」というのも経験です。保護者は子どもより経験があるぶん、「こっちに行ったほうがいい」とアドバイスができますが、その指示通りに動いていても、経験値が溜まらないですよね。カーナビに頼っていたら、道をまったく覚えないのと同じです。しまいには、カーナビがないとどこにも行けなくなる。そんな子どもにしたいのでしょうか?

渋滞にはまったり、事故で道がふさがったときに、カーナビに頼っていては前に進めません。ナビには無い抜け道を瞬時に思いつき、「この道で行けば大丈夫」と思えるかどうか。

そのためには普段から自分で考えて行動して、経験を積み重ねていくしかないんです。

保護者がすべきは、東京に行きたいのに、九州の方を向いて走っていたら「おい、そっちちゃうで」と教えてあげるぐらいでいいんです。大阪から東京に行くのに、中央道で行こうが、新東名で行こうが、どちらでもいい。そこは子どもに任せましょう。でも、山陽道を走っていたら「そっちちゃうで」と。

極端な話、大阪から新潟経由で日本海を回っても、東京に着きますからね。めっちゃ時間かかりますけど(笑)。軌道修正するべきは、子どもが目標から真反対を向いている時。それ以外は口出しせず、基本的には放っておくぐらいでいいのではないでしょうか。

■子どもの不満を聞いてあげる

息子さんの試合を見に来るのは大歓迎。保護者にも「見に来てあげてください」と言っていますが「サッカーのことに関しては、あまり言わないであげてください」と念を押しています。

それよりも、息子さんが、僕ら指導スタッフに不満があるのであれば、文句を聞いてあげてください。そこで、「そうなんや、大変やな、頑張りや」と言ってあげるだけで、ガス抜きになりますから。

そこで一番やってはいけないのが、子どもと一緒に指導スタッフの文句を言うこと。そうなると、軌道修正ができないので伸びません。「監督にそんなこと言われたんか。大変やな」と聞いてあげて、どうしても我慢できなければ、子どもの知らないところで、僕に直接意見を言いに来て下さい。

ただ、誤解してほしくないのは、あなたの子どものために興國サッカー部があるのではないということです。チームの理想を追求するために選手がいて、僕はその理想を追求するために、チームのプレーモデルをより高いレベルで実行できる選手を選ぶわけです。そこで、「いや、私の理想はこうだから」と選手や保護者から言われても、僕にはどうすることもできません。

保護者は子どものサポーターでいてあげてほしいと思います。負けている時はめっちゃ応援して、勝ったらめっちゃ喜ぶ。いいサポーターになってください。評論家はいりません。保護者が評論家になって「監督のサッカーはこうだから」と言い出すと、子どもも頭でっかちになって、現実から目をそむけてしまうんです。

自分の技術や努力が足りていないのに、監督のせいにしてふてくされてもいいことないですよね。社会に出たときに、上司は選べません。でも、自分で入りたくてその会社の面接を受けたわけですよね。それならば、どうすれば上司に認められるか、自分に求められているものはなにかを考えながら、努力をしていくしかないんです。

■プロに進む選手の保護者に共通すること

興國からプロに行った選手の家庭に共通しているのは、保護者が明るくて、試合をよく見に来てくれていたことです。すごく応援し、サッカーのことについては一切口出しをしませんでした。僕とも友好的にコミュニケーションをとりますし、こちらからしない限り、サッカーの話はしません。「監督、元気? いろいろ大変やね」みたいな感じで、世間話をしてケラケラ笑っています。

たまに僕が「ちょっと、おたくの息子さん、僕のことなめてますよ。この前、こんなこと言われたんですけど(笑)」とかフランクに話して「あら、すんません。私からも言っておきますんで」みたいな。これも大阪のノリですよね。

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興国高校サッカー部

ただ、子どもが入学する前には、すごく熱心に質問をする方もいます。進路のことやケガをしたときにどうするのかなど、親の立場として心配なこともありますからね。でも、入学した後には一切言ってきません。プロに行く選手、大学で活躍する選手の保護者は、 99 %そのタイプです。

なかには自分も若い頃はサッカーをしていて、詳しいお父さんもいます。僕に対して、言いたいこともあるのではと思いますが、ほとんど何も言ってきません。「いつもありがとうございます」みたいな感じで、僕も「こちらこそ、ありがとうございます」というようなスタンスですね。

だから、僕としても選手に気を使わずに指導ができるんです。「こんなことを言ったら、親からクレームが来るかな?」と少しでも頭をよぎったら、言葉を選んでしまいますよね。そうすると指導するタイミングを逃すし、こっちの本気も伝わりきらないんです。

ガツンとぶつかることができると、遠慮なく言えるし、深く関わることができます。だから、選手も本気になってくれるんだと思います。

■親の言動で子どものチャンスが潰れる

才能がある選手の中に、親の関わりによってダメになる子はたくさんいます。例えば、あるジュニアユースの監督さんから「お前のところに○○って選手、練習に行ってるやろ? あいつ獲得するんか?」と言われて「なんでですか?」と訊くと「あいつの親、口出ししてくるので、だいぶややこしいらしいで。監督が息子にあんなこと言った、こんなこと言ったとふれ回っているらしい」と。直接、その選手が所属するチームの監督は言って来ませんが、周辺の人から伝わってきます。

そう言われても、僕には関係ないので良いと思った選手は獲りますが、その選手はかわいそうですよね。親が指導に口出しをすると、結局子どもが損してしまうんです。

親のプレッシャーが嫌で、指導者が関わらなかったり、気を使って指導をしても成長できません。結果、性格的にあまちゃんになって、頑張りがきかない。ちょっとうまくいかないと、プレーがダメになったり。試合に出られないことに慣れていなくて、ふてくされてしまったり。そんな時期を過ごしてしまうと、高校や大学など、親が出て行けない環境になった時に、頭打ちになってしまうんです。自分で自分を高めていく術を持っていないので、どうすればいいかがわからない。親がカーナビになったツケが回ってくるんです。

子どもに間違っていない道を行かそうとした結果、ナビがなくなった時にどの道を行けばいいかがわからなくなってしまうんです。どの道を通ったのか、目的地に着くまでに何があったのか。その経験が血となり肉となるわけです。うまくいかない時に、どうやって解決するか。乗り越えていくかを学ぶのは、サッカーに限らず人生でも重要なこと。高校生はそれをサッカーの中で体験しているわけです。

そう考えると、親が出て行って、障害を取り除いてあげる必要はまったくないのです。

※この記事は「興國高校式Jリーガー育成メソッド ~いまだ全国出場経験のないサッカー部からなぜ毎年Jリーガーが生まれ続けるのか?~」(竹書房・刊)より抜粋したものです。

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興国高校サッカー部監督 内野智章さん
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構成・文:鈴木智之

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