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考える力

海外リーガーが伝授する、セレクション、チームの中で自分のプレーを出すために必要なスキルとは

公開:2020年6月 2日

キーワード:コミュニケーションセレクショントライアル海外リーグ渡邉卓也移籍

緊急事態宣言が解除され、学校の再開やスポーツのチーム活動も徐々に動き出しています。

春は新たな学年、チームでの活動がスタートする時期ですが、今年は長期休校の影響でサッカークラブの活動自粛・縮小が続いており、まだ新しいクラスメイトと顔を合わせていなかったり、サッカーのチームも入ったばかりでチームメイトとこれから「はじめまして」の子もいるのではないしょうか。

年度の始まりだけでなく、サッカーをしていると新加入や移籍などでチームメイトとの初顔合わせや選抜チームのセレクション、あるいは公園でのサッカーなど、初めて合う相手とプレーする機会はたくさんあります。そんな時、お子さんは自分のプレーを存分に出せますか? 緊張もあり、100%のプレーができない子もいますよね。

今回は、アジアを中心に4カ国でプレーした経験を持つ、モンゴルリーガーの渡邉卓矢選手に、「初めての相手とサッカーをするときのコツ」を教えてもらいました。ぜひ、活動の中で意識してみてください。
(取材・文:鈴木智之)

 

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相手からいいパスをもらうためには、良い環境づくりも大事

 

 

■トライアルやセレクションを一緒に受ける相手を「敵」と思わない

サッカーが盛んな千葉県柏市で生まれた渡邉選手。家の近くには、柏レイソルのホームグラウンド・日立柏サッカー場があり、子どもの頃は「いつか自分もあのスタジアムでプレーしたい!」と目を輝かせていたそうです。

小中高とサッカーを続け、日本大学2年生のときに、新潟国体を目指していた新潟県のジャパンサッカーカレッジに特待生として合格。その後JFLチームの練習参加を経て、活動の場をアジアに移します。

渡邉選手は自身の海外キャリアを「最初にプレーしたのはカンボジアで、モンゴル、タイ、ネパールのリーグでプレーしました」と振り返ります。サッカー選手と平行し、地域貢献活動にも積極的で、2019年のカタールW杯アジア二次予選でモンゴル代表が日本代表と試合をしたときには、モンゴル代表選手にアシックスのスパイクを提供するなど、サッカーを通じた国際交流の架け橋となる活動もしています。

現代のサッカー選手らしく、SNSを駆使してチームを探す渡邉選手。チームへの加入を勝ち取るためのトライアルで意識することについて聞くと、次のような答えが返ってきました。

「トライアルやセレクションで意識しているのは『一緒に受ける相手を敵と思わないこと』です。同じピッチで戦う仲間なので、敵対視はしないほうがいいと思います。自分が良いプレーをするためには、周りの協力も必要です。敵対視してくる選手に、いいパスを出してあげようとは思わないですよね」

 

■自分が良いプレーをするための環境づくり

トライアルやセレクションには、様々な国の選手が参加します。言葉が通じないことも日常茶飯事。そこで大事なのが「ジェスチャー」なのだそうです。

「味方が良いプレーをしたら、オーバーリアクションで褒めます。『ナイスプレー!』と握手しに行ったり。そうすると、『アイツめっちゃいいやつだ』となるんです(笑)。試合中、味方にパスをして『ナイスパス、ありがとう!』と言われたら、『いいやつだな』と思いますよね。そうすると、次もパスしようかなと思ってくれるんです」

試合中によくあるのが、「いまパスが来れば、シュートを打てる」という場面で、味方からのパスが来ないこと。そこで「なんでパスしないんだよ!」という反応をしてしまう選手もいると思います。しかし渡邉選手は、「気持ちはわかりますが、そのリアクションはしないほうがいいですね」と穏やかな笑顔で言います。

「ミスをした選手を責めると、言われた方も気分は良くはないですよね。相手を攻める言葉をかけるのではなく、まずは『ナイスシュート!』と褒めたあとに、『こっちにもパスを出せるよ』と言うと、次に同じような場面が来たときに、パスをしてくれる可能性が高くなります」

渡邉選手は「ドリブルで何人も抜けるような選手であれば、コミュニケーションは必要ないかもしれませんが、僕はそういうタイプではないので、セレクションやトライアルが始まる前に、自分がプレーしやすいように環境づくりをします」と明かしてくれました。

「コミュニケーションの第一歩は、勇気をもって自分から話しかけること。セレクションのときは、緊張していたり、心細いと思います。それはみんな同じなので、『名前なんていうの?』『どこのチーム?』などと聞いて、自分の名前を伝えるだけでも、実際にプレーが始まったときの感触が変わります。相手の名前を聞いて、自分の存在をアピールすることは、試合で活躍するためにも大事なこと。それは小学生、中学生のセレクションや新チームの立ち上げの時期などは、とくに大切ですね」

 

■自分の得意なプレーを発揮するためにどう動けばいいか考えることが大事

いまでこそ豊富な経験を持つ渡邉選手ですが、小学生時代に受けたセレクションで、失敗したこともあるそうです。

「小学生の頃に、あるJクラブのジュニアユースのセレクションを受けたことがあります。その時の僕は、周りをよく見て、チームのバランスをとって、パスを出して......というプレーをしていました。でも、そのセレクションには受かりませんでした。十数年後に、当時のコーチと話す機会があったので、『当時はどういう選手を求めてたんですか?』と聞くと、『ドリブルで打開できる選手』と即答されました。そのコーチは『戦術でどうにもならなくなったときに、個人で打開できる選手が欲しかった。戦術や判断は中学、高校でいくらでも教えられるけど、局面を打開する力は教えられないから』と言っていました」

セレクションされる、選抜されるためには、キラリと光るなにかが必要です。渡邉選手は、実体験を込めて、こう言います。

「平均的な選手には、ならないほうがいいと思います。過去を振り返っても、すごいと感じた選手は、誰もが何か一つ、飛び抜けた武器を持っていました。技術は低いけど、シュート力がすごいとか、めちゃくちゃ足が速いとか。監督やコーチに認めてもらうためには『自分はこういう選手だ』という、わかりやすい武器を作る必要があります。セレクションでは、『自分の得意なプレーは絶対にやるぞ!』と決めて、そのプレーを発揮するために、どう動けばいいかを考えると良いと思います」

自分の得意なプレーをするために、どうすればいいのでしょうか? 次回の記事では、そのための具体的な方法、考え方を教えてもらいます。

 

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渡邉卓矢(わたなべ・たくや)
プロサッカー選手
千葉県出身 1988年4月11日生
Estudiantes de la plata(アルゼンチン1部/レセルバ3軍相当)→JSC Niigata(日本/新潟)→Sportiva Tsukuba(日本/茨城)→HBO Tokyo(日本/東京)→CMAC UNITED(カンボジア1 部)→Goyo FC(モンゴル1部)→Selengepress(モンゴル1部)→Three Star Club(ネパール1部)→Selengepress(モンゴル1部)→Samutprakan FC(タイ4部)→Athletic 220(モンゴル1部)

東南アジアを中心にプロサッカー選手として活動する傍ら、子供の頃にJリーグでプレーするサッカー選手に夢を与えてもらったように、子供たちに夢を与えたいと思い、サッカー教室の開催や孤児院への訪問、支援などの活動をしている。

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取材・文:鈴木智之

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