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会場設営、出場メンバーも作戦も子どもたちで。ベンチに大人が入らない「子どもが主体の大会」で子どもたちに起こる変化

公開:2021年4月13日

キーワード:フォレストカップ主体性大会運営子どもが主役相手チームの分析考えて動く

子どもたちが会場設営、当日の運営、出場メンバーと作戦も決める。ベンチに大人は入らない。そんな子どもたちが主体の大会があることを知っていますか?

神奈川県伊勢原市で活動する伊勢原FCフォレスト主催の「フォレストカップ」は、大人が口出しせず、グラウンド設営、大会運営、レフェリーまでを子どもたちが行う「子どもが主役」の大会です。

この度のコロナ禍で開催が危ぶまれましたが、感染対策と参加チームを近隣のみ、少数にすることで実施。子どもたちが主体となって運営し、躍動する姿が見られるこの大会を通してどんなことが行われているのかをお伝えします。
(取材・文:鈴木智之)

 

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ベンチには選手だけ。メンバーも戦術も自分たちで決めます

 

 

■出場メンバーも作戦も子どもたちが決める

フォレストカップは「子どもたちによる、子どもたちのための大会」です。試合中、コーチはベンチに入らず、出場メンバーや作戦も子どもたちが決めます。

試合は3ピリオド制で、第2ピリオド終了後、両チームが、お互いの良かったところとアドバイスを送り合う『合同ミーティング』を行います。今大会はコロナ禍のため、チームであらかじめ意見をまとめ、代表者のみが発言するなど工夫をこらしました。

大会は主役である子どもを、大人がうまくサポートする形で進んでいきます。任せっぱなしではなく、見守り、アドバイスをする絶妙なさじ加減が、伊勢原FCフォレストの代表で、運営責任者を務める一場哲宏さんのマネジメント力です。

「大会のルールとして、第1ピリオドに出た選手は第2ピリオドには出られません。第3ピリオドは交代自由で、誰が出てもOKです。そうすることで、選手は必ず試合に出ることができます。フォレストカップは小3から小6までのカテゴリーがあり、経験の少ない3年生の場合、コーチが見ていないのをいいことに(笑)、第3ピリオドはいつも同じ、上手な子しか出ないといったことも起きます。そのときは『この子、あまり試合に出てないんじゃない?』などと声をかけながら、導いていきます」

 

■普段なら指示してしまう場面も、離れてみることで指導者にも気づきが生まれる

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※この日は撮影が入っていたため輪の中に大人がいますが、通常は子どもたちだけでミーティングを行います

 

グラウンドには、子どもたちの姿しかありません。コーチは離れたところから見ています。観戦に来た保護者と同じ距離感です。大会に参加した西鶴間サッカークラブの安東洋一監督は、次のように感想を話してくれました。

「これまで何度か参加させてもらっていますが、コーチがベンチに入らないのはこの大会だけです。いつもはコーチが指示をしてしまう場面でも、子どもたちに任せるので、普段からそういう場面を増やしてもいいのではないかという、指導者側の気づきにもなりますよね

合同ミーティングについては「ミーティングは、大人から子どもへの一方通行になってしまいがちですが、子どもたち同士で話す場を設けることで、一生懸命、自分の考えや想いを話そうとします。とても良い時間だと思います」と感心していました。

 

■ベンチに大人が入らないからこそ起こる、子どもたちの変化

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試合を見ながら相手チームのいいところを探して書く

 

一場監督は合同ミーティングの様子を遠目で見ながら、子どもたちの変化について、こう話します。

「3、4年生と5、6年生では、意見の質も変わってきます。3、4年生のときは、相手に対して遠慮なく、思ったことを口にするのですが、高学年になると戦術的なことも含めて、相手に気を使いながら言うようになります。年齢による社会性の芽生えとともに、発言の内容も変わるので、おもしろいですよね」

伊勢原FCフォレストでは「選手の自立」をテーマに、自分で考えてサッカーをすることを大切にしています。合同ミーティングもその一環です。

「相手チームにアドバイスができるのは、相手がどういうサッカーをしているのか、どういう戦術なのかを理解しているから。それに対して、自分たちはやりにくかった、やりやすかった、もっとこうすればいいと、お互いの立場に立って考え、言葉で伝えることができるのは、相当レベルが高いことだと思います」

フォレストカップでは、参加賞として作戦ボードに「相手チームの良いところ」「相手チームへのアドバイス」と書かれたマグネットを渡しています。このように大人がサポートすることで、子どもたちの考えを引き出す仕組みをうまく作っているのです。一場監督は言います。

「突然、発言しろと言われても難しいと思います。フォレストでは普段から、練習後に必ず相手と自分の良いところを見つける『いいとこメガネ』というミーティングをしています。人間は違いや欠点に目が行きやすいので、そのようにしてお互いのいいところを見つけ合うようにしています」

 

■任せてみれば子どもたちは意外とできるもの

普段の大会とは違った光景が繰り広げられる、フォレストカップ。グラウンドの一角には、伊勢原市の郷土玩具である「大山こま」で遊ぶことのできるスペースが設けられ、子どもたちが楽しそうに触れ合っていました。もちろん、こまスペースの運営も、フォレストの選手たちです。

一場さんはその様子を、目を細めて見ています。

「フォレストカップは開会式、閉会式、こま大会など、すべて子どもたちが主体となって運営します。子どもに任せれば、意外とできるものなんです。でも、大会運営や審判は大人がやるものだという固定観念があるので、多くの場合はそうはなりませんよね。フォレストカップのような取り組みがあるんだと知ってもらえれば、うちでもやってみようかなと思う人が出てくるかもしれません。そのきっかけになればいいと思います」

いま一度「ジュニアサッカーは子どもが主役」という当たり前のことを見つめ直す機会でもあるフォレストカップ。このような取り組みをすることも、サッカーを通じて、子どもたちの成長につなげるための、ひとつの方法といえるのではないでしょうか。

次回の記事では、フォレストカップに参加した子どもたち、保護者の声をお届けします。

 

 

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一場哲宏(いちば・てつひろ)
伊勢原FCフォレスト代表。
日本体育大学に進学後、ドイツ・ケルン体育大学にて交換留学生として4年間サッカーの指導法を学ぶ。ケルンの街クラブで5・6才カテゴリーの監督の他、イギリスや湘南ベルマーレなど国内外で指導に携わる。 2019年4月から一般社団法人伊勢原FCフォレスト代表理事と保育専門学校講師として活動中。独・英・Jクラブで確立したサッカーを通して『人間力』も養う【4ステップ理論】を提供。

保有資格は、日本サッカー協会公認指導者ライセンスB級、日本サッカー協会公認キッズリーダーインストラクター、日本キッズコーチング協会公認エキスパート、幼稚園教諭一種保育士

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取材・文:鈴木智之

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