考える力
たった2年でJリーグ昇格! 大躍進を遂げた奈良クラブが導入した選手を伸ばす「エコノメソッド」とは!? フリアン監督インタビュー
公開:2022年11月14日
2022年シーズン、残り2節を残し、J3昇格を決めた奈良クラブ。2020年に浜田満氏が社長に就任すると、2021年には、スペイン・バルセロナで誕生した『エコノメソッド』よりフリアン監督を招聘。就任2年目にして、チームを3位以内(11月8日時点)に導き、悲願のJ3昇格を達成しました。
そこで今回は、チームを率いて2年目ながら大きな成果を残したフリアン監督に、奈良クラブ躍進の秘密と、クラブに導入したエコノメソッドについて伺いました。子どもたちに向けたアドバイスもいただいたので、ぜひ参考にしてみてください。
(取材・文 鈴木智之)
■「エコノメソッド」で目指すスタイルやアイデンティティが明確になった
フリアン監督は就任から現在を振り返り、「クラブがエコノメソッドを導入すると決断したことで、目指すべきサッカースタイルやアイデンティティが明確になりました」と話します。
エコノメソッドは海外のサッカー協会やクラブチームなどが取り入れており、日本のJクラブでは、アルビレックス新潟が導入していたことでも知られています。10年ほど前、エコノメソッドを日本に持ち込んだのが、奈良クラブ社長の浜田満氏でした。
以降、育成年代やプロ選手のコンサルティング、サッカースクールやキャンプ、指導者講習会などを通じて、エコノメソッドの考えは広く知られるようになりました。いまでこそ当たり前のように聞く、「認知・判断・実行」というフレーズを使い始めたのもエコノメソッドです。
■ペナルティエリアでのプレー向上に取り組んだ
フリアン監督はヨーロッパやアジアで指導を経験し、エコノメソッドスクールや指導者講習会、プレーコンサルティングなどを通じて、日本サッカーとも近くで接してきました。
日本サッカーをよく知るフリアン監督は「日本の人々が志向するサッカーは、自分の考えに近いと感じた」と言います。
「一番は、チームで連携してボールをつなぐことです。日本の人々が志向するスタイルは私も好きで、ポジティブに捉えています。奈良クラブの監督に就任したとき、それを踏まえた上で、どれだけ多くのゴールチャンスを作ることができるかを考えました」
監督就任前、奈良クラブの試合を分析する中で、向上の余地があると感じたのが、ペナルティエリアでのプレーだったそうです。
「自陣エリアの守備で言えば、まずはサイドからクロスボールを入れさせない役割が重要で、相手に考える時間を与えないように、アグレッシブに守備をすることも必要です。ペナルティエリアでは、誰が誰をマークするのか。それに加えて、誰がセカンドボールに対応するのか、どの場面でクリアするのかにも取り組んできました」
攻撃では「相手よりも、多くの選手がペナルティエリアに進入すること」をテーマに、「できる限りチャンスを逃がさず、シュートを打つこと」を重視していたそうです。
■アイデアを信じて我慢強くやり続けることで結果が手に入る
フリアン監督の指導を支えてきた通訳の岡崎史郎さんによると「1年目はエコノメソッドを知っている選手がいなかったので、苦労している様子が見えましたが、シーズン半ばを過ぎたあたりから、チーム内で共通のアイデアができ始め、勝ち点を取れるようになりました」と振り返ります。
就任1年目はコロナ禍で来日が遅れ、指揮を執ることができたのが6月からでした。今年で2シーズン目になりますが、「1年目はチームのベースづくり、アイデンティティの浸透に力を入れてきた」と言います。
「変革の最中にあるとき、1年目は苦労するものです。しかし2年目になると、昨シーズン作り上げたベースをもとにチームを構築し、戦うことができました。それが結果に表れているのではないでしょうか」
フリアン監督は「何かを成し遂げようとするときは、アイディアを持った上で、絶対に遂行できるんだと信じることが大事」と力を込めて話します。
「奈良クラブは浜田社長がアイディアを持ち、それを遂行するため、我々にピッチの中のことを託してくれました。クラブの社長や強化の責任者、スポーツダイレクターと呼ばれる人は、新しい価値観をクラブにもたらすとき、最初はうまくいかなかったり、難しい状況に追い込まれることもあると思います。そこで『これはダメだ』とすぐに変えるのではなく、我慢して信じ続けることが大切なのです」
フリアン監督は、スペインの名将を例に挙げて説明します。
「グアルディオラ監督が、FCバルセロナの監督に就任したときもそうでした。クラブは難しい状況でしたが、社長をはじめとする幹部が、彼を信じて任せました。それによって、歴史に残る素晴らしい時代を築くことができました。アーセナルのアルテタ監督も同様です。大事なのは、アイディアを信じて、我慢強くやり続けること。その先に、結果が手に入るのだと思っています」
■子どもたちには「決断力をもってプレーすること」を心がけてほしい
フリアン監督は子どもたちの指導も経験していますが、サカイク読者へのアドバイスを求めると、次のように話してくれました。
「子どもたちには、決断力を持ってプレーすることを心がけてほしいです。例えば、相手をかわす、突破するチャンスがあれば、積極的に仕掛けていくこと。守備では、体や腕を使って、アグレッシブにプレーすること。どんな場面でも、100%を出すことを忘れずにプレーすると良いと思います」
エコノメソッドは各地でスクールを開いており、短期間のキャンプも実施しています。スクールでは、賢い選手になるためのトレーニングを受けられます。奈良クラブでは、それらのエッセンスを発展させた、トップチーム向けの「エコノメソッドプロ」を導入することで選手たちが素早く学び、結果に結びつけることができたと言います。
育成年代のみならず、Jリーグの舞台でエコノメソッドを導入した奈良クラブが、来シーズン、J3でどのような躍進を遂げるのか、注目です。
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