サッカーがうまい選手とは「自分にできないことを認めている人」
今のプレースタイルからは想像がつかないかもしれませんが(笑)、僕も小学生の頃はバリバリのドリブラーでした。ドリブルもできて、シュートも決められて、パスも出せる。「僕は何でもできる選手だ」と。5年生のときには全国大会にも出場して、地元ではちょっとした有名選手だったんです。
だけど、中学校に上がると、身長が伸びなく、「何でもできる選手」だったはずの僕は、「何にもできない選手」になっていきました----。
38歳の今でもJリーグのトップ選手として走り続ける川崎フロンターレの中村憲剛選手。Jリーグで2連覇を達成した今シーズンもチームの中心選手として活躍されました。
正確なパスから味方のゴールを演出し、2016年にはJリーグ最年長(36歳)でMVPに選出された憲剛選手ですが、少年時代は身体が小さく足も遅い、けして能力や才能を恵まれていたわけではありませんでした。
その憲剛選手が日本を代表する選手にまで上り詰めたのは、困難にぶつかった時に自ら壁を乗り越え、自分が得意とするパスの技術を徹底的に身に付けてきたからです。
そこで今回は、これまでサカイクで連載してきた憲剛選手が語る逆境から這い上がるために意識してきたことやパスの技術を高めるための記事を6つピックアップしました。ぜひご覧ください。
今のプレースタイルからは想像がつかないかもしれませんが(笑)、僕も小学生の頃はバリバリのドリブラーでした。ドリブルもできて、シュートも決められて、パスも出せる。「僕は何でもできる選手だ」と。5年生のときには全国大会にも出場して、地元ではちょっとした有名選手だったんです。
だけど、中学校に上がると、身長が伸びなく、「何でもできる選手」だったはずの僕は、「何にもできない選手」になっていきました----。
ぶつかられたら、倒されてしまう----。
自分の方がうまいはずなのに----。
悔しくて、ショックで、僕は中学1年生の途中でサッカーを止めてしまったほどです。じゃあ、線が細くて、身長が低い選手は、プロになれないのか?
そんなことはありません、ぶつからなければいいんです。
小学校6年生の時の関東選抜で、他の地域の子と一緒にやったのですが、完全にへし折られましたね。
基本的に上手くできた人生じゃないです。苦労が多い方が人間として強くなるのではないかな。なので、ぼくの場合は心が折れるのに慣れているというか、折れてから這い上がることに慣れている。苦労せず順風満帆にやってきた人は、心が折れたときに弱いと思います。
僕はキックのフォームというのは、「人から教えられるもの」ではなく「自分で見つけるもの」だと思っています。どうすれば、思ったところにボールが飛ぶのか、一番強く蹴れるのか、それを見つけるためには、たくさんボールを蹴るしかありません。
現代サッカーは「パスゲーム」だと言われています。当たり前ですが、ドリブルだけでサッカーをすることはできません。
サッカーの最大の目的である「ゴール」を決めるためには、パスをつないで、ドリブルを仕掛けやすい状況や、高い確率でシュートが決まる状況を作り出すことが重要になります。
では、しっかりとパスをつなぐためにはどんなことが大事になるでしょうか? 僕はパスに「メッセージ」をつけることだと思います。
キックについて、僕が心掛けているのは、相手に読まれないように、できるだけコンパクトな振りで蹴ること。ボールを蹴るときは、勢いをつけるために足を後ろに振り上げる「テイクバック」と呼ばれる動作が入ります。
テイクバックというのは、いわば「これからキックをする」というメッセージを相手に伝えているようなもの。その時間が長ければ、守る側の選手は準備もできます。