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ミゲル・ロドリゴ監督が感じる日本の指導の気になる4点
練習でパスやドリブルができても試合で実践できない子どもが多い理由とは?
公開:2019年8月 2日 更新:2019年8月23日
キーワード:ミゲル・ロドリゴ
たった一言のアドバイスで選手の才能を引き出し、試合展開を劇的に変える手腕から"魔法使い"と呼ばれるミゲル・ロドリゴ監督。
フットサル日本代表を初めてW杯ベスト16に導き、育成年代の指導にも精通している世界的名将が今回、「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」というDVDを発売するにあたり、日本にいる7年間で感じた日本サッカー/フットサルの指導で気になった4つの点について独自の考えを語ってくれました。(取材・文:鈴木智之)
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
2回目:子どもが成長するのに一番大切なのは自らプレーの決断ができるようになること
技術に特化した練習は実際の試合には活かせない
私は2009年から2016年までの7年間、フットサル日本代表監督として、日本代表選手の指導にあたってきました。また多くのサッカー/フットサルの指導現場を視察し、クリニックを開催する中で、たくさんの日本の指導者、選手と触れ合ってきました。そして今回は、日本の育成指導の現場で感じている4つの気になった点をお伝えしたいと思います。
前提として、日本の指導者、指導現場がすべてこうだと言うつもりはありません。日本の指導者に対して、リスペクトの心を持っています。これは私、つまり「ミゲルの指導との違い」と言い換えるとわかりやすいかもしれません。
日本の指導現場で感じた気になること。それが、次の4つです。
(1)技術と戦術がつながっていない
(2)選手自身が決断する回数が少ない
(3)ミスを学びにつなげない
(4)ポジティブなフィードバックが少ない
これらはつまり、私が実践する「インテグラルトレーニング」との違いでもあります。
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
順を追って説明しましょう。まず、ひとつ目の「技術と戦術がつながっていないこと」ですが、練習が項目ごとに分かれていて、それぞれ互いが独立している。日本の指導現場から、そのような印象を受けました。
サッカー/フットサルの上達のためには、運動能力や技術、集中力、空間認知力、体力、判断力、決断力などが重要で、それらをすべてつなげ、相互に作用させながらトレーニングをすることが必要です。
しかし、日本のトレーニングはドリブルならドリブルだけ、パスならパスだけというように分かれているので、ドリブルだけが上手な選手、1対1が得意な選手はいますが、それを試合の中で効果的に発揮できる選手が少ないと感じています。それゆえに選手の実力はあるレベルまで来ると頭打ちになってしまうのです。
もちろん、技術は必要です。正確なボールコントロール、キックができなければ、戦術を実行することはできません。しかし、技術のトレーニングだけを切り取っても、試合とは異なるシチュエーションなので、試合で発揮できる技術にはならないんですね。
技術に加えて認知力や判断力を同時に高めていく練習が必要
Jクラブの育成組織のように、その年代のトップレベルの選手たちが集まるクラブであれば、1本のパスやドリブルのボールタッチに徹底的にこだわり、ひとつの技術を極めるのもありかもしれません。しかし、多くの子どもたちにとっては、そこまでひとつのパスやドリブルを突き詰める必要はないと思っています。
そのような、ただ技術だけのトレーニングをするよりも、技術に加えて運動能力や認知力、判断力、体力といった、サッカー/フットサルに必要な能力を同時に高めていく練習が必要なのです。そうすることで、実際の試合で活躍できる選手になっていきます。
なぜなら、サッカー/フットサルの試合には、チームメイトがいて相手がいます。試合の中で、「いまはこういう状況だから、このプレーをしよう」という認知、判断が必要だからです。この2つはトレーニングに組み込まなければならない、最低限の戦術的要素です。
さらに幼い子どもたちには、運動の基本的なバランス感覚やコーディネーション、体の方向転換なども含めなければいけません。それらすべてを結合させることがポイントで、インテグラルトレーニングにはそのエッセンスが含まれています。
DVDで実演したトレーニングは、子ども向けメニューのワンランク上のものです。技術と戦術を結合させた練習を通じて、サッカー選手としてレベルアップしていく姿が見てとれると思います。子どもたちと一緒にトレーニングをし、フィードバックをすることで、短時間で驚くほど変わっていきます。
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
私のメソッド、インテグラルトレーニングに興味を持っている人にとっては、最高の教材になると思います。子どもたちに正しいフィードバックを投げかけたいときに、どうすればいいのかという悩みを持っている人も、ぜひ参考にしてください。
なにより「子どもたちを向上させたい」「成長させたい」という気持ちを持った指導者、保護者の方には、ぜひ一度、見ていただきたいです。子どもたちの才能を開花させるための、大きなきっかけが得られると思います。
次回は、「選手自身が決断する回数が少ないこと」について感じた点をお話ししていきます。
2回目:子どもが成長するのに一番大切なのは自らプレーの決断ができるようになること
2009年、フットサル日本代表監督に就任。日本代表では、チームをワールドカップで史上初のベスト16に導き、AFCフットサル選手権では、2度の優勝を果たす。
2017年よりフットサルベトナム代表監督に就任。多彩な戦術を駆使することから「魔法使い」の愛称を持つ。
「子どもを褒めて伸ばす」トレーニング方を元に育成年代の指導にも精通。日本で定期的に子ども向けのスクールを行っている他、2014年には1週間の特別レッスンを通して、子どもの成長を描いた「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~サッカー編」にも出演した。
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