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ミゲル・ロドリゴ監督が感じる日本の指導の気になる4点
子どもが成長するのに一番大切なのは自らプレーの決断ができるようになること
公開:2019年8月 7日 更新:2019年8月23日
キーワード:ミゲル・ロドリゴ
「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」というDVDを発売するにあたり、日本にいる7年間で感じた日本サッカー/フットサルの指導で気になった4つの点を話したミゲル・ロドリゴ監督。連載企画2本目となる今回は、「選手自身が決断する回数が少ないこと」について独自の考えをお話しいただきました。(取材・文:鈴木智之)
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
1回目:練習でパスやドリブルができても試合で実践できない子どもが多い理由とは?
判断を伴わないパスやドリブル練習は、試合につながらない
私が7年におよぶ日本での活動で感じた、指導現場の4つの改善点。1つ目は「技術と戦術がつながっていないこと」でした。今回は2つ目のポイント「選手自身が決断する回数が少ないこと」について、話をしたいと思います。
機械的なパス練習やドリブル練習は、判断を伴ないません、決断の要素は入っていないのです。それをまず、日本の指導者の方々には理解してほしいと思います。
私がフットサル日本代表の監督をしていたとき、選手には「2つの世界で生きなさい」と言いました。「フットサルのコートに入った瞬間に、日本特有の考え方、慣習、先輩後輩の関係、それらすべてを脱ぎ捨てなさい」と。そして、こう付け加えました。「コートの中では全員が対等だ。そこに上下関係はない。だから、個人が最大限の力を出し切ること。年齢が上だから、下だからなどは関係ない。全員が自分のプレーに責任を持ち、プレーを決断しよう!」
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
サッカーやフットサルは、その国の文化と密接に関わりのあるスポーツです。日本人にとって、コートの中で自分を表現する、決断に責任を持つことは、とても難しいことであると、私は理解しています。しかし、監督やコーチに言われたとおりのプレーしかできないようでは、強豪相手に勝つことはできないのです。
日本人は選手個々が判断や決断をするトレーニングが必要
日本人の良さは、ひとつの道を示すと、迷うことなくそちらに進んで行くこと。話をよく聞くので、とても導きやすいです。戦略を伝える際に「こういう試合にしよう」と言うと、すぐに理解し、実行してくれます。「3年かけて、アジアチャンピオンになる。だから、こういうプランでやるぞ」と伝えると、目標に向かって進み、忍耐をもって着実に進むことができるのが日本人なのです。石を積み上げるのが上手く、仕事の能力がずば抜けて高い。多くのことをできますし、厳しいトレーニング、長時間練習をしても文句を言いません。
そのような特徴のある日本の選手に対して、足りない部分である自信を持つことを促し、「自分を表現しよう。コートの中で自分を出そう」と言い続けました。そのために必要なのが、機械的なトレーニングではなく、選手個々が判断や決断をするべき状況が設定されたトレーニングなのです。
日本人のDNAの中には、「自己犠牲」や「努力」が心に刻まれています。それは、スペイン人が持っていないものです。日本の選手からオレンジの皮をむくように、余計なものを取り除き、スペイン流の皮をかぶせてコートの中に入れると、素晴らしいパフォーマンスをするのです。
選手たちは私が構築するインテグラルトレーニングを経験することで、自信を持って決断することができるようになり、プレーのクオリティが劇的に向上しました。
彼らがもともと持っていたにもかかわらず、日本の文化や慣習によって、外に出すことができなかった部分を解き放った結果、当時の世界王者アルゼンチンや強豪のブラジル、ポルトガル、イランといった国々と対等に戦うことができました。日本の選手に自信をもたせることを促し、そのために練習中に多くの決断させることを積み重ねてきたからです。
選手たちが自信を持って決断するために、コートの中でどのようなことをしたか。ひとつのエッセンスを紹介します。練習を通じて時間をかけて、彼らの頭の中にある「iCloud」(注:記憶媒体の喩え)に、様々な要素を入れたのです。
(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)
たとえば攻撃、守備の方法やプレッシングの回避、セットプレーなど、フットサルに必要なあらゆることを教えました。そして、適切なシチュエーションに応じて、教えてきたコンセプト引き出せるように、試合の読解力についてもアプローチしました。選手たちに自信を与えながら、練習を一つ一つ積み重ねました。
そこで必要になるのが「ミスを学びにつなげること」。そう、私が日本の指導現場を見て、改善の余地があると感じている、3つ目のポイントです。これについては、次の記事でお話したいと思います。
2009年、フットサル日本代表監督に就任。日本代表では、チームをワールドカップで史上初のベスト16に導き、AFCフットサル選手権では、2度の優勝を果たす。
2017年よりフットサルベトナム代表監督に就任。多彩な戦術を駆使することから「魔法使い」の愛称を持つ。
「子どもを褒めて伸ばす」トレーニング方を元に育成年代の指導にも精通。日本で定期的に子ども向けのスクールを行っている他、2014年には1週間の特別レッスンを通して、子どもの成長を描いた「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~サッカー編」にも出演した。
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