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- スキルに名前をつけよう フィンランド式15のステップで問題解決
連載方式でフィンランド式キッズスキルをご紹介しています。3回目の今日はステップの4~11までをご紹介します。ここまで進めばキッズスキルの全貌が見えてきます。フィンランドが教育大国として注目を集めているのは、単にテストの結果がいい高学力というだけでなく、学力差がほとんどない、落ちこぼれを作らない仕組みが徹底されているからです。どんな方法論やアプローチで子どもたちの学ぶ意欲を引き出しているのでしょう? 今日もサッカーの事例を交えてご紹介してきましょう。
■子どもの視点で楽しみながら学ぶ
「子どもたちは楽しいと感じることはすぐに取り組めるはずです。保護者の方もお子さんと同じ視点に立って、楽しみながら取り組んでみてください」
日本で唯一フィンランド式キッズスキルを広めるプログラムを提供しているランスタッド株式会社EAP総研の川西由美子所長は、キッズスキルへの取り組み方についてこう話します。
「楽しみながらできる仕組みが用意されているのもキッズスキルのいいところです」同じく、キッズスキルアンバサダーの資格を持つ、EAP総研の山越薫さんもこう続けます。
まずは、フィンランド式キッズスキルの15のステップをおさらいしましょう。
ステップ1 問題をスキルに変換するステップ2 学習するスキルを決めるステップ3 スキルを学ぶことの利点を探るステップ4 スキルに名前をつけるステップ5 味方になってくれるヒーローを選ぶステップ6 サポーターを募るステップ7 自信をつけるステップ8 お祝い会を企画するステップ9 スキルを明確にするステップ10 学んでいるスキルを公表するステップ11 スキルを練習するステップ12 リマインダーを作るステップ13 お祝い会を開くステップ14 スキルを他の人に伝えるステップ15 新しいスキルを決める
前回はステップ3「スキルを学ぶことの利点について学ぶ」までをご紹介しました。さて、次のステップはどんな項目なのでしょう?
「スキルを決めるときに子どもたちとしっかり話し合って『こうありたい』という理想をイメージしました。ステップ4からはそれをさらに具体化していく段階になります」
■スキルの名前は「ロナウド!」子どもとイメージを共有する
川西さんは、ステップ4の自分の獲得したい「スキルに名前をつける」ということ自体が、ぼんやりとしていたイメージを具体的にしてくれるスイッチになると言います。
「サッカーを楽しくやる」ためにドリブルの技術が必要! 親子で話し合った結果、学習したいスキルに一番サッカーらしい「ドリブルの技の習得」というスキルを選んだとします。このスキルにたとえばクリスチャーノ・ロナウドからとった「ロナウド」という名前を付けてみるのです。こうすることで、まずは親子の間で「ロナウド」という言葉が特別な意味を持つようになります。
「ドリブル練習」では味気ないし、具体的なイメージが湧きません。しかし、「ロナウド」と一言声に出せば、子どもたちには明確なイメージが浮かび、それをお父さん、お母さんも共有できるようになるのです。
「親子の間でも、信頼関係は大切です。日常生活でのこうした共感と対話が信頼関係を生むのです」
川西さんは、名前のつけ方も自由に、親子で話し合いながら一緒に考えて、最終的には子どもたちに任せるのがポイントだと言います。
「子どもは自分で決めた名前に愛着を持つものです。名前を決めるときは、否定したりせず、すべてを肯定的に受け入れてあげてください」
こうした小さな積み重ねで子どもたちは自信を身につけていくのだそうです。
■お父さん、お母さん、ヒーロー、サポーター 周囲の人たちを巻き込んで学習する
ステップ5はスキルを学ぶ際に自分を助けてくれるヒーローを選ぶというステップです。好きなサッカー選手やマンガのヒーロー、動物など子どもがヒーローと思う人物やモノならどんなものでも構いません。子どもたちは想像力をフル稼働して自分のヒーローを探すはずです。
「ありたい自分」の憧れのヒーローは、○○だったらこうするはず! ○○ならこんなことはしない! というように子どもたち自身が自分で正しい行動をするようになるきっかけや示唆を与えてくれる存在です。
ステップ6ではヒーローよりもさらに身近なサポート役を探します。「サポーター」というのはサッカーと馴染みがいい言葉ですよね。おじいちゃん、おばあちゃんや、サッカーのチームのコーチ、学校の先生、友だち、周りにいる身近な人たちにスキルを学ぶための応援をお願いするのです。このとき、子ども自身がお願いすることで、自分が学ぶスキルで何をすべきかを再認識でき、スキル学習への意欲をより高まるのだそうです。
スキルを習得する際に一番必要なのが、子どもたちが「自分にはできる」と信じられる自信を手に入れることです。ステップ7の「自信をつける」スキル習得の成否を左右する大きなステップになります。川西さんは「サッカーの選手がよくつけている、サッカーノートは、このステップの大きな助けになるのでは?」と言います。
練習したことを記録するサッカーノートで自分の積み重ねた努力を明示化して、自信を深める。それを見た親が到達度を測りながらしっかり褒めてあげる。そして自分の気持ちを書く欄に悩みやヒーロー、サポーターに助けて欲しいことを書き出す。こんな風な使い方ができれば、スキルの習得がさらにスムーズになるというのです。
ステップ8の「お祝い会の企画」はステップ13のお祝い会のための準備です。スキルを習得する前に子ども自身にどんなお祝いをしたいのか、細かいところまで計画を立てましょう。この際に「これができたらあれを買ってあげる」など、ご褒美やプレゼントで釣るのは絶対NG。このお祝い会はその子がスキルを習得したことのお祝いというよりは、子どもたちは支えてくれた両親やサポーターにお礼を言い、周りのサポーターは頑張った子どもを褒めてあげるというのが主旨なのです。
未来の楽しみを計画することは子どもたちの創造力を引き出すスキルにもつながり、キッズスキル達成のイメージを湧かせる手伝いもしてくれます。
■あくまでも子ども主体! 計画はできるだけ具体的に
ステップ9,10はスキルを具体化していく準備です。
「保護者の方はついつい試合の勝ち負けやボールに何回触った、シュートを何回打ったという目に見える成果を求めがちですが、子どもにとっては『こんな感じだった』『こういう風に身体が動いた』というボディイメージの方が強いものです。やはりここでも子ども感覚を大切にしましょう」
ステップ9「スキルを明確にする」ステップでは、子どもたちが感じたことを手がかりに、
・いつやるか(どのくらいやるか)
・どこでやるか(家、学校)
・だれがチェックするか(保護者、サポーター)
・どのようにやるか ・どのように評価するか
を細かく決めていきます。そして、学んでいるスキルをできるだけオープンに周りの人に伝えていくのです。こうすることで、いまはできないことでも絶対にできるようになる! と子どもたちが強い決意を持つことができます。
ステップ11ではいよいよ「スキルの練習」に入ります。ステップ9で決めた細かい手順に従って、練習を始めるのです。まずは簡単にできることからスタートしてそれが習慣になるになるまで続ける。保護者の方は子どもたちが「できるようになった」ときはどんな小さなことでも、そのタイミングを逃さず、何がどのようにいつできるようになったか細部まで伝えて、褒めてあげることを忘れないでください。
次回はいよいよ最終回。ステップ12~15でキッズスキルの総仕上げを行います。
川西由美子
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ。フィンランド式キッズスキルを広める日本で唯一のトレーニング機関であるランスタッド株式会社EAP総研の所長を務める。自身も数多くのアスリート、企業所属のスポーツチームをサポートした経験を持つ。
山越薫
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ、医療コンシュルジュ、メディカルアシスタントとして基礎心理学の分野からキッズスキルにアプローチする。EAP総研Behavioral Healthコンサルタント。
ベン・ファーマン
フィンランドの精神科医。ヘルシンキ・ブリーフセラピー・インスティテュート(フィンランドが国家レベルで認定しているサイコセラピスト=精神療法家のトレーニング機関)代表。キッズスキルの著者であり、キッズスキルプログラムの開発者。同じく開発に携わった問題解決、チーム再構築プログラム「リチーミング」は多くの世界的企業で研修や人材育成に活用されている。
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(第37回全日本少年サッカー大会決勝大会より)
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