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JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
現役バリバリ71歳!あざみ野キッカーズの國方徳二さんが実践する"ずっとEnjoy"の精神
公開:2016年9月 6日 更新:2016年9月10日
老若男女を問わずに楽しめる――。
スポーツの魅力を語るときにしばしば用いられる常套句ですが、特に団体スポーツに関しては、これが実践できていているかと言えば、疑わしい面もあります。一般に“社会人”と呼ばれるようになるころ、多くの競技者はスポーツから離れていく傾向があり、そこには当然ながら致し方ない面もあるでしょう。ただ、本当は離れたくないにもかかわらず、そもそもプレーをつづける環境自体がないとしたら――。
日本サッカー協会は2014年に『JFAグラスルーツ宣言』を発表し、さらにその賛同パートナー制度を実施するにあたっての三本柱の一つとして“ずっとEnjoy♬ 引退なし”という項目を掲げました。就学期間を終えても、なおサッカーを楽しめる環境をどうつくっていくのか。これは単に競技力を追求するのではなく、もっと広い視点からの募集です。今回の『JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問』は“ずっとEnjoy♬ 引退なし”という項目で賛同パートナーに選ばれた、神奈川県横浜市のあざみ野キッカーズを取り上げます。(取材・文 川端暁彦)
■「大人のチームに入りたい人は、必ず子どものコーチもやる」がルール
クラブの歴史は30年以上前の1983年にまでさかのぼります。同年4月、あざみ野団地の理事であった故・吉原重明さん(当時68歳)の発案で『あざみ野団地サッカー愛好会』が発足しました。まだできたばかりだった団地の広報誌に「みんなでサッカーをやろう」と投稿し、そこに団地へ引っ越してきたサッカー好きたちが続々と応えて集まるようになったとのこと。昼間はボールを蹴って夜は酒を楽しむ会だったそうで、当時を知るクラブの相談役兼コーチの國方徳二さんは「最初は十数人ですし、決して形式張ったものではなかったですよ」と振り返ります。
そして、当時は人口の流入が進んで、地域に子どもたちが増えていた時期でもありました。またメンバーの多くは40歳前後だったため、ちょうど小学生の子どもを持つ親が多いという面もあり、翌年には、「子どもたちにサッカーを教えよう、ということになったんです」(國方さん)。
最初は10人少々でギリギリ試合ができるくらいの人数だった子どもたちも、評判を聞いた地域の子どもたちが次々と参加を申し込んだことで、「一時は200人を超える大所帯になりました」(國方さん)。これではコーチの人数が足りないということで、「大人のチームに入りたい人は、必ず子どものコーチもやる。これを私たちのルールにしたんですよ」と國方さんは振り返ります。ここに、大人のエンジョイチームと少年サッカーチームという二つの顔を持った『あざみ野キッカーズ』が誕生することになりました。
■休日に何か楽しむことがあるということが大事なんだ
結団当時の志は今も息づいています。子どもに必要経費以外の月謝はなし。「地域の大人として、地域の子どもたちを育成しましょうというのが会則にも書いてある私たちの考え方。コーチはみんなボランティアとしてやっています」(國方さん)。國方さん自身も3つのチームで選手としてプレーしながら、コーチとして子どもたちの指導に当たっています。実際にプレーも拝見しましたが、寄せのスピード、キックの質ともに70歳を超えているとは思えない切れ味です。
「サッカーは人生の生きがい。サッカーをやっているから自分の人生は楽しい。30代からここでやっているものですから、つらいことがあったとしても『土日になれば楽しいサッカーが待っている』と思えるんです。おかげで仕事にも良い影響があったと思っています」
國方コーチはそう言って微笑みます。所属していた会社の新人研修でも「休日に何か楽しむことがあるということが大事なんだ。何か一個でいいから、仕事以外の楽しいことを持ってごらん」という説明をして、「自分にとってはそれがサッカーなんだ」と語って聞かせたとのことで、筋金入りの生涯プレーヤーです。
■日曜日の午前中に一緒にボールを蹴る仲間がいる
かつての教え子が大人になってから社会人プレーヤーとして戻って来るようにもなるといったサイクルもできつつあり、「それが本当にうれしい」とも言います。70歳の誕生日をクラブで祝ってもらい、子どもたちから贈られたときの写真を見せていただきましたが、「このときはね、本当に幸せを感じましたよ」と何とも素敵な笑顔を浮かべられました。
その様子も観ていたJFAの松田グラスルーツ推進部部長は「私もここに来て感動しましたよ。本当に素晴らしいクラブですよね」と言ったうえで、こう続けました。
「日曜日の午前中にグラウンドへ足を運べば、一緒にボールを蹴る仲間がいるんです。地域にそういう場があるというのは一つの理想なのではないかと思っています。別に普通の学校のグラウンドを使っているだけで、特別に立派な施設があるわけではないですよね。特段、ハード面で凄いわけではないですが、こういうコミュニティがあることが凄いんです」
同時に「正直、ちょっとうらやましいですよ。でもこれは昨日今日のことではなく、30年以上前から続けてきたことの上にあるというのが本当に素晴らしいです」と付け加えて笑顔を浮かべた松田部長はこうも言います。「國方さんのような方がいるのが大きいのだろうと思います。でも逆に言えば、そういう情熱のある方がいれば、(他の地域でも)できる可能性があるということなんです」と。
後編では生涯サッカーのためにクラブが実践している試みや、クラブに関わっている方たちに触れてみたいと思います。そこには「できる可能性」のヒントが詰まっているのではないかと思うからです。
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取材・文 川端暁彦
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