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弱小チームのチカラを引き出す! 暁星高校林義規監督の教え
高校生からではなく小学生からサッカーを教える利点
公開:2014年12月27日 更新:2020年3月24日
※本稿は、『弱小校のチカラを引き出す』(著者・篠幸彦、東邦出版刊)の一部を転載したものです。
あなたの子どももサッカーを続けていれば通る道!? 高校サッカーのリアルがここにある。弱小校の子どもたちの力を引き出し、暁星高校サッカー部を全国出場に導いた林義規監督を追うルポルタージュ。短期集中連載、第3回。(取材・文 篠幸彦)
■ハングリー精神を植え付けるのは簡単じゃない
大学卒業後、教員免許を取得した林監督は1978年(昭和53年)に母校の暁星学園に赴任した。高等部の枠に空きがなく、初任は初等部だった。4年ぶりに戻ってきた母校の環境は、当時となにも変わっていなかった。後輩たちは相変わらずコンクリートの上でボールを蹴っていた。
「コンクリートじゃあボールはすぐ破けるし、靴だってすぐに擦り減ってボロボロだよ。なんたって危ねえよな」
変わらない劣悪な環境ながら林監督が見据えるのは、このときから高い場所にあった。
『東京代表になって選手権に出たい』
そんな体の芯から湧き出る情熱と若さを身に滾らせて、着任と同時にサッカー部の指導をはじめた。しかし、すぐに現実を目の当たりにする。
「高2、高3は受験だから部活はやらない。高1だってやらないやつもいた。残ったやつも俺が毎日練習するもんだから、別にキツいことをやっているわけではないのにみんな辞めちゃうんだよ」
熱くなるだけ、生徒は遠退いていった。
林監督は、自分が高校生だったあの頃を想起せずにはいられなかった。
「やっぱりうちは裕福な家庭が多いからハングリー精神に乏しいんだよ。それに親も暁星に入れてサッカーをそんな真剣にやらせようなんて思ってない。親としちゃあ、ただ遊ばせとくよりサッカーやらせてたほうがいいってそれくらいだったんじゃねえかなぁ」
それなりの大学に行かせ、それなりのところに勤め、将来は会社を継がせることができればいい。そんな家庭がほとんどだった。本気になってサッカーをやりたい生徒も、やらせたい親も暁星高にはいなかったのだ。
「だから子どもたちはぬるま湯に浸かってここまで育ってきてんだよね。そいつらに勝負に勝たなくちゃいけねえんだって、そういうハングリー精神をどうやって植えつけたらいいのか。簡単じゃねえよ。ぬるま湯ってのはさ、出るに出られねえんだから」
変えなければいけないことは誰よりもよくわかっていた。彼らの思考も熟知している。けれど、どう変えればいいのか。監督になって最初の障壁である。それに周囲の目も冷ややかだった。
「人に言わせれば『暁星が東京代表?』って誰しもが思ったし、『お前んところが帝京に勝てるわけねえだろ、馬鹿みてえだよ』って言われたんだから」
けれど、無理だと言われるほど意地でも成し遂げたくなるのが負けず嫌いの性分。あれだけ不可能だと思った早稲田大で試合に使ってもらえた経験があるのだ。これくらいで音を上げるわけがない。
取材・文 篠幸彦
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