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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
楽しいだけじゃ勝てない。練習には厳しさも必要では? [池上正コーチングゼミ]
公開:2017年4月 3日 更新:2017年4月19日
のべ60万人以上の子どもたちを指導し、少年サッカーのバイブル『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法(小学館)』の著者でも知られる池上正さんが、ジュニア年代を指導するお父さんコーチの質問に答えます。
今回は、6年生を指導するお父さんコーチから質問をいただきました。(取材・文:島沢優子)
<お父さんコーチからの質問>
6年生のチームで指導をしています。私は、サッカーはゲームなので勝ち負けにこだわるべきだと思っています。子どもたちも勝ちたいですし、私も勝ちたいです。
最近、保護者から厳しい指導よりも楽しい指導をして欲しいと言われることがよくあります。しかし勝つためには厳しさが必要ではないでしょうか?
もちろんサッカーを楽しむことは大事だと思いますが、それだけでは勝てません。多少、厳しく言い聞かせたり、要求したりすることで、子どもが強くなる部分もあると思います。
私も大学までサッカーを続けましたが、厳しい経験をしてきたからこそ今があると思っています。楽しいことだけやって上手くなるというのは違う気がするのですがいかがでしょうか?
(46歳・コーチ歴2年・6年生担当)
<池上さんのアドバイス>
「池上さん、楽しいだけでは勝てませんよね?」
よく受ける質問です。
20歳くらいの若いコーチでも「ある程度厳しくしなきゃダメですよね?」と明るく言ってきます。「楽しませよう」とまだまだ言い続けなくてはいけないと思います。
みなさん、子どもがサッカーを楽しむ遊びのような状態を「ふざけている」ととらえているのかもしれません。
ところが、これを「夢中になっている」ととらえると、まったく違った見方ができます。
■「夢中な時間」をいかに増やすかが上達のポイント
例えば、「いいね!」とほめることは、子どもの自己肯定感を高めます。大人にそう言われて「自分はこれでいいんだ」と思えた子どもは、「よし、今度はこうしてみよう」と次のトライを自主的にスタートさせます。
これが「夢中になっている」状態。自分の中でモチベーションをつくりだしています。これは「内的動機づけ」と呼ばれます。
夢中になるとアドレナリンが分泌され、技術を体得するのに最適な状態になります。そのうえ、夢中で走り続けるので、自然に運動量も上がります。本人はただただ楽しくて仕方がないため、ずっと前向きに取り組めるし、疲労感もありません。
この「夢中な時間」をいかに増やすか。それが上達の大きなポイントなのです。
ところが、ご相談の方が主張するように「厳しく言い聞かせたり、要求したり」した場合、子どもは「夢中」の入り口にさえたどり着けません。
「コーチが怖いから、やらなきゃ」
「また怒られるから、走らなければ」
追い詰められた子どもにとって、サッカーを頑張る動機づけ(モチベーション)は、指導者からの刺激、つまり前者の「内発的動機付け」とは対岸の「外発的動機け」になります。
■「厳しさ信仰」から抜け出せないのはなぜか?
このように、育成年代のスポーツ指導で厳しく言い聞かせることは、脳科学的にも、心理学的にも、マイナスになるというエビデンス(証左)は多くの文献や論文で証明されています。スポーツの世界に科学的なトレーニングが取り入れられ始めて久しいにもかかわらず、少年サッカーの指導者は「厳しさ信仰」からなかなか抜け出せません。最も重要なコーチング(選手への接し方)は旧態依然のままです。
それは、なぜか。みなさんがご自分の経験値で指導しようとしているからだと考えます。ご相談の方も「大学までサッカーを続けましたが、厳しい経験をしてきたからこそ今がある」とおっしゃっています。
それにきっと間違いはないでしょう。
ただ、この方が「スポーツを楽しんで上達した経験を持たない」ことも、またひとつの事実です。そのため、厳しくされたことのみに感謝するのだと思います。
加えて、サッカーの「楽しみ方」が年齢で少しずつ変わっていくことを理解してほしいです。
文:島沢優子
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