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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

熱くなりすぎて喧嘩してしまう子への対応を教えてください

公開:2019年9月22日 更新:2019年10月11日

普段はみんな仲良しだけど、勝ちたい気持ちが強すぎて毎回喧嘩になる子にコーチも手を焼いている。チームメイトの親としても心配で... とご相談をいただきました。

勝ちたい気持ちが強くて、点を入れられると仲間を責めたり、カッとなって仲間を押したり蹴ったりする。試合で熱くなりすぎる子に、周りへの思いやりを持ってもらうにはどうしたらいい? とのこと。みなさんならどう対応しますか?

今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、いさかいが起きた時の対処法などを伝授しますので参考にしてください。(取材・文:島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

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<U-8年代の保護者からの質問>

指導者ではないのですが、コーチたちも手を焼いている子の対応についてご相談させてください。

1年生だけで10名ほどのチームなのですが、練習やミニゲームの中で毎回必ずと言っていいほど喧嘩があります。

いつも怒ってしまう子がいて、勝ちたい気持ちがとっても強くて点を入れられたり思うようにいかないと仲間を責めてしまうのです。カッとなって仲間を押したり蹴ったりしてしまうこともあります。

その都度コーチたちは諭してくれたり、時には厳しく叱ってくれたりみんなで何とかその子の気持ちを聞いてなだめて言い聞かせてくれようとするのですが、なかなか直りません。

喧嘩が何度もあってチームの雰囲気が悪くなると、その子だけでなく、他の一年生みんなを集めて時間をとってチームで戦うことの大切さを教えてくれています。

もちろんお母さんたちもそれぞれ、きちんと子どもに話をしてみんなで見守っていこうという親御さんばかりでその子のいいところもよく知っています。

まだまだ一年生だし、言い聞かせると言っても難しいと思います。少しずつ良くなっていくだろうと個人的には思いますが、その子の親御さんも「どうしたものか......」と悩んでいます。

ゲーム以外ではその子も含め、みんな仲良くできています。ですが、ゲームになると熱くなってしまうんです。

コーチたち(1、2年生合わせて7名の大人がついてくれています)もどうしたものかと困っているようで。

このことに関してコーチから保護者に対して、冗談ぽく「次回の練習はコーチ1人しかいけないので喧嘩しないようにお願いしますねー」と言われとことはありますが、子どもや保護者に対して特にこうしてくださいとか言われるようなことはありません。


今はまだ良いけれど、このまま何も対応しなくていいのか、いずれ大きな問題になったりチームメイトとの間に亀裂が入るのでは、と同じチームの親として少し悩んでいます。

勝ちたいがゆえに熱くなりすぎる子を、もう少し周りに対して思いやりを持てるようにするにはどうすればいいでしょうか。

何かアドバイスがあればよろしくお願いします。

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

先日、ある幼稚園でのサッカースクールの練習を見る機会がありました。まだ未就学児ですから、喧嘩もあります。

ひとりの子どもが仲間の腕をつかもうとすると、もう一方もつかみかえすといったすさまじい(?)けんかが繰り広げられていました。片方が「もう、やらない!」と泣きじゃくりながらお母さんのところに走って行きました。

抱きつかれたお母さんは最初こそ慰めたり、励ましたりしているようでした。が、あまりにも泣き止まないためイライラしてきたようで、その子にお説教を始めました。

そこで、スクールのコーチがお母さんに叱られている子どもの足元へころころとボールを転がすと、子どもは泣き止みました。コーチが転がしてくれたボールを足で蹴りながら、お母さんから離れていきました。しばらくすると、仲間の輪の中に戻って楽しそうにプレーしていました。

 

■色々経験して子どもは成長する。大事なのは「サッカーが楽しい」かどうか

「見ていると、イライラします」「つい小言を言いたくなります」「我慢できません。どうしたらいいですか?」

そのような質問をお母さんたちからよく受けます。

私はすぐに「ああ、だったら、見ないほうがいいですね」と即答します。「見に行かなければいいんですよ」と。

すると、多くの方は「ええ~っ。でも、見たい」と言います。

見たいのであれば、お子さんに起こるどんなネガティブなこともすべて「経験のひとつ」と割り切ることです。

けんか、ミスや失敗、順番抜かし。抜かすことも、抜かされることもあるでしょう。殴ったり、殴られることもあります。

でも、いろんなことを経験して子どもは成長していきます。さまざま嫌なことや辛いことがあっても、最後に「サッカー、楽しかった?」と尋ねてみてください。ほとんどの子が「楽しかった」と答えるはずです。

親御さんたちは、子どものけんかやいさかいといったプロセスを全部そばで見ているので、展開にハラハラしたり、ある特定の子どもが気になったりしますね。

ところが、そのプロセスを見ていない場合はどうなるか。

冒頭の幼稚園児のように途中で子どもが自分で気持ちを立て直し、何食わぬ顔で帰宅して「サッカー楽しかった!」と言えば、何も気になりません。

 

■喧嘩のたびに大人が仲裁したりコーチが割って入るのは、成長につながらない

それなのに、いざこざの部分だけがクローズアップされ、親や指導者が過度に世話を焼いてしまうと自分たちで解決することができなくなってしまいます。

子どもたちが喧嘩するたびに仲裁を親に頼んだり、コーチが中に入っていくことは決して子どもの成長にプラスにはなりません。したがって、私はずっとみなさんに、大人は離れたほうがいい、消えたほうがいいとお伝えしています。

ご相談者様のチームは、コーチだけで大人が7人もいます。この方々がそこにいても知らん顔していればいいのですが、上記のように「子どもの成長のためにどうしたらいいか」という意識がない場合、問題が起きないようにする傾向があります。

大人の数が多いと、見えすぎるわけです。
「あのときはあの子のほうからこうした」
「いや、先に手を出したのは〇〇君でしょう」
そんなふうに経過を詳細に分析したところで、何も得るものはありません。

もちろんですが、当然けんかはないほうがいいです。でも低学年の間は口では言えないため、手が出ます。個々の成長スピードの違いも小さくはありません。

 

■いさかいが起きた時の対処法

そこで、いさかいが起きたときの対処法です。

けがが起きないくらいのところで「はいはい、もうそのくらいにしようね」と止めます。

そこで子どもの意見を聞いたり、大人が見ていて気付いたことを言います。
「順番をごまかしたからそうなったね」
「けんかするとそうなるね」

ただただ事実を解説します。そこでようやく、「嫌な思いをしたということを相手に伝える方法はあるよ」と諭します。ちゃんと話せばわかることを伝えます。

さらに言えば、ここで「じっとしなさい」と抑えつけるのではなく、子どもの気持ちを体ごと抱きかかえてあげることが重要です。

子どもは、自分に押し寄せる感情が、自分でもよくわかっていません。自分が傷つくか、他の子を傷つけるかしかありません。揺らぐ気持ちを抱えているのに、「うるさいだまれ」、「じっとしろ」では解決できません。

「大丈夫だよ」
「心配しないで」
感情の渦に巻き込まれている子どもには、まずはそんな言葉がけをしてください。

保護者はすぐに「こうしなさい」と命令調になります。どんな態度でいたらいいかは伝えずに、これができないとダメ、遅いとダメ。きちんとやらないとダメと、追い詰める言葉を発しがちですね。

それよりも「大丈夫。ゆっくりやればいいよ」と言ってあげること。例えば、ほどけた靴の紐を子どもがまごまごしながら結んでいると、「早くしなさい!」と叱る親がいます。

楽しい練習をしてくれれば、子どもはあっという間に結びます。私が練習をやると、子どもたちは裸足で跳んできたりします。

 

次ページ:大人が面倒な子を排除すると、子どもたちも同じように......

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文:島沢優子

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