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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
相手やボールとの距離感が理解できない小6、中学入学までに幅と深さの意識を身につけさせる練習を教えて
公開:2020年10月 9日 更新:2020年10月19日
まだまだポジショニングの理解が浅く、相手選手やゴールとの距離感が上手くつかめていない小6の子どもたち。「幅と深さ」の意識が足りないという事だが、どう身につけさせたらいいのか。 というご相談をいただきました。
みなさんはどのように指導していますか?
これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、幅と深さを理解するのにお勧めメニューをご紹介しますので参考にしてみてください。(取材・文 島沢優子)
<<U‐10年代の運動能力を高めたい。サッカーの時間にできるお勧めメニューを教えて
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。学校のチームで6年生を見ることになったのですが、どのように教えてよいのか悩んでいます。
年齢的にももう団子サッカーではないですが、まだまだポジショニングというか、相手選手やゴールとの距離感が上手くつかめていない子がいます。
幅と深さの意識が足りない、という事だと思いますが、練習でどのように教えれば理解しやすいのか、どんな練習方法が良いのか、という部分で悩んでいます。
子どもたちはみんな同じ学校に通っていて、小1から一緒にサッカーを始めたメンバーなので気心も知れているし、お互い言いたいことを言える関係性なので、サッカーの理解度が深まればプレーの質もお互いのコーチングなどの質も上がるのではないかと思っています。
中学以降もサッカー部に入る子が多いので、今のうちに意識させた方が良いだろうと思っているのですが、何かいい指導方法はありますか?
<池上さんのアドバイス>
ご相談いただき、ありがとうございます。
距離感、サッカーで言うところの「幅と深さ」を理解する、させるメニューや明確な指導法が、日本ではあまり浸透していないようです。
■幅と深さを理解する三つのステップ
幅と深さを理解するには三つのステップがあります。
横に広がると何が得か。深さがあると、どんなことが起きるのか。まずはここを子どもたちに説明してください。
例えば、狭いエリアでボールをもらうと、相手のディフェンダーとも味方とも距離が近くなる。相手からすぐにプレッシャーを受けてしまって、逃げられない。要するに、ボールを持っている選手のプレーすりエリアが狭くなるわけです。混雑していて、相手ディフェンダーが塊になっているような状態なので、ドリブルやパスですり抜けられません。
一方で、味方同士が広がっていれば、一人ひとりのプレーエリアが広いため、相手ディフェンダーがボールを取りに来ても交わしやすい(逃げやすい)。ボールを取られずにすむ。相手のディフェンダー同士の間隔が空いてくるので、間にパスを通しやすいし、ドリブル突破もやりやすくなりますね。
それが「横」の説明です。
この論理は、「縦」についても同じです。前に走ってボールを受ける。つまり、深くプレーすれば、ゴールに近くなります。ゴールに近いところにボールが入ったとしたら、そこにカバーリングにいける選手は少ないはずです。ディフェンダーと1対1の場面になりやすい。そうすると、チャンスになります。
そして、これが、守備側の視点から教えるとすれば「ピンチになるよね」ということです。これをホワイトボードを使ったりして、まずは口頭で説明してください。
■どうすれば幅が取れるか、プレーを止めて考えさせる
二つ目は、ミニゲームです。
4対4か5対5(GK)で幅と深さのポジションが分かりやすくする。
説明を聞いて意識してプレーしようとしても、最初は狭くなりがちです。そういうときは、一度フリーズさせます。「はい、動かないで。そこにいて」と一度止めるのです。
「今の状況を見てごらん。どうなってますか?」
そんなふうに、問いかけます。選手たちが状況を理解しやすい場面でストップしているので、狭くなってプレーしづらい状態であることが可視化できます。実際、横に広がれず(幅を使えず)、真ん中に固まることが非常に多いです。
「ほら、見てごらん?どうしたいいかな?」
そこで選手と話し合います。
「もっと、ぼくがタッチラインのほうに寄ったほうがいい」など、意見が出てきます。「じゃあ、何を考えると広がれるかな?」
そのようなやりとりをしながら、時間をかけて伝えましょう。自分たちで気づいて、解決する時間を確保してあげることが重要です。
私のこれまでの経験から言っても、6年生は相当時間がかかるでしょう。広がって、ボールをもらうときに「次は何を考えるか。どう動くか」といったことがなかなか理解できません。狭い状況でも、自分ひとりでドリブルしてしまう場面が多いです。
そうではなく、みんなが幅と深さを理解して、いいタイミングで動き出せば、ボールがサイドに渡って、一度真ん中のポストマンに当てて、ワンツーでもらったサイドの子が折り返す。ゴール前にトップの選手や二列目から走り込んだ選手がゴールする。そんなイメージが持てるようにしたいものです。
昔風にいえば「パターン練習」というのがあります。サイドに振って中に当て、逆サイドにまた振って折り返してゴールする。そんな練習です。それをすると、ひとつのパターンにとらわれてしまいそうですが、それがサッカーのセオリーなのです。それをまず学んでおく必要があるのです。
このような、原理原則を伝えてください。
広がると、こういうことが起きるでしょ? 真ん中は、サイドに広がっているからこそ使える。そんな柔軟な理解です。これを理解すれば、真ん中に入れると見せかけて、サイド使うといった相手を欺くプレーができるようになります。
■幅と深さを覚えるためにオランダが行うのは「5対2」
三つめのステップは、幅と深さを覚える練習です。
ひとりのプレーヤーが使うエリアを広くする。相手が寄ってきて狭くなったら、逆サイドにふる。そんな原理原則を学ぶために、オランダでは「5対2」を行います。
その際、横長の長方形のグリッドを使います。正方形が二つ横に並ぶ感覚です。そこで、半分の正方形のなかで4対2をする、ひとりは逆の正方形で離れてポジションを取る。そんなイメージです。
例えば、左側の正方形のなかで4対2を始めます。左の端のほうに寄せるイメージです。そこから、スペースを広げておいた右にパスをする。
左にいた4人のうち3人が左の正方形へ移動して、今度は左側の正方形で4対2を始めて、相手ディフェンダーを左に引き出すためのパス回しをするというやり方です。
ところが、6年生くらいになると反対に出せばいいと思うので、最初はすぐに逆サイドに蹴ったりします。2人も中間守備のままで、サイドから逆サイドへ渡るだけになりがちです。
その場合はストップして、相手守備をどちらかに引き寄せるのが重要だと伝えます。相手をしっかり引き付けてから逆に出す。その感覚を覚えてもらいます。そうすると、幅と深さが身につきます。
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