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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
点取り屋がいなくなって決定力ガタ落ち、今いる選手で何とかして優勝する方法を教えて
公開:2023年5月29日
チームの点取り屋が移籍して決定力ガタ落ち。他の子たちで穴埋めできると思っていたが、いくつかの課題もあり優勝まであと1歩手が届かない。
何とか優勝させてあげるため、「決定力不足」「シュートまで行けない」「パスがつながらない」などの課題をクリアするトレーニングを教えて。とのご相談をいただきました。
今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身の体験をもとに指導者の悩みに答えます。
(取材・文 島沢優子)
<<未だに罰走させるベテランコーチに、罰走をやめてもらうよう上手く伝える方法はある?
<お父さんコーチからの質問>
池上さんこんにちは。ご相談です。
私は少年団でU-12のコーチをしています。このチーム1年生からみていますが、人数も揃っていてTM等もたくさんやっています。
市内大会で優勝を目指して頑張っています。4年から市内大会が始まりこれまで5回決勝戦に進んでいます。うち3回は終了間際 残り1分ぐらいで決められ敗退する事がありました。
昨年末、トップのポジションでよく点をとっていた選手が他クラブに移籍しました。当初は他の選手で穴埋めはできると思っていました。しかし、いざとなると決定力がガクンと下がりました。
今の問題点は
・決定力
・高い位置で奪ってチャンスでもシュートまで行けない
・声掛けができない
・ボールウォッチャーになり裏を取られる
・パスが繋がらない ポンポン蹴るだけになる
・ボールサイドに寄っていくことがある
・GKやコーナーの時、高いボールを足で触りに行く
・トリカゴをやっても~5回パスが通って終わってしまう等です。
悪いところは分かっています。
練習もコーチで相談して色々やっていますが中々改善されません。
子ども達ができないのは我々コーチの責任だと言うことも分かっています。子ども達と目標にしてきた市内大会もあと3回。なんとか1回だけでも優勝させてやりたいと思っています。
上記の課題をクリアするようなトレーニングが知りたいです。何でも良いのでアドバイスあればお願いします。
<池上さんからのアドバイス>
今現在6年生。4年生のときから市内大会が始まって、これまで5回も決勝に進んでいるとのこと。きっと強豪チームなのでしょう。
したがって、市内大会でどうしても優勝したいという強い気持ちが伝わってきます。
■指導者が「勝たせてあげたい」と動くより、子どもたち自身が「勝ちたい」と思えるマインドを育てる
サッカーの入り口であるこの年代で、指導者が必死に「勝たせてあげたい」とあれこれ動くよりも、子どもたちが「勝ちたい。どうしたら勝てるかな」と自分たちで考え始めるようなマインドを育てませんか? 惜敗したことについて書かれていますが、試合結果は指導者によって影響されるものではありません。
試合結果や順位に右往左往するよりも、チームとしてどんなフィロソフィーをもつのか。この年代は、ゲームモデルよりも、チームモデルを追いかけたほうがいいと私は考えます。チームの問題点が具体的に書かれていますが、このチームがどんなサッカーを目指しているのかは、ここからは見えてきません。
パスが繋がらず、ぽんぽん蹴るだけになっているのであれば、そこを集中的に練習すればよいことです。自分たちのチームはパスをつなぐサッカーをしよう。そのためにはこんな練習をしていく。そして試合で試してみよう。そんなふうに目標をもってほしい。
それに、挙げていただいた課題がすべてクリアになっても勝てないかもしれません。なぜなら相手も練習しています。
■勝たなければ未来につながらないわけではない
移籍した子は点取り屋だったようです。それで決定力が落ちたといったことに注目せず、その子がいなくても点を取れるやり方を伝えて練習を積んでもらうのがコーチの役割ではないでしょうか。
その子がいなくても、ゴールを決める力を持った子どもたちはいるはずです。君にはこんな良さがあるよと、光る部分を見つけてあげてください。そこに上手な子どもがいないとゴールできないようであれば、それまでの指導力が問われてしまいます。
多くの指導者は勝たなければ未来につながらないといった見方をしているようですが、決してそうではありません。
試合には負けたけれど、パスがつながってみんなで力を合わせて1点決めた。自分たちが上手くなったと実感できるような試合ができた。それが、子どもたちの成長につながります。
上手なエースがひとりでドリブルで抜いてゴールを量産してチームが勝つよりも、全員の糧になる。そんな姿を目指しませんか。
■ふと気が付いたら、上手くなっていた と実感することが理想
「池上さんのところの練習、子どもの声しか聴こえませんね」
私が主宰するスクールに見学に来られた方たちがよく漏らす感想です。なぜ大人の声が聴こえないか。それは、子どもたちの課題に対しオーガナイズした練習を行ったうえで、子どもたちのプレーから習熟度や理解度を観察しているからです。もう少しストレス(レベル)を上げたほうがいいのか。下げたらいいのか。次のオーガナイズに向けてコーチたちは考えています。
さらにいえば、子どもたちが練習を遊びのようにとらえているか? 私はそこも気になっています。私たち大人はどうしても、こんなことができるようになってくれたらと願います。
そして、そこに向かって練習させます。しかし、実はそうではなく、子どもたちがもっと自由に感じて、判断できる空間を目指したいと思っています。
子どもたちが「ふと気が付いたら、うまくなっていた」と実感してもらうことが理想です。
■今のやり方で優勝できたとしても、問題点は解決しない
また、相談文には「優勝」という文字がたくさん出てきます。しかしながら、今のやり方で優勝できた先には何があるのでしょうか? 恐らく、優勝したとしても、問題点は全部クリアになっていないでしょう。
ご相談文によると、決勝まではいくけれど、終了間際に失点して優勝を逃していることに触れられています。なぜそうなるのか? とゲームの流れだけに注目してしまうと、精神論になりがちです。最後までやり切る精神力がないとか、体力とかの問題にされると、自然と長時間練習になってしまうこともあります。
しかし、スポーツ心理学の本などで最新の学びを得ると、そのような根性論ではないことがわかります。
■試合ごとに一つの課題を追いかけることの方が意義がある
育成年代は、試合ごとにひとつの課題を追いかけることのほうが意義があります。例えば、すごく高い位置でボールを奪ったのに、どうしてシュートにいけなかったのか? そんなところに注意を向けてあげて、次に成功させるための練習を積む。そんなふうにひとり一人の成長につながる練習ができたら、子どもにとってプラスになります。
例えば、育成王国と言われるオランダは、チームでの成績に一喜一憂しないことをコーチに求めます。それよりも、個人個人のつながりやサッカーの成り立ちをいかに理解するか。そこを促進させるため、クワトロサッカーと呼ばれる4人制のゲームを40年近く行ってきました。
ベースにあるのが「一人ひとりを伸ばす」という考え方です。個に特化した育成と言ってしまうと、日本ではドリブルができて足元の技術の高い選手がイメージされますが、そうでないことがおわかりいただけると思います。
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