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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

ボールを奪われない距離感が日本と海外では違う、相手に奪われない適切な距離の取り方を教えて

公開:2023年9月29日

キーワード:FIFA女子サッカーワールドカップなでしこジャパンバルサバルセロナボールを奪う京都サンガ距離感

海外と日本の「ボールを奪われない距離感」が違う。日本の選手がボールを奪いに飛び込んでも奪えない、すぐに交わされてしまう。

海外の選手は、ボールを呼び込んでも相手が詰めてきているのがわかるとワンタッチでパスを出したり、相手を翻弄する。適切な距離感を身に付けさせるにはどうしたらいい? というご相談。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、「適切な距離」についてアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

池上正さんの指導を動画で見る>>

 

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

<<どんな時でも短いパスをつなぐ子どもたち、背後のスペースを突くなど臨機応変なプレーを身に付けさせるにはどうしたらいい?

 

<お父さんコーチからの質問>

こんにちは。私は街クラブでU-12を担当している者です。自分の指導についての質問ではないのですが、池上さんの見解をいただきたく投稿しました。

8月末に、千葉県で「ワールドチャレンジ」というバルサのアカデミーが参加する大会がありました。

過去の大会でバルサと対戦したチームの話を聞いたのですが(※私たちは出てないので)、その時感じた日本のチームとの一番の違いは「距離感」だったと聞きました。日本より相手と対峙するときの距離が広いと。

日本の選手たちがボールを奪いに飛び込んでも奪えない、すぐに交わされてしまう状況だったそうです。

ボールを呼び込んでも、相手が詰めてきているのがわかるとワンタッチでパスを出したり、翻弄されっぱなしだったとのこと。

自分たちは守備の時近づきすぎていると感じた。あれだけ距離を取りながらのプレーは技術や判断に自信があるから出来るのだろう、とのことでしたが、適切な距離の取り方はどんな風に身につけさせればいいのでしょうか。

池上さんはこれまで、ドイツをはじめ海外のプレーも見ていると思いますが、日本と海外の選手の「相手との距離感」について、何か感じたことはありますか。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

こちらのコーチのかたは、すでに正しいことを見抜いていらっしゃいます。

 

■女子W杯でのスウェーデンと対戦した時の日本の姿と同じ

相手からなかなかボールを奪えない。取りに行けばかわされてしまう。少しでも間合いを詰めればワンタッチでさばかれ翻弄される。これは、先の女子W杯でスウェーデンと対戦したときの日本の姿でした。

この話を私が外部指導員を務めている高校サッカー部の先生としました。スウェーデンは、日本の選手がプレスにくると自分がつかまる前にサッとパスを出しました。日本の選手を背中に背負ってるときは無理して前を向きません。もしくは一度後ろに下げ、また中に入れたりと、テンポ良くパスをつないでいました。一見すると日本が回させているようにも映るのですが、ボールを失わないのです。

「取りどころ」というものがない。それは日本の選手も見つけられなかったのでしょう。7対3くらいでスウェーデンがキープしていました。

 

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■日本の中盤がボールを取られずにプレーできた理由

では、日本の攻撃はどうだったでしょうか。日本はスウェーデンがやったように、ビルドアップする段階でそれぞれの選手がもっと早くパスを出さなければいけないと感じました。

例えばセンターバックの熊谷選手。攻撃のとき、ボールをもらうと最低でも2タッチしてからパスを出していたように見受けられました。2タッチで出してしまうと、せっかく逆サイドに展開しても相手に時間を与えてしまいます。スウェーデンからすれば守備の陣形を整える余裕をもらえることになるので、もっとボールを素早くさばけたらチャンスは増えたのではないかと感じました。

その一方で、中盤の長谷川選手が相手からボールを取られずにプレーできた理由は、いつも相手から離れてパスを受けていたからだと思います。よく言われる「オフ・ザ・ボール」ボールがないところの動きの精度が高いのです。相手が厳しくマークしようと寄ってくれば、裏に抜け出すこともできます。

長谷川選手が、相手とフィジカルで競り合うのではなくそういった有効的なポジションがとれるのは、もしかしたら彼女が日本でも他の選手より小柄だからなのかもしれません。体でぶつかっていっても負けてしまうため、相手と離れてプレーする習慣がついた。相手と離れるには、ボールがないときに自分で考えてポジショニングしなくてはなりません。

 

■ボールを取られない「距離感」の正体

いかがでしょうか。上述したようなことが、ご相談者様がおっしゃる「距離感」の正体です。

例えば小学生の指導者からよく聞こえるのは「体をあてろ」「体を入れろ」「(押されても)負けるな」といった声です。そうなるとアタックというものが子どもたちにとって、体を張って、相手を押さえ込んで行うイメージになりかねません。体を接触させることを良しとするコーチングになってしまいます。

もちろん上の年齢になってくれば競り合わなくてはいけない場面も出てきます。が、小中学生ではそういったことを指導する必要はありません。私の知る限り、海外では「体を」という表現はしません。指導者は「足を出せ」と教えます。子どもたちが足を出す距離感を知っているのを踏まえてのことです。見ていると、子どもたちはそこまで近づきません。

 

■体を当てるのではなく、足を出す

京都サンガで育成部長などの仕事をしていたころ、15歳以下の香港代表がやってきました。サンガの中学生たちと試合をすると、香港の子どもたちは欧州の子どもと似ていました。相手の足を踏むファウルが多いのです。体を当てるのではなく、うまく間合いを計りながら足を出す。サンガの子たちとは違うボールの取り方をしていました。 

試合ではサンガが苦戦していました。サンガの中学生は相手に足を踏まれるとファウルをアピールします。しかし「それはボールに行ってるからファウルじゃないよ」と度々審判から説明を受けていました。試合をジャッジしてくれたのはサンガにいた国際審判の方でした。正しく指摘してもらえたのは非常に運が良かったです。

ごく普通の審判であれば、足を踏んだらファウルとしてしまったかもしれません。ボールに当たった後、足を踏んでしまうからです。守備をする側(この場合はサンガの中学生)も、相手がボールにきているのだという意図を理解していなくてはいけません。

 

次ページ:相手の足が届かないところでプレーすること

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取材・文 島沢優子

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