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[いつでも、だれでも、ずっとサッカーを楽しむために]JFAグラスルーツ推進
日本のU-12は8人制だけど、ドイツは9人制 どうして奇数なのか?その理由とは
公開:2019年2月 5日 更新:2019年2月25日
日本サッカー協会(JFA)技術部グラスルーツ推進グループ長の松田薫二氏が、「補欠ゼロ」「引退なし」「障がい者サッカー」を実践しているサッカーチームを訪ね歩くこの連載。今回は特別編と題し、海外のグラスルーツ事情に詳しい識者との対談を行いました。
お相手はドイツのフライブルガーFC U-16で監督を務める、中野吉之伴さんです。ドイツでの指導経験をベースに、育成年代の現状について話を聞きました。
(取材・文:鈴木智之)
■ドイツのU-13が9人制なワケ
松田:中野さんに伺いたいのが、ドイツのジュニア年代の試合環境です。日本はU-12以下に8人制が導入されていますが、それより下のU-10などのカテゴリーでは、どのような試合環境でプレーしているのでしょうか?
中野:ドイツはU-9までは、『ドイツサッカー協会の推奨』という形で、5人制サッカーをしています。
松田:グラウンドの大きさはどのぐらいですか?
中野:大人用ピッチの4分の1を少し狭くしたサイズです。この形だと、大人用のピッチが一面あれば、4箇所で同時開催することができます。
松田:それは効率的ですね。8人制の場合、大人のピッチ1面を半分に分けるので、一度に使えるのは2面まで。2面のピッチでプレーできるのは1チーム8人×4チームなので最大32人ですが、4面を使って5人制でプレーすれば、40人が一度にプレーできますね。
中野:はい。少人数制が導入されたのは、僕が知る限りはU-13が9人制になったのが最初で、その後U-11が7人制、U-9が5人制となってきました。
松田:どういう経緯で少人数制が導入され、9人、7人、5人という人数分けがされたのでしょうか?
中野:11人制のピッチでサッカーをすると、子どもの筋力や体力的な負担が大きく、ボールに触る回数もそれほど多くはありません。子どもたちがやりたいようにサッカーができないので、ピッチのサイズを狭くして、9人制でやってみたらどうだというのが最初だったと思います。それが年代ごとに細分化され、子どもの成長や発育、発達の度合いに合わせた、ちょうどいいピッチサイズということで、徐々に狭くなり、U-11が7人制、U-9が5人制という風になってきました。ただし、U-9に関していうと「ドイツサッカー協会推奨」が5人制であって、必ずしもそれをしなければいけないわけではありません。地域によっては、U-9でも7人制でプレーする試合もあります。
松田:日本のU-12は8人制ですが、ドイツは9人制、7人制、5人制とプレーする人数が奇数です。なぜそうなったのだと思われますか?
中野:ドイツだけでなく、ヨーロッパは9人制が主流ですよね。ヨーロッパのコーチ達と話をすると、最終的にサッカーは11人でプレーするスポーツなので、そこから逆算して、各ポジションの選手を減らしていくと、奇数の方が調整しやすいと言われています。11人のシステムからセンターバック1人、ボランチ1人を削ると、9人になりますよね。
松田:2人ずついるポジションから、1人減らすわけですね。
中野:最終的に11人制のサッカーにつなげていくことを考えると、奇数の方が11人のサッカーに結びつけやすいのかなと思っています。
■U-10年代で試合に出られず帰る事なんてない
松田:U-10の大会形式は、どのような形ですか?
中野:リーグ戦ではなく、1DAYの総当たり戦が多いです。1試合10分で、地域の5~6チームが集まって実施します。1つのクラブからU-8とU-9のチームが参加して、最初にU-9のチームが試合をして、次にU-8のチームという形で交互に行います。その合間に休息をとる形です。ドイツの場合、クラブハウスや客席に食事をする場所があるので、保護者がソーセージやポテトを焼いて売っていて、それを食べたりしています。1つのクラブから複数のチームが参加できるので、試合に出られずに帰ることはまずありません。
松田:そのような環境があるのは良いですね。試合のゴールはどのようなサイズのものを使用しているのですか?
中野:少年用を使っているのですが、ゴールの中、高さ2mのところにロープを張って、ゴールを作ることもあります。
松田:高さに制限をかけるのはいいアイデアですね。ボールは4号球ですか?
中野:U-10は4号球ですが、U-7、6の子は3号球で試合をすることもあります。
■ドイツサッカー協会が規定する子どもたちの成長段階に応じた適切な環境とは
松田:話を聞いていると、子どもたちの発達・発育に合った形で、トレーニング効果があり、ボールにたくさん触れるように工夫している様子が伝わってきます。日本はU-12以下、JFA管轄の公式戦は8人制ですが、U-10以下、小学校低学年は小さなピッチで5人制にするなど、ボールに触る機会を増やすとともに、サッカーをより楽しめるサイズにした方が良いのではないかと思っています。
中野:そうですね。ドイツサッカー協会では、子どもたちの成長段階に応じて、適切な試合環境を作ることができるように、ピッチの広さ(低学年では35m×25m)、人数の基準を定めています。ただし、あくまでも一つの基準であり、最終的にはそれぞれの州協会が自分たちの地域に合った形で運営していきます。明確なマニュアルがある一方で、それを適切に運用していくという流れになっています。
松田:大会に参加するチームのエリアはどのぐらいですか?
中野:車で10分から20分圏内のチームです。クラブが送迎することもありますが、基本は保護者が車で連れて行きます。この大会形式だと、所要時間が長くて2時間半程度なので、午前中に大会に出て、午後からは家族や友達と遊びに行くことも多いですね。
松田:日本はようやくU-12年代にリーグ戦が導入されたところで、次にすべきはU-10などのプレー環境の整備だと思っています。適切な試合環境でプレーすることで、サッカーの楽しさを感じ、もっとうまくなりたいという気持ちが湧いてきますよね。そもそも試合数が少なく、その中でも試合に出られない子がいるのが現状なので、低学年の試合環境については、もっと皆で考えていかなければいけないと思っています。
後編では、大会会場での日本との違いやプロになるためのパスウェイ(道のり)、怒鳴るコーチの対応についてご紹介します。
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