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子どもの本気と実力を引き出すコーチング

言い方ひとつでこんなに変わる! 責めワードにもやる気アップにもなる「なぜ?」の使い方

公開:2019年4月23日

キーワード:コーチングゴーレム効果ピグマリオン効果ミスのイメージ子どもの実力子どもの本気心理学指導者自己肯定感

自分の指導していることが子どもにうまく伝わらない。「なぜ出来ないんだ」と言ってしまうあなた。人間の本能と心理を理解すると、ガラっと子どもを見る目が変わります!! するとあなたの指導力もグッとレベルアップします。

4月6日に発売された「子どもの本気と実力を引き出すコーチング」(内外出版社)より、「なぜ出来ないの?」ではなく「どうすればできる?」のか、失敗を怖がって無意識にかけてしまうブレーキの外し方、緊張のコントロールなど、現代の子どもたちのコーチングに必要なスキルと、ケガの応急処置など大人が知っておかなければならないことをピックアップしてご紹介します。

「子どもにこうなってほしい」と思っているだけでは現状は変わりません。
あなたが変われば子どもも変わるのです。指導者だけでなく、保護者の方も普段の会話に取り入れるなど参考にしてください。

第二回目の今回は、国際武道大学でスポーツ心理学、コーチング科学の教育・研究に携わる前川直也准教授による、コーチングの具体的な声のかけ方をご紹介します。

<<前回:「教えすぎ」「オーバーコーチング」はなぜ起こる!? 子どもの思考力を伸ばすコーチング

■「なぜ?」と言われると人は心を閉ざす

「なぜできないの」「なぜやらないの」と言っていませんか?

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「なぜ」は問いかけているようで責める言葉になっているのです。

コーチングに必要なのはWhy(なぜ?)ではなくHow(どうする?)です。

「なぜできないんだ」ではなく「どうすればできるのか」という方法論を与えることです。「なぜできないんだ」「なぜやらないんだ」「何度言えばわかるんだ」と言いたくなる気持ちはわかります。そこで根負けをしないことです。

「なぜ」と言われると間違いなく人は心を閉ざします。「なぜ?」という問いかけは質問の形をとってはいますが、実は相手を責める言葉になっています。「なぜ?」と問われると責められている気分になりせんか?

そういう問いかけへの返答の多くは「だって、○○だから」とできない理由を述べる言い訳になりがちです。「どうすればできるようになるか」という建設的なものではありません。

だったら「どうしたらいいと思う?」「次どういう風にしよう?」と聞いてあげて、相手に考えさせ、行動を促す方が建設的です。

「なぜ?」という言葉も使い方によっては効果を生み出します。それは、相手が選択したことや、これから挑戦したいと思ったことに対しての問いかけです。

「なぜそれをやりたいと思ったの?」と聞くことにより、選択の根拠、挑戦しようとする意志を述べさせることで本人に自覚、再確認させることができます。

■打ち消しの言葉の言葉は届かない

「今日は、雨が降らなかった」

この言葉から、どういったことをイメージされますか? 「晴れ」をイメージできましたか? おそらく雨の方をイメージしたはずです。

人間というのは言葉の最後にある打ち消しの言葉にまで目がいきにくく、「雨が降ら」までしか頭に入らないものなのです。

「今日は寒くない」と言ったら、暖かい日なのに「寒い」をイメージしてしまう。「今日は暖かい」と言えば「暖かい」をイメージするのです。打ち消しの言葉を用いて説明すると、打ち消しでない意味で脳が理解してしまうのです。

これを指導に置き換えてみたら、「ミスを恐れるな」「手を抜くな」といった打ち消しの形にしないことです。「ミスを恐れるな」ではなく「積極的にいこう」。「手を抜くな」ではなく

「最後まで力を出し切ろう」という声掛けをしてください。

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「ミスを恐れるな」と打ち消しの表現でなく「積極的に行こう」などに言い換えましょう

 

例えば試合の目標として「ミスが多いから気をつけよう」と毎回言う。言われ続けると「ミス」という言葉がインプットされます。「ミス」をイメージするようになってしまうのです。

これをゴーレム効果と言います。人に対して悪い印象を持って接することによって、その印象が良い印象を打ち消して悪い影響のほうが勝ってしまい、実際にその通りになってしまうことがあるのです。

例えば教師が生徒と接する際に、この生徒は成績の良くない生徒だと思いながら、この生徒に対して成績の上がる見込みがない期待度の低い状態で接すると、その期待通りに生徒の成績が下がってしまうのです。「君は出来の悪い子だね」と言われ続けたら「自分は出来が悪い」と思い込んでしまいます。だから目標として掲げるものは、よりポジティブなものにする必要があります。

他者から期待された通りの成果を出す傾向があるのですから、積極的にほめて自己肯定感を付けさせるように指導する。これをピグマリオン効果といって、人は他者から良い期待をかけられると、その通りの成果を出す傾向があるのです。

「ミスをするな」と言ったらミスに意識がいってミスをする。だったら「慎重にいこうね」という言葉を使った方がいい。「シュートを外すな」と言ったら、外れることを意識してしまう。その時は「枠を狙っていこう」と言い方を変えましょう。

次回は緊張している子どもにどんな声かけをすればいいのかご紹介します。

<<前回:「教えすぎ」「オーバーコーチング」はなぜ起こる!? 子どもの思考力を伸ばすコーチング

【著者プロフィール】
前川直也(まえかわ・なおや)
1977年生まれ
国際武道大学体育学部准教授、同大学大学院武道・スポーツ研究科准教授  
博士(スポーツ健康科学)
著書...「公認柔道指導者養成テキストA指導員」公益財団法人全日本柔道連盟
その他...日本傳講道館柔道六段、全日本柔道連盟公認Aライセンス審判員、全日本柔道連盟公認柔道指導者A指導員、公益財団法人日本スポーツ協会公認柔道コーチ、国際武道大学柔道部コーチ

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