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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2015
「おまえの日じゃなかった。明日またがんばろう」FCバルセロナの子どもたちを支える大人の役割
公開:2015年9月 9日 更新:2021年1月27日
キーワード:サポートジュニアサッカーワールドチャレンジ親
U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジのバルセロナに帯同しているスタッフ。バルセロナの選手へのサポートはどうなんだろう? 会場に足を運んだ人の中には、アップやコーチ、スタッフの声がけに注目していた人もいるかもしれません。バルセロナの帯同スタッフのなかに、かなり年齢を重ねた二人の人物がいたのを覚えている方はいるでしょうか? 試合に向かう選手たちの頼もしい後ろ姿を見ながら、優しい眼差しでゆっくりと追いかける姿、試合後引き上げてくる選手たちをとびきりの笑顔で迎える姿。彼らが子どもたちに接する姿は「サッカーコーチ」というより「お父さん」や「おじいちゃん」といった方が相応しいほど、慈愛に満ちていました。
過去の大会でも姿を見かけたこの二人が気になったサカイク編集部は、大会期間中に彼らに話を聞くことができました。彼らの正体は? 役割は? そこにはバルセロナというチームの奥深さと、才能やプレーだけでない子どもたちの教育に対する真摯な考え方がありました。(取材・文 大塚一樹 写真 鈴木蹴一)
■年を重ねたスタッフの役割は?
「このポスターの子だよ。この子はまだ慣れていなくて大変だったんだ。懐かしいなあ。このポスターもらえる?」
二人に話を聞いた場所の目の前に、今回の大会のポスターが貼ってありました。そこに写っていた選手に気がつき、インタビューの前に思い出話が始まります。
「あの子は小さなクラブから移ってきて、この頃はまだチームにも慣れていなかったんだ。それで日本ではずいぶん長い時間彼と話したよ。懐かしい」
こう話すのは、チームのホペイロを担当するジョアン・ガソル・ロドリゴさん。ホペイロとは備品や用具を揃えたりする役割だそうで、ロッカールームで選手と長く接する時間の長いジョアンさんは、自然と選手の心のケアもするようになったと言います。
もう一人のエミリ・コール・グイシェンスさんはこのチームのコミッションという立場。
「ピッチの中でのことは監督やコーチに任せているが、ピッチ外のことは私が責任者。誰かがケガをすれば私が病院に連れて行って、本国と連絡を取り、適切な判断をする」
エミリさんによれば、コミッションはチームのイメージ担当で、このチームが“バルサらしく”振る舞っているかどうか、または対外的に尊敬されるような態度やプレーで過ごしているかを指導する立場にもあるそうです。
■バルサの誇りに忠誠を誓った二人
「この大会にしてもみんなバルサを背負ってきている。ちゃんと並ぶ、大会スタッフの指示に従う、落ちているゴミを拾う、みんな当たり前のことだけど、そういうことをケアするのが私の役割」
エミリさんがこう言えば、ジョアンさんも続けます。
「ロッカールームでタオルをたたむとかね。どう使えばハーフタイムでまたすぐに取り出せて、使いやすいか。食堂でご飯を食べ終わったら椅子を戻す。次に使う人のために戻しておかなきゃ。そういうことだってサッカーと関係ないとは言えないんだ」
二人は、いわば生活面を支えるコーチ。選手との距離が近いだけに、相談を持ちかけられることもあるそうです。
「あのポスターに出ている選手もそうだけれど、バルセロナというクラブで激しい競争にさらされている彼らは、いつもプレッシャーにさらされているんだ。そのプレッシャーをなくすことはできないけれど、プレッシャーとうまく付き合う方法を一緒に考えてあげることはできる。だから、ロッカーではできるだけ声をかけて、選手の心のサインや悩み事の種を見逃さないようにしているんだよ」(ジョアンさん)
用具などを揃えるジョアンさんは、特に選手と接する機会の多いスタッフです。こうしたスタッフが選手のメンタルケアを担うのがバルサの伝統で、これはどのカテゴリでも同じだと言います。
「トップチームにもジョアンや私のような役割のスタッフが必ずいます。これはバルサの哲学の一つと言っていいでしょう」
エミリさんが教えてくれたことで驚いたのは、その役職の人たちはほぼリタイアした元選手、元指導者で構成されているということです。
エミリさんもジョアンさんもバルサで選手としてプレーした経験があり、さまざまなクラブで指導者として働いたあと、バルサに戻ってきたと言います。驚くのは彼らが“無償”で働いているという事実です。
エミリさんはこう言います。
「そう。給料はもらっていないよ。これは名誉のあることなんだ。指導者としてのキャリアを終えて、また愛するバルサで働ける。クラブを愛しているから戻ってこられて嬉しいよ」
ジョアンさんも、若い選手たちに触れることで、未来のバルサを見続けられる。「バルサに所属する子どもたちの“第二のお父さん”になれれば光栄だ」と目を細めます。
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取材・文 大塚一樹 写真 鈴木蹴一
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