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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017
アーセナルFCが日本に残した「知られざる足跡」から見えた、世界との差を埋めるヒント
公開:2017年9月11日 更新:2021年1月27日
今年も日本の選手たちに“世界”を体感させてくれたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。大会はバルセロナFCの連覇で幕を閉じましたが、勝敗やピッチの中だけでなく、毎回たくさんの学びがあるのがこの大会の素晴らしいところです。ジュニアサッカーワールドチャレンジを「サカイク目線」で取材したコラムをお届けします。
第1回は、バルセロナFCと並んで大会の目玉として招待されたアーセナルFCが日本に残した「知られざる足跡」についてご紹介します。(取材・写真:大塚一樹)
■アーセナルFCとアーセナルスクールが合同練習
大会では、初めて体験する日本の暑さに順応できないなどコンディション不足の影響もあり下位トーナメントに回るなど、思うような結果は得られませんでしたが、競技結果だけでなくこの大会でしか得られない体験を生むのがワールドチャレンジの意義でもあります。
今回の来日は、はじめての大掛かりな遠征を経験したアーセナルの選手たちはもちろん、日本の子どもたちにも決して少なくない影響を与えていました。
U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017に参加するために日本を訪れたアーセナルの選手たち。大会開幕前日会見を終えて向かったのは、北市川フットボールフィールド。目的は大会に向けての調整……、だけではありませんでした。千葉県市川市にある北市川フットボールフィールドは、アーセナルと提携を結んでいる『アーセナルサッカースクール市川』の本拠地でもあります。
「日本のアーセナルの子どもたちに本物の力を見て、知ってもらいたい」
アーセナルサッカースクール市川の幸野健一代表は、今回のアーセナル招聘にこんな期待を抱いていました。
「自分たちのアイデンティティーのもとになる“アーセナル”に触れることができるのは、スクール生にとっても意味がある」
この日ピッチでは、調整のための練習だけでなく、アーセナルサッカースクール市川、アーセナルサッカースクール東京の生徒たちとの合同練習が行われました。
■アーセナルがアーセナルであるために「アーセナル・ウェイ」とは?
日本であのアーセナルのエッセンスが学べるサッカースクールに通えるなんていい時代が来たものだと思いますが、アーセナルを名乗る以上、それ相応の体制が求められます。幸野代表によればイングランドのスクールディレクターが、世界各地にあるスクールを回って、「アーセナル・ウェイ」を伝えているのだとか。
「攻撃的でテクニカルな、アーセン・ベンゲルがやっているサッカーですよね。アーセナルのフィロソフィー(哲学)に沿った指導が求められます」
もう一つ、幸野代表が挙げたアーセナル・ウェイが、アーセナルの選手としてのプライド、人間性を育てるための哲学でした。
「イングランドのプレミアリーグでも、日本でも現実的にすべての選手がプロサッカー選手になれるわけではありません。ただ、アーセナルサッカースクールでプレーすることで、リーダーシップやポジティブなマインド、チャレンジ精神や組織で活躍するための素養を身につけてほしい。サッカーにはそういう力があると思っています」
今回、12歳以下のアーセナルFCを率いたサイモン・コプリー監督も「人間性や社会性も含めて選手たちの成長をサポートしている」と、アーセナル・ウェイが単にサッカーの技術やプレースタイルだけを指すわけではないことを教えてくれました。
アーセナル・ウェイの名のもとに集まったイングランドと日本の子どもたちの合同練習にも、こうした指導者哲学がしっかりと見て取れるシーンがありました。
イングランド、日本、両方の小さなアーセナルの選手たちが入り乱れての練習で目に止まったのは、イングランドからやってきた選手たちの練習に取り組む姿勢でした。通訳がいるとは言え、慣れないトレーニングに戸惑う日本の子どもたちに、身振り手振りで手順を教えたり、まだそのセットをこなしていない選手がいれば手を挙げてコーチに「彼らはまだこのトレーニングをやっていないよ」と進言したり。
ボールを使ったトレーニングが始まって少し経った頃。二人一組で対面し、アウトサイド、インサイドの両方でボールをコントロールしてからパス交換というトレーニングが始まったときのことでした。
「OK,Well done!」
ボール扱いでは遜色ないどころか、むしろ上手に見える日本の選手たちが、きれいにボールを収め、コントロールすると、イングランドの選手が親指を立て、拍手を送りこんな言葉をかけたのです。
パートナーになった日本人選手も、はじめのうちは戸惑った表情を見せていましたが、数回同じことが繰り返されるうちに、アーセナルの選手が成功すると手を叩いて称える素振りをするようになりました。
文・写真:大塚一樹
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