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「子どもを伸ばす親は、これをする」高妻教授の保護者メンタル強化論
安易なコーチ批判より、指導効果を高める「保護者のポジティブ思考」
公開:2012年8月10日 更新:2012年8月22日
「うちの子が上達しないのは、コーチの教える技術が問題かも…」。長い間お子さんを育ててきた皆さんだけに、選手を育成する指導者のやり方に、疑問を感じる時もあるでしょう。しかしあれこれと選手たちの前で口にし、保護者がもう1人の指導役になったら?選手はどちらを向けばいいかわからず、トラブル続出は間違いありません。「そんな風潮が広まれば、指導が徹底せずに、個々の成長は大幅に遅れるでしょうね」。スポーツというチーム活動は、子どもの自立を促すと同時に、保護者も子どもから適度に距離を置くいい機会。高妻先生に「コーチや監督に子どもをまかせ、自分も子離れするメンタルトレーニング」についてお聞きしました。
■保護者は子育てのプロ。でも選手を育てるのはコーチ
保護者がいいと思った言動が、実はコーチや監督の指導の妨げになっている。そんなことが、最近よく起きているのだと高妻先生は言います。例えばこんなケース。
【指導者とのこんな会話や対応に要注意】
子どもの試合中、あなたは自分なりに応援しようと、子どもに対して指示を出し、きつめの言葉でも何とか励まそう、とは考えていないでしょうか。「○○君。そこはもっと前に出て、積極的にパスを受けにいこうよ!」「あ-、それ違うだろう。お前はその位置でボールを持つと、相手のプレッシャーに負けて、すぐパスするから駄目なんだよ」……。
「自分の子どものことですから、熱心に取り組む気持ちはわかります。しかし監督やコーチを差し置いて、保護者が技術や戦術を指導するのは、やはり少し行き過ぎではないでしょうか。もちろんチームごとに応援のやり方は違って当然です。保護者と指導者の皆さんで、どんな応援が望ましいと考えるのか、これ以上は止めた方がいいだろう、といったガイドラインを決めるといいのではないでしょうか」。
こうした場面で保護者の指示通りに動いた子どもは、チームの戦略からは外れる可能性も出てきます。逆にコーチの言葉に従うと、家庭で「どうして言うことを聞かないんだ」と責められるでしょう。結果的に子どもを板挟みにする保護者の言動は、とても「子どもの成長を考えた」とはいえません。また指導ではなくても、「違う」「駄目」といった個人の観点や、ネガティブな感想ばかりの声援も要注意です。否定的な言葉を聞くと、次回から注意しようと心が萎縮し、行動はさらに消極的になるからです。せっかく応援するなら、「さっきはナイスプレーだった」「みんな頑張れよ」などの言葉で。…少し物足りない、常識的な言葉かも知れませんが、チーム全体をポジティブに応援する姿勢を大切にしてください。
■コーチを信じる選手は伸びる、と保護者から伝えよう
なかなか成果が出ないお子さんを、気づかっているのかも知れません。ご家庭でコーチや監督について、こんな話をすることはないでしょうか。
【指導者を批評するこんな言葉に要注意】
子どものチームが試合で負けた日、試合運びや選手の配置などについて、監督の考えに賛同できないからといって、コーチや監督の指導力を批判していないでしょうか。「あのコーチは、試合でもお前たちにわかりやすい指示が出せないし、何を考えているのかな。サッカーをよく知らないようだし、誰かに別の人に代わってもらった方がいいんじゃないか」……。
「コーチは試合全体の流れ、さらに選手の成長なども考え、一人ひとりに指示を出し、アドバイスしているはずです。ひょっとしたらその試合は、劣勢になっても盛り返せるメンタルの成長、技術力向上などを重視していたかも知れません。数多くの試合のうちの1試合、また試合の中でのある場面だけを取り上げ、『うまくいってない』『監督の考えがわからない』と批判するのは、努力や過程を評価せず、結果にこだわりすぎる見方だと思いますね」。
保護者が安易にコーチや監督を批判すると、子どもまで『うちのコーチや監督は、たいしたことないんだ』と思い始めます。次第に練習に集中しなくなって、熱心に練習を続ける周囲の子どもたちと、どんどん差が開いていくことも。さらに学校では教師を軽視し始めて、学業にも悪影響が出てしまう……。そんな残念な結果につながることも多いと高妻先生は言います。
とはいえ、指導者の言葉に全て従うだけでは、納得がいかないと感じる方も多いでしょう。監督やコーチを信頼して、子どもを預ける準備として、保護者はどう行動したらいいでしょうか?
「例えばシーズン開始前に、保護者とコーチ、さらに選手も含めて、チームの活動目標、練習のやり方などを確認するミーティングを開くのはどうでしょうか。十分に信頼できると手応えをつかめたら、保護者の皆さんも少し安心できると思います」。
コーチや監督を信じて、一生懸命努力を続ける選手は伸びる。それは今回のオリンピックで活躍した選手たちを見ても感じられたことではないでしょうか。
「子どもを成長させる、保護者と指導者のいい関係」
高妻容一(こうづまよういち)//
1955年生まれ。東海大学体育学部教授。国際メンタルトレーニング学会、国際応用スポーツ心理学会など多数の学会に所属。1994年にはスポーツ心理学を背景としたメンタルトレーニングの組織「メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会」を設立し、日本でのメンタルトレーニングの正しい理解と情報交換を目的に活動を続けている。
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取材・文/山辺孝能 写真/サカイク編集部(2012全日本少年サッカー大会より)
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