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代表選手を分析! タイプ別で育てる兄弟構成別成長法

スーパースターは第二子以降?身近な目標を追いかけ大成する中間子

公開:2014年2月17日 更新:2014年2月24日

キーワード:成長

兄弟、姉妹構成に応じた成長方法、それぞれに効果的な育て方を探る連載の3回目は日本代表の大半を占める次男、第二子、中間子の成長方法について見ていきましょう。
 
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■日本代表の有望株 次男、次女はスーパースター?

連載1回目の日本代表メンバー兄弟姉妹の構成を見るまでもなく、次男、次女や上の兄弟がいる子どもはスポーツ選手として大成するという例が多く見られます。現代のスーパースター、メッシにもクリスチアーノ・ロナウドにもお兄さんがいます。過去の日本代表を遡って見てもざっと見渡す限り純粋な長子は田中マルクス闘莉王選手くらい。あとはほとんどの選手が兄か姉のいる環境で育っています。さらに言うなら、そのほとんどが兄弟、姉妹でサッカーをやっている選手たちなのです。
 
 小さな子どもたちにとっては、精神面、身体面の成長を考えると、たった1年の違いも大きな違いです。弟や妹たちは、兄の練習についていったことがきっかけでサッカーをはじめて、兄の背中を追い、一緒に練習をするなかで知らず知らずのうちにレベルの高い競争に身を投じているケースが多いのです。
個人心理学では、長子は年下の兄弟、姉妹にとって生物学的に先に生まれた、能力の高い人間で、自分がまだ克服していない困難を克服している目標、追い越すべき指標だそうです。劣等感を抱いて生まれてくる中間子は優越性の追求として物事に対し熱心な取り組みを見せ、猛練習や努力を惜しまないという考え方ができそうです。
 
 

■身近な目標を追いかけることで大きく成長

 身近に具体的な目標がいる。しかも身体的にも技術的にもアドバンテージを持っている存在を追いかけることは、与えられた以上の課題を克服できる、柔軟な子どもたちにとっては大きく成長するチャンスです。サッカーの例でも実際に実績としては兄を越えていても、尊敬する選手に兄を挙げる例はいくらでもあります。スポーツに枠を広げれば、バスケットボール界のレジェンド、世界的に有名なマイケル・ジョーダンの背番号23が、お兄さんのラリーがつけていた45の半分に由来していることは広く知られています。
 
「兄のようにうまくなりたい」
 
 バスケットを教えてくれた兄にどうしても勝てなかったマイケルは、毎日のように自宅裏のコートでラリーに1on1をせがみました。優れたアスリート、サッカー選手はその多くが究極の「負けず嫌い」ですが、生まれついて競争の環境にさらされる弟、妹たちが実力を磨くのはごく自然なことでしょう。
 
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■なでしこは「兄のおかげ」が大多数

 男子日本代表の例を挙げてきましたが、女子サッカーはどうなのでしょう? なでしこジャパンの兄弟、姉妹構成は調べきれない選手も数人いたため表にはまとめませんでしたが、そのほとんどが「サッカーをやっていた兄の影響」でサッカーをはじめています。
 W杯優勝メンバーでは確認できただけで21人中過半数が兄のいる妹。ロンドン五輪メンバーになるとテレビ局調べで18人中17人が年上の兄弟を持つというデータもありました。
 現在タイ・プレミアリーグでプレーする永里源気選手を兄に持つ、大儀見(永里)優季選手、グルージャ盛岡の高瀬証選手を兄に持つ高瀬愛実選手(彼女は5人きょうだいの末っ子だそうです)などプロ選手を兄に持つ選手もいますし、大野忍選手のように「兄にサッカーを教わった」という選手も多くいます。
彼女たちがサッカーをはじめた頃は女子がサッカーをやるということ自体が珍しかったこともあり、現在はまた違った状況だと思います。それでもフィジカルに優れる男性を追いかけてきた彼女たちは、究極にブラッシュアップされた中間子と言えそうです。
サッカーに限らず、才能のある子どもたちを上位の環境で育て、その環境に慣れさせることで成長を促す「飛び級」というアプローチがありますが、年上の兄弟を持つ彼や彼女たちは日常のなかで飛び級を体験しているわけです。
 
 

■とはいえ、放っておいては育ちません!

「真ん中の子ども放っておいても育つ」なんだかぞんざいな扱いを受けることの多い中間子ですが、もちろんそんなことはありません。上下に兄弟、姉妹がいる子どもは空気を読む力や協調性に優れ、人間関係のポジション調整をするのがうまいと言われています。
このことがチームスポーツであるサッカーに有利という側面もあるのですが、こうした特性を把握しつつ、同時に秘めている競争心や粘り強さを引き出すためには、親は褒めすぎず、きつく当たりすぎず、勇気づけを行う必要があります。
 
 現状の統計では圧倒的に多数の有能な選手を生み出している年上の兄弟がいる環境。この環境をうまく活かせば、サッカーの才能を開花させることも夢ではありません。
 お兄ちゃんたちに混じってプレーしようとするわが子は身体の大きさも違い、ときに危なっかしく見えることもあるかもしれません。
そんなときに「危ないから」「まだ早い」と言って、同学年の子どもたちの環境に戻したり、兄弟たちに手加減をさせたりすると、せっかくの成長のチャンスを奪ってしまうことになりかねません。
 
「性格は環境が作る」と言いますが、同じ兄弟構成で生まれても、まったく性格や適性の違う大人になることの方が多いと思います。今回ご紹介している成長方法は「うちの子は長男だから、次男だから、一人っ子だから……」というあらかじめ決められた「運命論」ではなく、環境に沿った「伸びる芽」を育ててあげる方法を考えるきっかけになるものだと思ってください。
 
 次回は近年注目を集める「一人っこ」について。スポーツには不向き、子育てが難しい、わがままになりやすいと長年言われてきた一人っ子ですが、どうやらそういう認識は間違っているようです。年々増える一人っ子はむしろ適切に成長の機会を与えれば思わぬ力を発揮する、無限の可能性を秘めた逸材らしい……。
連載の最後は、現日本代表には一人もいなかった一人っ子の可能性と成長法についてお届けします。
 
 
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)

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