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イタリアのサッカー少年が蹴球3日でグングン伸びるワケ
第1回 あなたのお子さん、ちゃんとサッカー"遊んで"ますか?
公開:2018年11月26日 更新:2018年12月14日
朝練なし、居残り練習なし、ダメ出しコーチングなし、高額な活動費なし。ワールドカップで4回の優勝経験があるイタリアの小学生は蹴球3日でグングン伸びる。カルチョの国の少年たちと日本の育成現場は何が違うのでしょうか。
ロベルト・バッジョにほれ込みイタリアに渡って20年、現在は14歳の息子のサッカーライフを通じ、イタリアのサッカー文化を日本に発信する筆者が送る、遊びごころ満載の育成哲学とイタリア流ストレスフリーな子育てを描いたサッカー読本「カルチョの休日 -イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる-」から、内容を少しだけご紹介します。
(テキスト構成・文:宮崎隆司)
■イタリア人は「サッカーを食べる」
イタリアに暮らせば、きっと誰でも簡単に「サッカーは世界の共通語」という言葉の意味がわかるでしょう。
北はロンバルディアから南はシチリアまで。イタリアの街々では、いたるところにある公園や教会の敷地に必ずと言っていいほどサッカー場があります。もちろんそれは私が暮らすフィレンツェも同じで、そこでは1年365日、多様な人種・年齢の"ジョカトーレ(選手)"がボールを蹴り合い笑い合う光景が広がっています。
「サッカーを食べて生きている」
イタリア人のサッカー好きは、そんなふうにも表現されます。憧れのロベルト・バッジョを追いかけ、単身この国に移住して以来20年あまりを過ごした私も、イタリア人たちのサッカーにかける情熱には日々驚嘆させられることばかりです。
私はイタリア移住後、サッカージャーナリストとしての活動を始めました。そして現在、日本人の妻と子ども2人の4人家族でフィレンツェに暮らしています。こちらで生まれた息子は3歳のとき、地元の教会のサッカー場で初めてボールを蹴りました。こうした人生最初のキックをイタリア人は"プリミ・カルチ(最初のひと蹴り)"と呼びます。
鐘の音と子どもたちの笑い声に包まれるオラトーリオ(教会教区)のサッカー場。
■広場の"移民ワールドカップ"
私の自宅の近くにあるダゼーリオ広場という公園に、ボロボロのネットに囲まれた小さなサッカー場があります。使用料は無料。誰の許可もいりません。6歳から地元の街クラブでサッカーを始め、今では14歳になった私の息子も、クラブでの練習がない平日の夕方になると、そこでよくサッカーをして遊びます。行けば必ず誰かがボールを蹴っているので、わざわざ待ち合わせする必要もありません。
ここでボールを蹴っていると、うれしい出来事に遭遇することもあります。セリエAで活躍するフィオレンティーナの有名選手がふらっと広場に立ち寄り、子どもたちと一緒に遊んでくれたりします。このあたりの人と人との距離の近さは、イタリアならではです。
散歩の途中でダゼーリオ広場に立ち寄った元セネガル代表FWパパ・ワイゴ(当時フィオレンティーナ所属)。さすがのテクニックで子どもたちの目を釘付けにしていた。
ダゼーリオ広場に集まる人々は、年齢はもちろん国籍もまたバラエティに富んでいます。地元のイタリア人はもちろん、日本人(つまり息子)、ブラジル人、スペイン人、アルバニア人、それにアフリカや東南アジア各国の人々など。気がつけば本気モードのゲームが始まります。
さまざまなルーツを持つ人々が集うダゼーリオ広場のサッカー場。
ダゼーリオ広場の"移民ワールドカップ"。それは見ていて飽きることがありません。まず、草サッカーといっても勝利への執着心はすさまじく、誰もがゴールを決めることに命を懸けているかのようです。至近距離からミサイルのようなシュートを放つので、キーパーはたまったものではありません。
国民性の違いがプレーに如実に表れるのも、面白いところです。
ボール扱いが柔らかくて、いつだって綺麗にパスを通してみせるのがスペイン人。でも、テクニックを過信しているのか、ちょっと狡猾さに欠けるのが玉に瑕(きず)です。
逆に動きに硬さが見られるのがイタリア人。スペイン人ほどテクニックはありませんが、反面、とてもずる賢いプレーをします。
一番上手いのはブラジル人。彼らは思いもよらない動きを平然とやってのけ、それでいてずる賢い。つまり無敵です。広場の常連にフランシスコというブラジル人のおじさんがいますが、この人が加わるとゲームは途端に生き生きと動き始めます。
■ブラジル人はなぜサッカーが上手いの?
ダゼーリオ広場の移民ワールドカップは、私に大切なことを教えてくれます。
それはサッカーの上手さは、どれだけボールで遊んだかによって決まるということです。ブラジル人のフランシスコがひときわ上手く、誰よりも抜け目ないのは、きっと誰よりもボールで遊んできたからでしょう。
私は今まで多くのブラジル人と接してきましたが、彼らほどボールで遊ぶ人種をほかに見たことがありません。ブラジル代表のネイマールやマルセロ、ダニエウ・アウベスといった達人たちは練習中に華麗な足技で張り合ったり、股抜きを仕掛けてみたりと、とにかく遊び心が旺盛です。彼らにしてみれば、サッカーボールで夢中に遊んでいたら、いつの間にか世界の頂点に立っていたという感覚なのかもしれません。
サッカーが上手くなるには、何よりも遊ぶことが大切。そのことは、サッカーを「する」という動詞を見れば一目瞭然です。
イタリア語ならgiocare(ジョカーレ)
英語ならplay(プレー)
フランス語ならjouer(ジュエ)
スペイン語ならjugar(フガル)
ポルトガル語ならjogar(ジョガル)
これらはすべて「遊ぶ」という意味の動詞です。
イタリアの大人たちのサッカー少年少女への接し方は、日本とは考え方が異なります。具体的にどう違うかをご紹介します。
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