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池上カップ開催レポート
サッカーをもっともっと楽しめるように。「池上カップ」を通して、池上正コーチが伝えたかったこと。
公開:2017年12月 5日 更新:2021年1月27日
■大人が離れた時こそ、子どもは力を発揮する
池上さんは、「サッカーは、みんなで楽しむもの」という考えが根底にあるために、パス、つまり味方を使うことを、「サッカーの入口にしてほしい」という思いがあります。今大会を通して、池上さんはサッカーのそうしたシンプルな楽しさを伝えていました。
それは、子どもたちに対してだけではなく、もちろん、指導者や保護者に向けたメッセージでもありました。だからこそ、大会中、コーチ陣を集めたトークセッションや、保護者とコミュニケーションを図る質疑応答タイムの時間も設けられていました。
その内容も非常に示唆に富んだものなので、改めて記事としてお伝えしたいと思いますが、今大会を通して、指導者や保護者が気がついたこともたくさんあるようです。
試合中、各チームの指導者は、池上さんと一緒に子どもたちの戦いを見守っていました。普段であれば指示を出すような場面でも、声を掛けることはしません。「全然、ルールを守れてないな......」、「周りを全く見れてない......」と、心配する声がもれます。すると池上さんは、そういう戦いを見ながら、「あの子は、パスを出して止まってしまっていますよね。でも自分が行けば、2人で攻めることができます。じゃあ、そういう時にどうするのかというと、考える材料を与えてあげたらいいと思います。そのうちのどれを選ぶのかを考えさせるような促し方がいいのではないでしょうか」と伝えます。
日本ではまず、技術ありきの指導が先にくることが多いそうですが、一方で欧州では、周囲を見回すことから指導を進めるそうです。たとえ技術ミスがあったとしても、きちんと周りを見て、どうすべきかを考えてプレーした結果、技術ミスが出たのであれば、それは全く問題ないということです。池上さんは、「考えるスピードが上がり、その上で技術が向上すればどんどんうまくなります」と話していました。
今大会には当然、勝敗がつきます。4チームずつ2グループのリーグ戦を行い、決勝トーナメントを勝ち上がったのは、兵庫県から参加したアミティエSC東播磨でした。今大会は地元・宇治市周辺のチームが数多く参加していましたが、実は、日頃から池上さんの考え方に共感して実戦しているチームも多く、アミティエはその意味では、"池上メソッド初体験"でした。だからこそ、どのチームよりもインプットが多かったようです。
アミティエのコーチは試合後、子どもたちに質問をしていました。「足元にパスが欲しいって言えた? ワンツーを要求できた?」すると子どもたちは、「言えた!」、「できた!」という返答や、「でも、ワンツー出してって言ったけどうまく出してもらえなかった」というように、できたこと、できなかったことを次々と口にしていました。
「やろうとしたけどできなかったということは、それが続くとどうなるだろう?」
子どもたちは、サッカーの楽しさとともに、奥深さのようなもの、考えてプレーすることで分かる「サッカーをもっと楽しむ方法」を、感じ取ったのではないでしょうか。
「結果よりも、今日やったこと、学んだことを続けてやれるようにしたいですね。そういうことができないと、参加した意味がありません。指導者ももっと成長しないといけないということを、この池上カップを通して学びました」
アミティエのコーチは、そう言って大会を後にしました。「子どもたちは本当に楽しんでプレーしています。そういう様子を、指導者や保護者の人たちに見てもらいたいんです」。池上さんは今大会の狙いをそう説明しましたが、参加したチームの大人たちは、子どもと向き合う上で大切なことに、改めて気がついたのではないでしょうか。
大人が離れた時こそ、子どもは力を発揮する。子どもたちがサッカーを楽しみ、仲間たちと一緒になって成長していくために、あえて見守ること。そういうことの大切さを、池上さんはこの「池上カップ」を通して、何度も何度も伝えていました。
サッカーを楽しむ子どもに関わる大人たちに、本当に様々なことを教えてくれた池上カップ。このレポートだけではなく、今度は、指導者や保護者とのセッションを通して見えてきたことも、改めてこのサカイクで伝えていきたいと思います。
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