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教えて西部さん! 初心者の素朴な疑問に答えたサッカー観戦Q&A

「コンパクトに」と言いながら、「ワイドに」と解説者が言っていて混乱する。結局どっちなの!?

公開:2018年7月17日 更新:2018年7月24日

キーワード:3ラインコンパクトポジショニングワイド主審戦術観戦距離感

それでは次の質問と回答をどうぞ。


Q.「コンパクトに」と言いながら、「ワイドに」と解説者が言ってるけど、どういうこと?

A.守備はコンパクト、攻撃はワイドが基本だからです。


Q32.jpg

【西部さんの解説】

「この部屋を私1人で守るのは難しいが、今座っているソファなら引退した私でも守れる」(ヨハン・クライフ)

守備のときはフィールドプレーヤー10人が、なるべく固まっていたほうが守りやすい。1人1人の守る範囲がそれだけ狭くなりますからね。だから、解説者は守備のときに「コンパクト」と言っているのでしょう。逆に攻撃するときは、コンパクトに守ろうとしている相手を広げたほうがスペースは広がって攻めやすいわけです。

ここまでは基本的な話。守備でコンパクト、攻撃でワイドと言っても、それぞれ程度というものがあります。

まず、守備でコンパクトと言いましても10人が団子みたいにくっついてもダメですよね。フィールドの大きさはそのままですから、人が固まってコンパクトになると、誰もいない場所が広がっちゃいます。

ボールを奪いに行く人がいて、それをカバーする人は5~10メートルぐらい後方ですかね。それ以上開いてしまうと、カバーができなくなります。カバーする人がいれば、ボールを奪いに行った人が抜かれてしまっても、守ってくれる人がいる。最初の人が5~10メートル戻れば2対1で守ることもできます。

逆に、30メートル四方に1人しかいない状態で守るとすると、ドリブルで抜かれたら30メートル追いかけ続けなければならない。体力的にけっこう大変です。クライフの言葉を借りれば、「部屋」を1人で守るのはしんどいわけです。

で、この5~10メートル間隔の防御ラインは3本が定番になっています。10人が横一列なら横幅は守れますが、その手前はガラ空きですしカバーもいない。5人ずつの2ラインならけっこう守れると思いますが、ラインを3本にしたほうが厚みが出ます。

なので、サッカーのフォーメーションは4-3-3とか4-4-23-5-2のように3ラインが多くなっています。DFのライン、MFのライン、FWのラインと3本のラインの三重防御です。そのときにFWからDFまでの距離は、それぞれが5~10メートルなので合わせて10~20メートルになります。

ただ、その距離で3ラインがまとまるまでにはそれなりの時間がかかるので、FW、MF、DFの間隔は15×2メートル(全体で30メートル)ぐらいが目安になっています。

だから解説者が「コンパクト」と言うときの基準は、だいたいFWからDFまでが30メートルなんです。

攻撃の基本である「ワイド」は、幅をとるということです。昔はよく「ウイングのシューズの裏は白くなければならない」と言われていました。サイドラインを踏むぐらい広がってポジションをとりなさいという意味です。

そうすると、相手のDFも横に広がって攻めやすくなると。ただ、ゴールは中央にありますよね。守備側は守るべきゴールを中心に「コンパクト」になっていますから、当然サイドにはパスを通しやすい。けれども、中央には守備者がいっぱいいてゴールに近づきにくい。それではと、相手をひきつけて逆サイドへ展開するわけですが、再び中央を固められれば同じことの繰り返しです。

相手の守備から逃げてばかりでは、結局のところゴールへは近づけない。なので、相手の人数の多い場所にもパスをつないだり、ドリブルで食い込んだりする必要が出てきます。
そのときに重要なのが「距離感」です。選手もよく「距離感」という言葉を使っています。なぜ「距離」ではなくて「距離感」なのかと言うと、厳密に何メートルとは言いにくいからです。

すごく簡単な言い方をすると、相手が寄せてきたときにワンタッチでパスできる距離に味方がいるという感じでしょうか。ワンタッチで正確なパスを出せる距離というと、プロ選手でも20メートル以下でしょう。だいたい隣の選手との距離が10~15メートルぐらいが日本人の場合は「いい距離感」だと思います。チームによってはもっと近いときもあります。

テンポよくパスをつないで、奪いに来る相手をかわしてゴールへ近づくには「いい距離感」が必要です。ですから「ワイド」と言っても、選手間が離れすぎてしまうのは必ずしも良いわけではない。外へ開いている選手がいる一方で、ボール周辺には「いい距離感」で選手がいる、という状態が望ましいと考えられます。

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