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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
男子による女子への集団いじめをどうするか問題
公開:2017年2月15日 更新:2017年2月24日
■大人の言動が子どものいじめを誘発している
もうひとつは、大人の言動が子どものいじめを誘発していないでしょうか。
例えば、娘さんのプレーに対し、コーチや男子の保護者が不満足に感じている空気を出している。ほかの男子選手に向かって「A子がもうちょっと……ねえ」などと言葉に出している。もしくは、男子選手が前述した暴言を吐いているのを見ても、知らん顔している。
子どもは、レギュラーに選ぶ、ポジションを決めるといった「自分たちの運命を握っている大人」の態度に、非常に敏感です。
「コーチ(親)の前で言ったけど、コーチ(親)、何も言わなかったよね」
「コーチ(親)もそう思ってるんじゃない?」
などと、自分たちの都合のいいように解釈します。最近は、震災の避難児童へのいじめなど、社会でも大きな問題になっています。これらと同様に、大人たちのむき出しの感情や差別意識が、子どものいじめを誘発していないでしょうか。
「いえいえ、うちのチームはそんなふうではありません」というのであれば、いじめる男子数人の家庭環境などに何か問題が潜んでいるのかもしれません。いじめる側の子どもたちには、それ相当の理由や背景が必ずあります。
■子どもの本音を聞き、サッカーを楽しめるチームへ移る選択も
そのように進捗を見守りながら、もうひとつやっていただきたいことがあります。それは、娘さんとの対話です。
「やめたくない」と言う、とありますが、それは彼女の真意でしょうか。もしかしたら、ご両親が続けてほしいと願っていると考えて頑張ってはいないでしょうか?そのあたりを確認して、サッカーを続けたいのであれば、ほかのチームへのお引っ越しも可能です。受け入れて楽しくやれるチームを一緒に探してあげてください。
四種と呼ばれる小学生プレーヤーで、女子の競技人口は男子に比べ少ない。マイナー競技のため通えるエリアに女子チームがなく、小学生の間はご相談の娘さんのように男子と一緒にプレーするケースが多いです。ただし、なかには近くの女子チームを選ばないで、遠くの男子チームに入れる親御さんもいます。男子と一緒のほうが上手くなると考えているようです。
私は、それは違うと思います。なぜなら、エビデンスがありません。男子と一緒に6年間プレーした同一人物を、6年間女子チームで育てるのは不可能です。男子と一緒にプレーしてもそん色ない運動神経や才能がある女子の多くが、男子チームに所属しただけだと私は考えます。逆に、能力は高いのに、男子チームにいるがためにMFやFWを一切経験させてもらえず「5、6年生はずっとディフェンスかキーパーでした」という女子を何人も知っています。
余談ですが、なでしこジャパンがW杯で優勝した直後に選手らがテレビ出演したときのことです。アナウンサーから「男子のチームでやってたんですよね?」と尋ねられた選手ふたりが、「男子チームでやったほうがうまくなりますよ!」と笑顔で答えました。その瞬間、後ろにいた川澄奈穂美選手がサッと前に出てきて「私はずっと女子チームで育ちました!」と胸を張りました。「川澄、あっぱれ!」と感心したのを憶えています。
マイナースポーツでの頑張りは、川澄選手のようにきっと娘さんを成長させるはずです。ぜひ応援してあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。
文:島沢優子
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