蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2019年8月28日

試合で起用されなくなって泣く息子をどう受け止めたらいいの問題

5年生までは試合に出れていたのに6年生になってコーチが変わって試合に出られなくなった。大きくて速いけど、個人技が上達しない息子。毎年上手い子が入ってきて、弱気になっていて、最近は試合後泣いてばかり......。もっと楽しくプレーしてもらいたいけど、どうしたらいい?

とお悩みのサッカーママからご相談をいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。お子さんの気持ちを前向きにするための3つのこと、参考にしてみてください。(文:島沢優子)


(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<最後までやり通せとサッカー辞めさせない親をどうするか問題

 

<サッカーママからのご相談>

息子は小学6年生です。

息子のチームは、学年毎にコーチが変わり、5年生の時のコーチは、よく公式戦にも出してくれたのですが6年生のコーチになってから控えが多くなり、公式戦でも最後に交代でやっと出られる程度。

身長も大きく足も速いのですが個人技がなかなか上達せず、努力はしていますが、毎年上手な子が入ってきて、気持ちが以前より弱気になってしまいました。

メンタル面も弱いのが原因とわかっていますが、もっと楽しくプレーしてもらいたいのです。

気持ちを前向きにするにはどうしたらよいのでしょうか?

最近では、試合後泣いてばかりで、私はその気持ちを受け止める事しかしてあげられませんがこのままでいいのでしょうか?

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

試合の後、出られなかったと泣く息子さんを慰めているお母さんの姿が目に浮かぶようです。同じ親としてお気持ち察します。子どもが試合に出られない期間、親も多かれ少なかれストレスを感じますよね。

身長も大きく足も速いのですが個人技が上達しないと書かれていますが、体が大きく足も速かったからこそ、技術を磨かなくてもスピードやパワーで相手を抜きされたのでしょう。

ですが、そういう子の育成というかコーチングは簡単ではないと聞きます。スキルがなくても活躍できるので、同じ環境にいても技術を磨くモチベーションが生まれないからです。

 

■壁にぶつかった今のタイミングは「成長する時間」

その意味から考えると、お子さんはようやく壁にぶつかった、とも受け取れます。人はうまくいっていないときが、成長するときです。ピンチはチャンスと言いますが、まさに「成長する時間」を迎えているということです。

なぜならば、ネガティブな要素があるほうが、謙虚になれますし「なぜうまくいかないのか?」「どうしたらうまくいくのか?」と頭をフル回転させて考えることができます。

ただし、挫折を迎えたときに「どう乗り越えようか?」と考えられる子は、すでにその時点で一歩成長しています。

「頑張ったら、何かいいことがあるかもしれない」と思えるから、奮起できるわけです。そして、そのエネルギーは、自分で自分を信じられるかどうかにかかっています。努力するという工夫を加えると、何かを成し遂げられる力が自分にあると信じられるかどうか。


「自分なんてどうせダメ」
「やってもできない」
「自分はダメな人間だから」

そのようなネガティブな考えに陥ったままでは、「なぜうまくいかないのか?」「どうしたらうまくいくのか?」といった自分自身に向けた"問い"を、自分のなかに作れません。
自分のなかに問いを作れる子どもは、ある意味、永遠にピンチをチャンスにできます。成長し続ける力があるということです。

成長し続ける力とは、前述した「自分を自分で信じられる力」、つまり自己肯定感です。この感覚は、親から「あなたは大丈夫。できるから。自己肯定感を持ちなさい」と言われて、「あざっす、わかりました」とすぐさま手に入れられるものではありません。

小さいときから、親や周りの大人たちから「どれがいい?」「何が食べたい?」「何がしたい?」「何が楽しい?」と意向を聞いてもらって、尊重されてきた子どもが持てるものです。

ただ甘やかせばいいというわけではなく、自由を獲得するには努力することが必要なのだということも併せて学びながら得た自尊感情です。決まりを守る、人を傷つけない、差別しないなど、正しいことを学びながらそれを手にします。

 

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