蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2020年2月19日
息子は人見知り? 試合に出ても練習に参加しません問題
元々人見知りだけど学校の友だちとは仲良くしてしていて毎日楽しんでいるし、サッカーでも仲間にいじめられているわけじゃない。サッカー自体大好きでワザを覚えるのにどん欲で一人で練習もする。
だけど、チーム練習に入れない。ゲームも怖いと言い出して......。みんなといっしょに練習できない理由は言いたがらないから分からないけど、こんなにサッカーが好きだからなんとかしてあげたい。とのご相談をいただきました。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見を元にアドバイスを送りますので参考にして下さい。(文:島沢優子)
<サッカーママからのご相談>
現在、小1でサッカーを習い始めてちょうど1年になります。
悩みは、うちの子は暇さえあればどこでもドリブルしているほどサッカーは大好きで、いろんな技を身に着けようと一人で練習するほどなのですが、練習に行くと参加しないことです。
もともと恥ずかしがり屋で人見知りもあり初めてのところが苦手な子ですが、普段は明るく友達も多く学校も毎日楽しく通っております。
昨年キッズのチームからスタートしたのですが、練習は人見知りなので参加がなかなかできず、ミニゲームだけは楽しんでやっていました。
しかし小学生チームにあがり1年から4年生合同で10数名のチーム練習になると、練習どころかゲームも怖いからと嫌がり、全部終わったあとのコーチや数名の仲間とシュート練習だけするようになりました。
この1年そのチームのサッカー大会やキャンプなどは喜んで参加し、大会の試合は「負けたくない!」と、頑張るのですが、日ごろ練習に参加しないメンバーにパスをもらえることも多くなく......。
学年が混ざってるのが怖いのかと思って他のチームの体験にもいってみたのですが、やはり練習に参加せず、個人でボールを蹴ったり、たまに見学してひそかに自分で練習してみたりといった感じで、やりたいけどみんなの中に入れない様子です。
あるチームのコーチからは「一度、思い切って親御さんは送りだしとお迎えだけにして練習時は自分たちにまかせてもらってはどうですか?と」言われました。
皆と一緒にやらない理由など本人からは特に話してもくれず、私から聞かれるのも避けているような感じで自分からはサッカーの話はしません。
こんなにサッカーが大好きなので親としてどうしてあげるのがベストなのかと悩んでおります。家で「今日はやる!」と約束して出かけても、着いたら「やらない」「できない」となるのです。
特にいじめられたりしているわけでもないですし、学校の友達とは仲良くできるのに、何が不安なのかわからず......。本人がやる気になるまでは、そっとしておくべきなのでしょうか。
アドバイスいただければ幸いです。宜しくお願いします。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
お母さんのお便りだけでは判断できないので「そうじゃない」と感じる部分はあるかと思いますが、あくまで私の印象からの話としてお聞きください。
文章を読んだ感想としては、息子さんは「母子分離不安」が強いのではないかと思います。母子分離不安とは、環境が変わったりした場合、子どもがお母さんと離れたがらなかったりする状態の背景です。
■慌てる必要なし。今は「みんなと一緒に」を願うより一人でやれる事を認めましょう
たとえば、小学校に入学した際、教室まで母親についてもらう子がいますね。お母さんと離れたくないというより、新しい未知なる環境への恐怖や不安にかられるのです。そういったことを乗り越えて、子どもは巣立ってきます。巣立つタイミングやそのありようは、子どもひとり一人違って当たり前です。ぜひ、息子さんが自分から練習に入っていけるのを待ってあげましょう。
「早くみんなとやりなさい」とか「一緒にできるように頑張って」などと急かさないようにしましょう。一緒に練習できるよう頑張れという言葉は、指示命令ではないので一見オーケーなように聞こえます。でも、裏を返せば、仲間と一緒に練習できない息子さんを否定しています。息子さんのありのままを受け入れていません。
一番近くにいて自分をもっとも理解しているはずのお母さんが自分を認めていないという事実は、息子さんの不安をさらに倍増させます。今の息子さんはひとりでやる練習が「安心して」できることなのです。であれば、まずはそこを認めてあげましょう。「ひとりでやったって楽しくないでしょ」という評価ではなく、本人がやっていることを認めてあげてください。
不安を感じやすいという特性は、欠点のように感じるかもしれません。が、それだけ彼は感受性が強いとも言えます。感性が豊かであることは、芸術、スポーツ、人とのコミュニケーションなど将来的にあらゆる場面で彼の「強み」になるはずです。つまり、気づく能力が高いということなのですから。
このような不安を感じやすい、感性が豊かといったパーソナリティーはえてして親から遺伝するものです。ご相談の文章をお見受けすると、お母さんも不安が高いのかもしれません。
私も今ではこんなふうに若干偉そうにみなさんのご相談に答えたりしていますが、非常に不安が強い人間です。不安神経症になったことがあるし、少し前までひとりで映画館(暗い所)に入ることができませんでした。
しかしながら、前述したように、他者の気持ちを観察したり、おもんぱかったりはできる。つまり、欠点と思われたことが簡単に長所にすり変わるわけです。
ですから、うちの子は駄目だとか、どうしようなどと慌てる必要はまったくありません。
■コーチの申し出はありがたいこと、ぜひ任せてみてください
そこで、お母さんに三つアドバイスさせてください。
ひとつめ。まず、練習や試合の見学をやめましょう。心配だし、見守りたい気持ちはわかりますが、お母さんがそばにいないほうが仲間の輪の中に入っていく時期は早まるはずです。そのうち一緒に出来るはずですが、その前にその姿を見ているお母さんのほうがまいってしまうかもしれません。
たとえば、こんなケースもあります。子どもは実は同じ環境でプレーしたいのに、「輪の中に入れない情けない息子」ととらえている母親のほうが我慢できず、チームをやめてスクールに通うだけにする。なかには、サッカーそのものをやめさせしまった人もいます。
相談の文章には、送迎だけして、あとは自分たちに任せてほしいという申し出をコーチから受けていますね。そう言われた、という事実だけで、それに対してお母さんがどうしたいのかには触れられていません。書かれていないのは、お母さんご自身がコーチたちに任せるのが怖いのではありませんか。
ここはまず、長く生きている大人のほうが自分を変える努力をしましょう。子どもを変えたいのならば、親が変わらなくてはいけません。せっかくコーチが任せてほしいと言っているのだから、めちゃめちゃラッキーではありませんか! ぜひ任せるべきです。
ふたつめ。すでに伝えましたが、仲間に入る事を急かさないこと。「今日は入る」約束して出かける、とありますが、そんなことを約束させるのはやめましょう。
いってらっしゃい。気をつけてね。帰ってきたら、おかえり、楽しかった? と尋ねてあげればいい。気持ちを聞いたり、干渉するのはいったんやめましょう。