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【特別対談】三木利章×内野智章(興國高校)~無名の選手をプロに導いた「脳」を刺激するトレーニング
公開:2022年10月31日
興國高校から川崎フロンターレに進んだ、永長鷹虎(えいながたかとら)選手。変幻自在のドリブル突破と左足の強烈なシュートを備え、加入1年目でプロデビューを果たすなど、今後の活躍が期待されている選手です。
永長選手は幼稚園から中学3年生まで、ドリブルトレーニングで有名な三木利章さんの指導を受けていました。その後、興國高校に進むと、技術と戦術指導に定評のある内野智章監督のもとで成長し、高校卒業後に川崎フロンターレに加入します。
なぜ、小中高と全国大会とは無縁で、小中時代は目立った選抜歴のない永長選手が、J1王者の川崎から評価される選手になることができたのでしょうか? 三木コーチと内野監督の特別対談で、その理由が明らかになります。(取材・構成 鈴木智之)
※ページ下部には対談のダイジェスト動画を掲載しておりますので、記事とあわせてぜひご覧ください。
■できないことが山ほどある選手
興國高校からは5人の選手がプロ入り。一番右が永長選手
三木利章コーチ(以下、三木):僕が内野先生に初めてお会いしたのは、鷹虎が小学6年生の頃でしたよね。当時の僕は中学生の指導をするにあたり、「出口になる高校をリサーチしなければ、良い指導はできない」と思っていたところでした。
それで、いろいろな記事で内野先生のことを知り、興味があったので、あいさつに行かせてもらいました。お会いしたときに「中学卒業時に、興國に獲ってもらえるような選手を育てたいと思っています」という話をしたのは覚えています。
内野智章監督(以下、内野):僕も以前から三木さんのことは知っていたので、急に連絡が来てびっくりしました(笑)。ちょうどその頃、興國は選手権の大阪府大会決勝に行き始めた頃で、「もう1つ上に行くには、個の能力を高めなあかん」と思っていたんです。三木さんのドリブル指導のことは知っていたので、「興國に教えに来てくれませんか?」という話をしたんですよね。
三木:それで1、2回、興國に指導に行かせてもらった頃に、鷹虎のプレーを初めて見てくれて「めっちゃいいやん」と評価してくださいました。ただ、僕はドリブルを中心に教えていたので、戦術の部分は手つかずでした。そこは正直に、「できないことは山ほどありますから、よろしくお願いします」と言いました。
内野:ほんまに大変でしたよ(笑)。鷹虎もプロ入りの記者会見で「内野監督にマンツーマンで、何十時間も戦術の指導をしてもらった」と言っていましたけど、めちゃめちゃ大変でした。あまりに長時間、戦術のレクチャーをしていたので、それを見た校長が「大変やね、これでも飲んでがんばりや」と、お茶を出してくれたぐらいですから。
三木:僕も内野さんに会うたびに「すんません」って謝ってましたよね(笑)。
内野:三木さんが謝ることちゃいますよ。ただ鷹虎は、高校3年の春に肉体的な成長期が来てスピードが一気に上がり、サッカーに対する理解力も高まってからは無双していました。最終的にはプリンスリーグ関西の得点王になりましたから。
三木:鷹虎は末っ子で甘えた(甘えん坊)なんです。だから、厳しく指導をしてくれる人のもとじゃないと、育たへんと思っていました。僕はたくさんの高校の練習を見に行っていますけど、守備とかポジショニングとか、彼に足りないものを教えてくれるのは内野先生しかいないと思っていました。
■絵に描いたようなサッカー小僧
内野:鷹虎は中学2年生のときに「興國に行く」と決めて、毎週水曜日の練習会に参加してくれましたよね。
三木:はい。僕はいま女子のジュニアユースのクラブを持っていますが、「どの高校に行かせるか」はめちゃくちゃ考えています。その子に合った高校を選ぶことを重視しているので、鷹虎の場合はそれが興國でした。
内野:彼はサッカーが大好きな、絵に描いたようなサッカー小僧だったので、その姿勢はやっぱり大事やなと思います。興國からプロになった選手みんなそうでしたけど、努力を努力と思っていないというか、好きだから、上手くなりたいからドリブルの練習をしたり、ボールを蹴ってるという感じなんですよね。
三木:鷹虎はまさにそうで、小学生の頃はリフティングの課題を出して「レベル1はこの技。来週までにできるようにしとき」みたいにしていたんです。そうすると、昔のボールは質が悪かったのもあって、数ヶ月でボロボロになるぐらい練習していました。日常の中でボールを触っている回数が多かったのと、他の子よりもサッカーが好きだったのだと思います。
内野:僕が最初に見た、中1のときの鷹虎は、ほんま楽しそうにサッカーしてました。小学校高学年になると、ませている子は自我が出てきて、「俺はこれだけ上手いから、J下部に行くんだ」みたいになるじゃないですか。親もそういう考えになりますし。でも鷹虎の場合、いい意味でサッカーのことしか考えてないというか、余計なことを考えずに上手くなることだけに集中していた。だからあそこまで突き詰めてやれたんだと思います。
三木:鷹虎の学年は強くて、年間に何十回と大会で優勝していたんですね。後に野洲高校のキャプテンになった子とか、彼以外にも上手な子がいたのですが、みんな小学校から中学に上がるときにJ下部には行かず、僕のクラブに来てくれたんです。鷹虎に関して言えば、幼稚園のスクールから中3まで、10年間指導させてもらいました。もうそんな選手は出ないでしょうね。
ドリブル指導をする三木利章コーチ
■遊びの延長で脳に刺激を入れるトレーニング
三木:僕が鷹虎に関わり始めたのは、彼が幼稚園の年長からですが、当時はドリブルやコーディネーションを中心に、ボール遊びの延長のようなことをよくやっていました。試合会場に行って、バスケットゴールがあったら、そこに蹴って入れる遊びや鬼ごっこなど、ボール遊びのバリエーションはめちゃくちゃありましたね。
内野:それはめっちゃ大事で、「なんでブラジル人ってドリブル上手いんやろ?」と思ってブラジル人に聞くと、ほとんどの人がストリートサッカーの重要性を挙げます。硬いアスファルトやでこぼこの土のグラウンドだったり、様々な環境で硬いボール、空気の抜けたボール、小さいボールでサッカーをすることで、養われる神経系の動きもあると思うんです。空き缶をゴールに見立てて、そこに当てるために、ドリブルで相手を抜いた瞬間、狙いすまして蹴るじゃないですか。遊びの中で、自然と蹴り方や力の入れ方を身につけているんだと思います。
三木:内野さんも、興國で様々な大きさや重さのボールを使ってトレーニングしていますが、僕らも柔らかいボールやテニスボール、ラグビーボールを使ってリフティングなどをさせていました。ゲームをするときも、ゴールを4つにしたり、グリッドを縦長にしたり、狭くしたりと工夫することで、脳や体のいろんな神経を刺激することができるんじゃないかと思っています。
選手に指導する興國高校 内野監督
■"脳のアジリティ"は身体能力の低い子の光になる
内野:興國では、5号球の重さがある3号球のボールを使って、リフティングやドリブル、パスの練習をしていますが、選手たちには「いろんなボールを使うことで、器用さが上がる」と説明しています。足でボールを扱うこと以外にも、身のこなしとか、使う筋肉に刺激が入るのかなと。
三木:僕もそう思います。
内野:結果的に、普通のボールを扱っているだけでは鍛えられない部分にアプローチすることができると思っていて、メッシやイニエスタ、ネイマールといったトップレベルの選手は、持って生まれた部分プラス、サッカーをする中で研ぎ澄まされてきた感覚があると思うんです。そこに意図的に近づける作業として、いろんなボールを使うことで、普通のボールではあまり得られない刺激を、神経や筋肉に入れるのが狙いです。
三木:僕も考え方は同じです。小学生の時点で、身体能力の低い子は何を頑張ればいいのかと考える中で、目や脳にたどり着きました。脳にも俊敏性があることを知って、どうすればそこにアプローチすることができるんだろうと考えて、様々なボールを使ったドリブルやリフティング、遊びの中でコーディネーションを身につけるトレーニングに行き着きました。
内野:脳のことなので、外側から成果は見えにくいですが、プロ選手がたくさん出ていることを踏まえると、効果は証明されているのかなと思います。僕の体感的にも、選手の様子を見ていても、劇的な変化を感じます。
三木:脳の指令から動きが作られていることを考えると、"脳のアジリティ"を上げることは、身体能力の低い子たちがトップで通用するための光になると思っています。興國で内野先生は「脳みそを使うことを意識したトレーニング」をされているのを知って、練習を見に行かせてもらって、興國の選手を見て、考え方が間違っていなかったことを再確認できました。鷹虎にはプロになってからも、ボールを持ったら、何かやってくれるんじゃないか? と、観ている人をワクワクさせる、期待させる選手になってほしいです。
内野:そうですね。これからの活躍が楽しみです。
■特別対談 ダイジェスト動画
内野智章監督の新刊が10月25日に発売になります。
「諦めない育成」(竹書房)
三木さん監修のトレーニングボール
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