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問題を指摘するのではなく、解決するスキルを身につけよう! サッカーの上達だけでなく、子どもたちの心も豊かになるキッズスキルは、子どもたちが自ら進んで成長するようになるステップが具体的に示されています。ここまでキッズスキルを実践するためのステップを順を追ってご紹介してきましたが、この連載もいよいよ最終回。最後の仕上げと、一番大切な「次のスキル」への挑戦について、日本で唯一フィンランド式キッズスキルを広めるプログラムを提供しているランスタッド株式会社EAP総研の川西由美子所長、山越薫さんにお話をお聞きしました。
■飽きっぽい子どもには「リマインダー」
「子どもたちは集中力が続かなくて」「意気込んで始めてもすぐに飽きてしまう」サッカーキッズを持つお母さんたちからよく聞かれる声です。キッズスキルにはこうした悩みを解決するステップも用意されています。新しい技術(スキル)はすぐに習得できなくて当たり前です。
「スキルを身につける際に、なかなか進まない、後戻りしてしまうことはよくあることです。お父さん、お母さんはこれもスキル習得のステップのひとつと捉えて焦らずゆっくり見守ってください」
川西さんは子どもたちが停滞期や後戻りしているように見える時も、焦ってはいけないと言います。スキルの練習は習慣化してこそ意味のあるものです。短い期間で劇的な効果を出すより、一歩一歩着実に歩んでいく方がかえっていい結果につながることもあります。そんなときに役立つのがステップ12「リマインダーを作る」というステップです。リマインダーとは「思い出させるための合図」のこと。合い言葉を決めておいて、子どもにスキルを思い出してもらう秘密の暗号にするのです。
スキルがうまくできないとき、スキルの練習をわすれたときに怒るのではなく、このリマインダーで声がけすることで、子どもたちは再びやる気を持ってそして、楽しくスキルに取り組むようになります。
■自信と感謝の気持ちを持つ
ステップ13は「お祝い会を開く」です。ステップ8「お祝い会を企画する」のときも出てきましたが、このお祝い会は子どもがスキルを達成(習得)できたことをお祝いするためだけの会ではありません。サポーターや支えてくれたみんなに感謝して、ありがとうを伝えて、自分がどんな風に取り組んだかを振り返る会です。
「子どもたちに一番必要なのは自信です。小さくてもいいので『できた!』を積み重ねていくことで、次のスキルに向かう意欲も生まれてきます。同時に周囲への感謝の気持ちを経験できるのです」
川西さんはお祝い会を開くことで、新しいスキルへの可能性が広がるといいます。この際に子ども自らが、周囲のサポーターに対して「ありがとうございます」と言葉で伝えることも大切なスキルです。
自分が身につけたスキルを友達や周りの人に教えるのが、ステップ14「スキルをほかの人に伝える」です。キッズスキルでは、学習したスキルをほかの友だちにも教えてあげることを推奨しています。
「大人でもそうだと思いますが、人に教えることでスキルに対する理解が深まります」
キッズスキルアンバサダーとして効果的に現場で使える手法として模索し続ける山越さんも
「人に教えることはスキル習得の一番の近道かもしれません。子ども達が自分に自信を持つためにも、自分ができたことを自分で人に話せるという場をもつことはとても大切です。子どもが自分の言葉でできたことを報告している姿を見られることはお父さん、お母さんにとっても嬉しい場となりますよね」
と、このスキルの重要性を強調します。
サッカーでは、チームメイトに教える、チームでそれぞれが取り組んだスキルを持ち寄って教え合うやり方ができそうですね。
■スキル習得に終わりはない
14のステップを段階を踏んでみてきましたが、最後のステップ15「新しいスキルを決める」はまた最初に戻ってステップ1につながります。ひとつのスキルを身につけたら、また新たなスキルを学びたくなる。子どもたちが自分で課題を見つけて、それを克服するスキルにチャレンジする。川西さんによれば、スキルをひとつでもやり遂げた子どもには、こうした素敵な循環が生まれるようになると言います。
「スキルを身につけた子どもは、うれしそうに自分のスキルについて話してくれるようなります。そして『いまはこんなスキルをやってるんだ!』と新しいスキルに対しても目を輝かせて話してくれるのです」
こうした成長のステップは大人になり、何かにつまづいた時、自分を守り、前に動かす心の動力として働くのです。はじめのうちはキッズスキルの15のステップを段階的にやっていくのがいいのですが、この15のステップはキッズスキルの概念を表したもので、必ずすべてのステップを踏まなければいけないわけではないそうです。
「ステップに縛られるのではなく、どうやって楽しみながらスキルを学んでいくかを大切にしてください」
単なるメソッドではなく、概念として理解し、この概念を根底にもった態度で接することが重要なのです。
新しいスキルを学ぶ段階は同じようでいて単なる繰り返しではありません。キッズスキルは、螺旋階段を上るように親も子どもも一緒に成長できるように作られています。子どもたちは、一度できたという自信を持ち、さらに生き生きとスキルに取り組むようになると言います。
川西さんは「親も子どもも笑顔で成長できること」がキッズスキルの最大の利点だと言います。
子どもたちが自分で考え、課題を見つけ、自分で解決し、成長していくキッズスキル。まずは今回の連載でご紹介した15のステップを実践してみてください。
川西由美子
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ。フィンランド式キッズスキルを広める日本で唯一のトレーニング機関であるランスタッド株式会社EAP総研の所長を務める。自身も数多くのアスリート、企業所属のスポーツチームをサポートした経験を持つ。
山越薫
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ、医療コンシュルジュ、メディカルアシスタントとして基礎心理学の分野からキッズスキルにアプローチする。EAP総研Behavioral Healthコンサルタント。
ベン・ファーマン
フィンランドの精神科医。ヘルシンキ・ブリーフセラピー・インスティテュート(フィンランドが国家レベルで認定しているサイコセラピスト=精神療法家のトレーニング機関)代表。キッズスキルの著者であり、キッズスキルプログラムの開発者。同じく開発に携わった問題解決、チーム再構築プログラム「リチーミング」は多くの世界的企業で研修や人材育成に活用されている。
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(第37回全日本少年サッカー大会決勝大会より)
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