「どうしていくと団結したり、上手くなったりできますか？」とありますが、全員揃う日がないからこそ、土日の試合の際は協働する機会をつくってあげてください。ポジションや戦術など、何から何かまですべてコーチが指示するのではなく、子どもたちに話し合わせるのです。

 

「みんな、次の試合はどう戦いますか？どんなふうにサッカーしたら、勝てるかな？」

 

そんなふうに、問いかけるだけでよいのです。もしくは「切り替えが遅い」とか「シュートの数が少ない。ゴールに向かえない」みたいなチームとしての課題を出してもらって、各試合でテーマを持たせて事前に考えてもらってもよいでしょう。

 

そんなふうに子どもたちが団結する工夫をしていくと、もしかしたら、子どもたちの間から「一番人数が多いのは○曜日だよね。○曜日だけはみんななるべく来るようにできないかな？」といった意見が出てくるかもしれません。

 

自発的にそのような意見が出てくると、団結力もチーム力も上がってくるかもしれません。ただし、もしそのような動きになったとき、コーチが注意しなくてはならないことがあります。

 

それは「来られない子ども」への配慮です。

 

定めた曜日にどうしても来られない子どもがいる場合、その子に対してほかの子どもたちが多少なりとも不満に感じることが多いです。

 

「来られない子対来られる子たち」という対立する図式になりそうなときに、そばにいる大人までが「みんな来てるのに、どうして来ないんだろうね」といった態度をとると、来られない子は居づらくなります。

 

「なんとか来られないの？」とプレッシャーを与えることなど論外です。

 

このように大人が間接的に加担するかたちで深刻ないじめにつながるケースは、実は少なくありません。特に、13歳から上の中学生は、思春期まっただなかの扱いが最も難しい時期です。小学生よりも周囲に自分はどう見られているかという認知力が上がる年齢ですが、そのことを過敏に思い詰めたりもします。

 

見た目は非常に真面目で優等生の子が、いじめの主犯格だった、ということもあります。子どもの表の顔だけで判断せず、じっくり様子をうかがいましょう。味方のパスミスがあったとき、うまくいかなくてイライラする時間帯での表情などで、精神的な成長具合いがわかります。

 

よって、ぜひ気を配って寄り添ってあげてください。

 

同じことを申し上げて恐縮ですが、相談の文章だけでは実像はつかめません。ただ、読んだ印象では、指導者の方はもしかしたら結果が出ないことで焦っているのではないでしょうか。結果が出ない理由のひとつが「練習に全員揃わないこと」だったのかもしれません。

 

私から見れば、そんなに大きなディスアドバンテージではないでしょう。影響があるとすれば、コーチが一度「この子たちは団結力がない」という見方をしてしまうことはマイナスです。悪いことが起きるとすべてそのせいにしてしまいがちだからです。

 

練習日が違っていても、チームワーク良く、全員が一緒にうまくなって底上げができているチームはたくさんあります。前述したように、まずはコーチ自身が、練習で全員が揃わないことは割り切ってください。そのうえで、小さな工夫を重ねることが、子どもたちの成長につながるはずです。

 

池上　正（いけがみ・ただし）

「ＮＰＯ法人Ｉ.Ｋ.Ｏ市原アカデミー」代表。

大阪体育大学卒業後、大阪ＹＭＣＡでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。

12年より16年シーズンまで、京都サンガＦ.Ｃ.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』（小学館）、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』（監修／カンゼン）、『伸ばしたいなら離れなさい　サッカーで考える子どもに育てる１１の魔法』など多くの著書がある。