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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
次のプレーを考えず、ボールが来るととりあえず蹴ってしまう子どもたち。プレーの判断をどう指導したらいい?
公開:2017年6月16日
池上正さんが、ジュニア年代を指導するお父さんコーチの質問に答える「池上正コーチングゼミ」。今回は、自分のところにボールが来るととりあえず蹴ってしまう子どもたちにどう指導すればいいのか悩むお父さんコーチからの質問です。
これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんはどのようなアドバイスを授けたのでしょうか。(取材・文:島沢優子)
<お父さんコーチからの質問>
U-8の子どもを担当しています。
私の指導しているチームの子どもたちは、ボールが来ると、とりあえず蹴ってしまいます。
自分の所に来た(相手がくれた)ボールを大切にする、自分のボール相手に渡さない、 自分でゴールを目指して行くような声掛けをしているのですが、もっと良い声かけや具体的な練習メニューがあればアドバイスをお願いいたします。
<池上さんのアドバイス>
8歳以下ということは、小学2年生くらいでしょうか。「ボールをコントロールしてからフリーの味方を探してパスをつなぐ」といったサッカーの理解が十分でないので、思わず蹴ってしまいます。このあたりの年代ではよくあることです。
この課題をなかなかクリアできないのは、日本の指導者が提供するトレーニングメニューがひとりでやることが多過ぎるからだと言えます。例えば、今週の「子育てのツボ」でも、「個人のレベルを上げるため通常練習後にリフティングをやらせており、回数のノルマを一人一人に与えて、クリア出来ない者には罰則でグラウンドを10周から30周走らせる」というチームが登場します。
■リフティング練習にパス交換を加えてみる
リフティング練習がダメということではありません。ひとりで決まった回数をやらせる練習は「クローズドスキル」です。行うのなら、回数を決めたり、罰則を決め延々ひとりでやるのではなく、2人組でパス交換を入れるようなリフティング練習に変えてほしいものです。
「とりあえず蹴ってしまう」ひとつの理由は、「判断する」ことに慣れていないからだと思われます。なので、常に判断が必要な練習メニューを積極的に取り入れてください。「今、シュートかな?」「パスかな?」「ドリブルしてシュートかな?」「それともゴールを狙うか」
そのような、場面場面でプレーを選ぶ経験をたくさんさせるのです。日本では低学年は特に、パス交換やコーンドリブルなどひとりでやるクローズドスキルの練習が多い傾向があります。それを「対人練習」とも呼ばれる、だれかと常にかかわるオープンスキルのトレーニングにぜひ変えてください。
■判断が必要な練習メニューの指導法
次に、そのようなメニューをやらせる場合の指導を具体的に説明しましょう。大きく分けて2段階あります。例えば、2対1をやってみましょう。まずはじめに、こんな声がけをします。
「どうしたら相手にボールを取られないか、考えてやってごらん」
すると、2対1の「2」のほうになっても、ひとりでドリブルをしてどこまでも逃げていったりします。そのときに「何してるの?2対1でしょ?」とか、「味方にパスして!」などと指示をしてはいけません。それもOKにします。
とにかく相手からボールを守る、取られないという理解(イメージ)ができればいいのです。
そのような時間を経たら、第2段階に入ります。
ずっとドリブルしている子たちに「2人いるのはなぜかな?」「もうひとり味方がいるね。どうする?」と問いかけます。ここで、お互いをどう「使い合う」かを考えさせます。すると、「あ、パスだ、パス、パス」などとパスを要求したりします。
そこがスムースにいかない場合は、デモンストレーションをしてもいいでしょう。ボール保持者が自分にディフェンスをひきつけ、味方にパスを出す。そんなプレーを全員に見せます。うまくできている子たちに「さっきやったパス、みんなに見せてあげて」とやらせてもいいでしょう。
「ほら、こうすると、ボールは取られないよね」
すると、子どもたちは見たことを真似してやろうとします。ボールを取られないようにする理解を浸透させる前にパス交換の練習をするよりも、前向きに取り組むはずです。なぜなら、「2人いるから味方を使ったほうがいい」と自分で気づいて練習しているからです。
このように、第一段階でひとりでドリブルしてもOKにしたように「子どもに考えさせる」ものを段階的に挟むことが非常に重要です。特にまだサッカーの理解が乏しい低学年や中学年は、そのあたりを指導者がどう工夫するか。そこも教える楽しさの一部ではないでしょうか。
次ページ:子どもが考えざるを得ない状況を、「指導者が」考える
文:島沢優子
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