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個々の運動能力、理解力の差でうまくいかない。 小学1年生にパスサッカーはマイナスか?

公開:2018年10月20日 更新:2019年3月18日

キーワード:コーチングドリブルパス中島翔哉小学生指導池上正目的

スペイン人指導者の話を聞いて価値観の違いに驚いたコーチ。海外の指導法も取り入れようと思うんだけど「サッカーIQの高い子に育てる」をモットーに教えている自身のチームで、低学年からパス主体の考えるサッカー、フィールドを大きく使うサッカーは適していないのか? とお悩みです。

小1からパスサッカーは子どもたちの成長にとってマイナスになるのでしょうか?

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが授けるコーチングを参考にしてみてください。(取材・文:島沢優子)

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※写真はサカイクキャンプでのトレーニングです。 質問者及び質問内容とは関係ありません

<<上手い子たちが後片付けをしない。「ドリブルが上手ければそれでいい」の空気を変えるにはどうすればいい?

<お父さんコーチからの質問>

幼稚園生から小学6年生までのサッカークラブで指導している者です。

先日、スペイン人の指導者とお話しする機会があり、海外の少年サッカーの指導方法や考え方に触れ、価値観の違いに驚き自分のチームでも実践しようと思いました。

「サッカーIQの高い子どもを育てる」をモットーに、小学1年生からオフザボールの動き、ゴールまでのボールの運び方等を指導しています。

すぐに試合で結果がつかないのは分かっていましたが、小学生低学年だとサッカーの能力、知能差が違いが大きすぎる事に苦悩しています。

小学生低学年にパス主体の考えるサッカー、フィールドを大きく使うサッカーは適していないでしょうか。

また、1年生からパス主体のサッカーは子どもの将来にマイナスだと思いますでしょうか。

<池上さんのアドバイス>

スペインの指導者はサッカーをよく知っています。育成年代からきちんと教えている人たちですし、彼らのこの意見は間違ってはいないと思います。

まずは、小学生低学年にパス主体の考えるサッカーや、フィールドを大きく使うサッカーは適していないのか? という質問を考えていきましょう。

■選択肢は「パスorドリブル」だけなのか

力が弱く長いパスを蹴られない低学年の段階で、フィールドを大きく使うサッカーを指示してもパスが届きません。だから、小さいコートで行うわけです。

ただし、サイドチェンジがされてフリーでもらったら大きなスペース空いていることに気づく。そのときは前に運びなさい。それがサッカーだよ、ということは教えなくてはいけません。

日本の指導者のあまりよくないところは、「パスかドリブルか、どちらを教えるべきか」とすぐにこだわってしまうところだと感じています。

「パス、ドリブル」ではなく、「パス、ドリブル、どちらもある」ということを教えなくてはいけません。

ボールを回していると、ドリブルしなくてはいけない場面も出てきます。一方で、ドリブルだけでは相手を崩せないので、パスを回す場面も出てきます。

そのことを理解することが、相談者様の言う「サッカーIQ」でしょう。そして、このサッカーの本質は、小学1年生のサッカーでも変わりはありません。

■どちらかのプレーにばかりフォーカスするのは、サッカーIQが低いから

それなのに、日本の少年サッカーは「パスか、ドリブルか」にずっとフォーカスしています。それは、指導者のサッカーIQが低いからとも言えるでしょう。
パスとドリブル、両方をバランスよく使って、子どもは賢くなっていきます。

例えば、パスにこだわり過ぎると、こうなります。

パスしたので、当然のようにボールを渡す味方を探します。周りを見ます。ところが、自分にマークがいて、相手もマークされているためボールを出せません。

そこで、ボールを保持している子に「ちょっとドリブルしてごらんよ」と伝えます。マークを外すためのドリブルを教えます。ドリブルは、いつでも目の前の相手を抜いていくためのものと教えてしまうと、このことが理解されづらくなるので要注意です。

しかしながら、パスをすることを学んでいる子は、すぐに「ドリブルが必要なんだ」と理解できます。パスばかりする子から、ドリブルも上手く使える子にはすぐに変われます。なぜなら、視野が確保できて周りが見えているから、何のためにドリブルするかを理解できるのです。

ところが、ドリブルばかりしている子は「パスもドリブルも融合して使える子」になかなか変われません。それは視野が狭いからです。サッカー自体が、ドリブルで目の前の相手をかわすという発想になっています。

ドリブルで一人抜いても、次の相手が来たらどうするか。次の相手を抜くしかないと思っています。

よって、パスは小学1年生でも教えてください。パスができる子にドリブルを教えると、「こいつをかわせばパスできるぞ」と考えるので、プレーの幅は広がります。幅の広い選手を育てるほうが、成長はがぜん速い。それは、私が40年ほど指導してきた時間のなかで実感していることです。

次ページ:パスを覚える=ドリブルが下手になった ではない

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文:島沢優子

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