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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

「なんでできないんだ」とガミガミ指摘するコーチを変えたい。子どもたちがサッカーを好きでいられる方法はある?

公開:2019年2月15日 更新:2019年3月18日

キーワード:コーチネガティブモチベーション声かけ指導者池上正能力差

今回は、指導者ではないのですが、夫も指導者として関わっているチームの子どもたちが心配で...とお悩みを投稿してくださったサッカーママからのご相談です。

「Aチームに比べてBチームへのコーチたちの声かけが厳しく子どもたちの表情が暗い」との意見が。ダメなところを指摘されすぎたら、子どもたちが苦しくなるのでは......。コーチがガミガミ言わなくなるにはどうすればいい? というご相談です。

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送ります。(取材・文:島沢優子)

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ガミガミ指摘するコーチの意識を変えたい、とご相談いただきました。(写真はご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

<<ボールが投げられない、腰より高いボールが怖い子どもたちが飽きずにできる動きを教えて

<お父さんコーチの奥様からの質問>

こんにちは。

私自身は指導者でないのですが、夫が指導者として関わっているチームの子どもたちが心配なので相談させてください。

公立小学校チームに小学3年の次女が所属しています。そして、夫はサッカー未経験なのですが年長の頃からコーチとして活動しています。

チームでは、コーチ達の話し合いで3年生のリーグ戦から27人の選手を強弱チームに分けています。新チームがスタートして半年が過ぎ、AチームとBチームの能力差が開く様になり、コーチ達の対応にも保護者からご意見頂くようになりました。

Bチームの試合で「何で追いかけないの! 当たっていかないから点を取られたんだぞ! 取られるな! 何やってるんだ!」など他チームのコーチに比べても厳しい声かけになっているようで子どもたちの表情が暗い、覇気がないというご意見でした。

その事を夫に聞いてみると「Aチームはルールや指示を理解して自主的に取り組んでいるけれど、Bチームの子達は全くコーチ達の説明や指示を理解できてないし、集合など試合以外の動きもテキパキしていないから言わなきゃ仕方ない」と回答しました。

経験者のコーチ達もいらっしゃるのでサッカーの内容については私にはわかりませんが、親として保護者の皆さんのご意見「Bチームの子たちは楽しそうじゃない」という点は改善してあげたいです。

「子どもができていない」からダメなところを大声で言われ続けていたら、子どもたちは苦しくなるのでは、サッカーを嫌いになるのではと思います。

夫は「コーチ達もBチームが何でこんなにできないんだと困惑している」と発言しており、子どもたちに責任転嫁しているように感じています。

今のところ、私の質問を突っぱねるようなことは無いので、聞く耳を持ってはいると思いたいです。

Bチームの子にコーチたちがガミガミ言わなくなるためにはどのように取り組ませて頂けばよいのかアドバイスをいただけませんでしょうか。

<池上さんのアドバイス>    

メールをありがとうございます。

同じ学年でも能力差はありますね。ご相談されている方のお嬢さんの学年(3年生)くらいから少し開きます。ただし、子どもの身体的な成長やサッカーの認知度がそろうことで、どこかで逆転するケースは少なくありません。

■同じ年齢でも成熟度には差がある。AとBを比べないこと

とはいえ、このように「差」があるということは、AとBに分けていることは悪いことではありません。

ただし、同じ学年の中で差がありすぎると、できる子どもたちがどうしてもできない子どもたちのことを邪魔者扱いしがちです。こうなると大変なので、分かれることも必要な時もあると思います。

子どもはそれぞれ自分のレベルに合ったところで、日々サッカーをしたほうがいい。そのほうが楽しいし、上手くもなります。

ここで問題なのは、コーチがAとBを比べてしまうことです。自分たちのなかで比べてしまうから、「どうしてできないのか」となります。

この学年でAチームに入る子どもは早熟です。例えば、サッカーそのものに関する理解度が高い。サッカーに対しての興味関心も高い。そうであれば、こうなって当然なのです。

このことをBチームを担当している指導者は理解しなければいけません。どうしてこんなことができないんだ? と言ってしまうのは、Aの子どもたちと比べてしまうからです。

できなくて困っているのは、子どもたち自身です。

「どうしたら出来るようになると思う?」と聞いてあげてほしいのです。

■子どもの気持ちが分からなかった指導者が変わったキッカケ

競泳のオリンピアンでもある長崎宏子さんは現役を終えた後、コーチとして幼児のクラスを指導していました。

子どもたちが水を恐がるのを見て、最初はビックリしたそうです。ご自分は小さいときからまったく怖がらずに水泳を始めたため、水を怖がる感覚自体がわからなかった。怖がる子の気持ちがわからないし、どうしたらいいのかわからないので「怖くないよ」「大丈夫だよ」としか言えませんでした。

水を怖がる子どもに対して何も効果的な指導ができない自分に愕然としてしまい、その後、コーチングの勉強をしに米国に渡りました。

幼児クラスの指導を見学に行くと、コーチは怖がる子どもたちに問いかけました。

「シャワーや、シャンプーは、大丈夫なの?」

すると、その子たちはこう答えました。

「シャンプーするときはシャンプーハットをつけているから大丈夫なの」

「顔を手でおおっているから平気なの」

OK。じゃあ、それで試してみる?

コーチは、子どもたちができそうなことを、子どもたちが言う方法でやってみるわけです。ここでは「シャンプーハットをつけて水遊びをしてみる」という結論を子どもたちが出しました。

子どもたちはシャンプーハットを頭にかぶって、水遊びを始めました。「へえ、それ、いいね!」と他の子どももやってきて、ハットをかぶります。珍しいものには大人だって飛び付きますから、子どもならなおさらですね。

夢中になってシャワーで遊んでいると、少しくらい顔に水がかかってもだんだん平気になります。行動が大胆になり、少しずつ水が怖くなくなるのです。

そこで、長崎さんは「ああ、そうなのか」と腹落ちしたそうです。

日本で子どもたちが水を怖がったとき、「どうしたい?」と尋ねる発想が自分にはなかった。

「どうしたら水がかかってもへっちゃらになるかなあ?」 子どもたちに「問いかける」ことが大事なのに、自分は「教える」ことばかり考えていた、と。

子どもたちにとって一番いいのは、自分たちで選んだことをやること。

長崎さんはそれを米国で学んで、また日本で指導を再開したそうです。

■できないことができるようになる、出発点を作ってあげるのが指導者

いかがでしょうか。
出来ないのは仕方ない。それをできるように導くのが指導者。

どうしたらできるようになるかな? と一緒に考えて、子どもたちが考えたことをやらせてあげる。そこを出発点にする。

私はそのとおりだと感心しました。

「サッカーで一番好きなものは何?」
「どうしたらいい?
「何がしたいですか?」


コーチの方は一度、子どもたちに問いかけてあげてください。

特に、サッカー経験者は頭を切り変えなくてはいけません。
「それくらいできて当たり前」「なぜできないの? 3年生なのにできないの?」と、できない子どもが悪い、という方向で考えがちです。

コーチから責められるBチームの子どもたちの気持ちを考えてみましょう。集合するのが遅い。動きが遅い。コーチたちはそんな文句を言ってますね。

でも、否定されたり、ネガティブなことばかり言うコーチのもとへ早く飛んで行きたいと思うでしょうか? コーチのもとへ集まったら、何か楽しいことが待っているなんて思えないでしょう。

次ページ:子どもが笑顔で飛んでくる練習、コーチの接し方とは

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文:島沢優子

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