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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

「楽しければ強くならなくていい、レギュラー外して」という選手に勝つ喜びを教えるにはどうしたらいい?

公開:2020年2月14日 更新:2020年10月12日

キーワード:コーチングサッカー部レギュラー内申書勝つ喜び叱る意識改善達成感部活動顧問

チームの主力選手の1人が、指導者に叱られてまで強くなりたくない、楽しければ強くなくてもいいから、レギュラーから外して欲しいと言ってきた。

真剣にやって勝つのは楽しいということ、ひいてはスポーツの楽しさを教えたいけれど、このような考えの子どもの意識改革は難しい? と中学サッカー部の指導者の方よりご相談をいただきました。みなさんならどうしますか。

今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、中学生への指導のアドバイスを送りますので参考にしてください。(取材・文:島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

<<集中力が続かない年代の子どもたちも、みんなが楽しめる練習メニューはある?

 

<お父さんコーチからの質問>

こんにちは、私は中学サッカー部を指導しています。

最近、レギュラーの主力選手の中で、私に叱られてまで強くなりたくない。楽しければ強くならなくてもいいから、レギュラーから外して欲しいという選手が出てきました。

その姿勢は他の選手にも影響を与えています。

そもそもサッカーがそれほど好きでなく、受験の印象(内申点)などのためにやっているのかもしれませんが、真剣にやって勝つのは楽しいという気持ちを体験してほしいと思っています。

こういう選手に技術の向上やチームワークそして勝つ喜び、最終的にはスポーツの楽しさを教えるためにはどんなアドバイスをしたら良いでしょうか。

進路のためにやっているような子であれば意識の改善は難しいでしょうか。アドバイス宜しくお願いします。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談、ありがとうございます。

「私に叱られてまで強くなりたくない」という生徒が出てきた、と書いておられます。

この文面だけでは、実際に先生が部活で生徒を叱る程度がどれ程かはわかりません。が、先生が怒るときは、おそらく生徒が先生の思うようにできない、やろうとしないと叱られるのだろうと推察します。であれば、そんなときに、叱るしかできないのは、指導者側の問題だと私は思います。

受験の内申点のためにサッカーをやっているのかも、と書かれていますが、もしそうだとしても、サッカーというスポーツの楽しさを伝えてあげられるといいですね。楽しくなれば、生徒は意欲的になるので知らない間に上達します。そうすると、もっとみんな楽しくなる。できないことができるようになるので、楽しくなります。

 

■楽しむことで上達や達成感を感じられれば、「次は勝ちたい」と思うようになる

今の子どもたちが幼い、というのはわかります。しかし、幼稚園児や小学生はうまくなるより仲間と一緒にいられることが楽しかったりしますが、中学生は何かができるようになる楽しさを十分理解してくれます。

よって、楽しくサッカーをすることで、上達したり、達成感を味わえる方向に指導を変えればみんながサッカーに対して前向きに取り組むようになるでしょう。

楽しければ「次は勝ちたい」と思えるようになります。例えば、試合に負けたとき。指導者が「今日の試合をどう思いましたか?」と敗戦の分析を生徒たちにしてもらう。自分たちで、どうして負けたかを話し合ってもらいます。

「こんなことができなかったから」
「ここの部分が相手の方が上回っていた」

そんなコメントが出てくるはずです。そこで初めて、指導者のほうが「では、そこを改善する練習を来週からやろう」と話せばよいのです。ところが現実には、敗因を精神論にしたり、指導者のほうから一方的に話すパターンが多いようです。

あるいは、あの「チームは強すぎたよね」という話になることもあります。その場合は、「では、ちょうどいいチームと今度は練習試合で腕試しをしよう」と考えてもいい。いずれにしても「プレーヤーズ・ファースト」で指導を考え直してください。

 

■生徒たちがどうしたいのかを聞いて。イメージの乖離をなくしていく

中学生は自我が発達し、思春期を迎えます。指示命令をして先生の思うようにはならないし、そういった指導が生徒を伸ばすとは思えません。生徒たちがサッカー部でどうしたいのかをまずはしっかりと聴くことが先決のように思います。そのうえで、彼らの進む道や方針を見つけられるようサポートしてはいかがでしょう。

特に「レギュラーの主力選手の中で、私に叱られてまで強くなりたくない、楽しければ強くなくてもいいから、レギュラーから外して欲しいという選手が出てきました」と書かれています。主力選手が「楽しければいい」と考えていることに、ショックを受けておられるのかなと察しています。

この文面だけではわかりかねますが、先生と生徒の間で「サッカーに取り組むイメージ」に乖離があるようです。先生からすれば、ご自分の思っているところに引き上げたい、という感情。つまり、厳しくされながら、勝利に立ち向かうという姿勢でしょうか。ですが、この乖離を埋めるには、「楽しいだけじゃダメだろ」と生徒を否定しても解決できません。

例えば、こんなことを伝えます。

サッカーはチームゲームだよね。自分だけがよければいいわけじゃないでしょ? チームとしてどうするか? 弱い子がいたら助ける。みんなが勝ちたいと思えば、みんなが協力する。そうすれば、もっと楽しくなるんじゃないかな」

そういうことを指導してあげないといけないと私は考えます。

日本の学校教育は、先生と生徒が主従関係にあります。それは部活指導でそのまま流用されるので「選手はコーチ(顧問)の言うことを聞いて当たり前」という論理になります。その論理で言うと「最近の中学生は大変です」という表現になりがちです。

でも、大変だからこそ、大人が手腕を発揮しなくてはいけません。子どもに歩み寄れというのではなく、大人のほうが思考を転換したり、方法を変えるべきです。

これまでのように、力でねじ伏せるのは簡単です。抑圧し、圧迫して、残った生徒だけで戦っていけば、ある程度は強くなるでしょう。でも、この時代、そのような指導で残る子どもはどれだけでしょうか?

 

次ページ:子どもの意識改革をするために、何からすればいいか

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文:島沢優子

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