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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

サイドバックの攻撃を活かす攻撃が特徴のチーム、小4に2トップと中盤のポジショニングを教えるのが難しい。どうすればいい?

公開:2023年3月31日

キーワード:2トップMFサイドバックチーム戦術ドイツフォーメーションフニーニョ

サイドバックを活かす攻撃が特徴のチーム。3-2-2のフォーメーションを使っているが、U-10世代への指導が難しい。というご相談をいただきました。

2トップ、中盤のポジショニングの指導に悩んでいるとのことですが、今回の池上さんの回答は......。

今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、小学生年代で特定のチーム戦術を教え込みすぎる弊害なども含め、指導のアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

池上正さんの指導を動画で見る>>

 

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

<<人数はいるけどGKやりたい子がいない、上手く褒めて1人を固定にするか複数人で回すかどちらが良いか教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

はじめまして。子どものチームで保護者コーチをしています。指導カテゴリーはU-10~ です。

ウチのチームは3-2-2というフォーメーションを使っています。

サイドバックを活かす攻撃が特徴で、ツートップはなるべく広がらず真ん中で近い距離に、というのが基本です。

ですが、ツートップ、二枚の中盤のポジショニングがなかなか難しいです。

このフォーメーションの場合、どのようなことから教えていくのが良いと思いますか?

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

10歳以上なので4年生でしょうか。ご相談に書かれているように「サイドバックを生かした攻撃でツートップはなるべく広がらず真ん中で近い距離にいなさい」と指示してしまうのは、少し早すぎる気がします。

 

■小学生年代は特定のフォーメーションに特化するより、どんなサッカーにも対応できるベースを作る時期

プロや大学生のチームならば、戦術はあって当然でしょう。しかしながら、わずか10歳の子どもはどんな選手に成長するのか、キャリアを積んでどんなチームに行くのかも私たちに予測はできません。

したがって、私たちが行う育成は、どんなサッカーにも対応できるよう一人ひとりのサッカーのベース作りをしなくてはいけません。

ドイツなどサッカー先進国と言われる欧州の子どもたちは、小さいころからサッカーの原理原則を学ばせます。トライアングル、数的優位といったサッカーの成り立ち。どんなふうにパスをつなげて点を取るか。どんなふうに守って失点を防ぐか。

そういったことを学ぶために、欧州では10歳ぐらいまでは5人、もしくは7人制で試合をします。そこにフォーメーションが重要だという考えはありません。

そう考えるとご相談者様のチームは、子どもがもう少し自由に自分の意志で動きを覚えられるような仕組みを考えたほうがよさそうです。

 

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■スペースの使い方など「相手守備が困ること」を実感させる

例えば、このように教えたらどうなるでしょうか。

「広がると自分たちが使えるスペースがたくさんできて、パスをつなぎやすくなるね」あるいは、「広がって動けば相手は守りにくくなるね」と。

そうすると、トップが広がらないというポジショニングでは「相手は守りやすい」という状況になります。自分たちが広がることによって相手守備が困ることを実感してほしいのです。

しかし、ご相談者様のチームは恐らくスピードのあるサイドバックがドリブルで攻め上がる際、2トップが広がっていると邪魔になる。そのため真ん中に一緒に立っていなさいという指示になるのかもしれません。

そうなると、真ん中にいるトップの選手にボールが入ったとき、もう一人のフォワードが近くにいれば相手ディフェンスも守りやすいので、選手は大変だと思います。

対象が小学生ではなく、せめて高校生など大人に近い年代ならば「前のふたりで相手を崩せるからあまり広がらないほうがいいね」と指示を出せます。そのような選手の特徴を生かすことも考えられます。

 

■高学年になって周囲のサッカー認知度が高まると、SBも今のように抜けなくなる

ただし、何度も言うようですが、小学生にこのような限定的な動きを教え込むことはあまり賛成できません。

足の速い子を前に置いて、裏に抜けて点を取る。それができたら違うことに移るべきです。ずっと同じプレーをやらせていてはその子のテクニックは上がりません。

サイドバックの子も同じです。ドリブルがうまい子がボールをもらってサイドから自分でドリブルをする。3~4年生くらいまでは通用しても、高学年になって他の選手たちのスピードや体格、サッカーの認知が上がってくると、その途端に抜けなくなります。

そこでワンツーパスを使うとか、フィードするパスをして組み立てるといったことができるようにしてほしいのです。そのためにはきちんと土台をつくらなくてはなりません。

 

■「3人目」の動き、数的優位を意識させるトレーニングをすること

それをつくるには、低学年のころから2対1などの数的優位をどう使うか。意識できるようトレーニングを積まなくてはいけません。

試合でもそれを意識させてください。両サイドバックが少し高い位置を取って、真ん中に中盤の選手がいる。常にダイヤモンドの形をつくるよう心掛けてもらいます。中盤の上にはトップがいてまた別のダイヤモンドをつくれます。

幅と深さ、トライアングル。ボールを持ったときに誰と誰を見たらいいの? 場面によってトライアングルができることを意識して、何を見たらいいのかを学ばせてください。

そういった学びを小学生の間にしてもらいたいのです。ドイツに「フニーニョ」(※フニーニョを紹介した記事に飛びます)という3対3のゲームがあります。概ね縦25~30メートル、横20~25メートルのフィールドで、攻撃方向にそれぞれ2つずつ、計4つのゴールを置いて3対3を行います。自分たちが攻めるゴールが2つあるので、トライアングルの「3人目」を意識しやすくなります。

つまり、視野が広がる。視野の確保とサッカーの成り立ちを体得するのにうってつけの方法です。今の時代、ネットで探せばやり方や動画をたくさん観ることができます。ぜひやってみてください。

 

次ページ:チーム戦術が先に来ると、そのチームでしか使えない選手になる

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